4−6
「無事に魔王は討伐されたみたいだよ、ちなみにMVPはアマツ。さすがとしかいいようがない」
「そうですか」
僕は今、ユキさんと一緒にシオンさんからことの顛末を聞いている。今回も無事に討伐されたみたいで良かった。少なくともサキさんの悲劇が繰り返されることはなかったみたいだ。そして、僕は少し気になっていたことを確認する。
「僕たちは完全に防ぎましたけどあの吐息、どんな効果があったんですか?」
「ん? ああ、聞いた話によると通り一遍の状態異常と、それから特技の使用禁止に攻撃力やら防御力やらのデバフなどその数は20を超えているみたいだよ」
「うわぁ」
「それ、運営まともにクリアさせるつもりあるのかしら」
特技が使用禁止になってしまったら弱体解除の特技を使用することができなくなる。つまり、なし崩し的に戦線が崩壊していってしまうのだろう。そしてそのまま攻撃が防御力の低い後衛にまで広がっていき、次々とパーティーが壊滅していく、そんな流れが目に見える。これを防ぐためには、ユキさんみたいに、シビアなタイミングで解除するか、耐性を相当あげて挑むか、
「そもそも異常状態無効の特技とかって装備ってありましたっけ?」
「部分的にならあるけど全部となればさすがに1回とかが限界じゃないかな? それにデバフ系やら特技無効は対策出来ないし」
「そう言われたら……」
「私たちの装備品って最新のではないのよね」
「それでも充分に対応できているけどね。インフレが激しくないし。というかギルマスの突破方法ってあれ知られてないよね? 仮に知られてもできる人いないけど」
「練習すれば大丈夫だと思うわ。タイミングを掴めば」
「でも、レイドの最中に考えるのは相当難しいよ。ハルといい『神風』はやっぱり頭脳筋だね」
シオンさんからしみじみと言われてしまったけどユキさんだって最初から使うことができたわけではない。度重なる戦いの中で手に入れた力だから。だからユキさんの主張も何も間違っていないと思う。でも、こないだのシオンさんの話からしたらそんな環境を僕たちは作ることができただけということなんだろうけど。
「でも、脳筋って言い方はどうなのかしら」
「脳筋だろ。まさか解除にも時間があることを突き詰めて無理やり無効化するなんてさ」
「ダメージの無力化は想定外だったわよ」
シオンさんが言っているのは、ユキさんが使った手段だ。テキスト上では『メンバーの異常状態を解除する』とだけなっている。つまりかかっている状態異常を解除するというふうに考えるのが自然だ。でも、その解除している時間というものが存在して、その僅かな時間のうちに受けた状態異常やら攻撃やらが全て無効化されるとは想像つかなかった。
「それを実行する方も実行する方だが気がつく方もおかしいよ」
「最初に見つけたのはハルよね」
「結局僕のもにたようなものですから」
「お前らな……」
またしても、シオンさんから呆れられる。他の人にも同じような説明をしたのだけど、その時にも似たような反応をされたんだよね。そして、ユキさんは、こん話は終わりとばかりに、咳払いを一つすると、
「それで新パッチはどんな感じになるのかしら」
「前から言われていたポセイドンの実装と他にも2つぐらいレイドがあるみたいだね」
「ふうん、ま、ポセイドンだけ挑みましょうか」
「了解。さてとギルマス。俺はここで落ちるよ」
「わかったわ。お疲れ様」
「お疲れ様です、シオンさん」
僕とユキさんは自分の部屋に戻るシオンさんを見送る。なんだかんだ言って、ここ数日色々な情報を集めるために動き回っていたみたいだから疲れているのだろう。そして、ここには、僕とユキさんだけが残された。
「ハルもお疲れ様」
「いえ、一番大変だったのはユキさんだったと思います」
「まったく、イザキさんやらミキさんやらに連絡を取ったのは誰よ?」
「あはは」
ユキさんが言っているのは、今回の魔王討伐の貢献度のランキングについてだ。そこに、僕たち『白夜の旅立ち』の名前はない。1回しか挑戦していないから総合の方に名前がないのは当然といえばそうなのだが、四天王ごとの戦績においては話が違う。ラミリスに僕たちが一番ダメージを与えたのは間違いないはずだ。仮に違っていたとしてもトップ10には必ず入っている。でも、僕たちの名前はどこにもない。
「まさか報酬を受け取らない代わりに非表示にできるだなんてね」
「直前でしたけど確認しておいて正解でした」
「おかげで助かったわよ」
「ただ、これっきりにしてくれとも言われましたけどね」
「不自然になっちゃうもんね」
僕たちが公開しないことで、ランキングのダメージが明らかに100%に届きそうにないのだ。ただ、今回が初めてだったということと、敵が特殊でかなり大勢のギルドが挑戦していたことが幸いして、そこまで大きな騒ぎになっていない。それでも毎回毎回こんなことしていたらおかしなことに気がつく人が現れるだろう。
「それに、私たちも報酬が目的じゃなかったのは救いよね」
「それはそうですね」
レイドと違って報酬が手に入らないという大きすぎるデメリットが存在する。多分だけど僕たちと同じようなことをしようとするギルドを牽制するためだろう。だって、大きなギルドが参加したらそれだけで顰蹙を買うことになるので隠したくなる気持ちもわかる。でも、報酬がなしとなればこんな形での参加はしないだろう。僕たちみたいなよっぽどの理由がない限り。
「ま、この話はもう終わり。それに、ハル、明日また学校でしょ?」
「そうですね。では、お休みなさい」
「うん、お休み」
そして、僕はログアウトする。ログアウトして、そして、久しぶりにかなり充足したゲームをすることができたと思う。さて、また明日の学校も頑張るとしますかね。そう思いながらカレンダーを見た時に僕は一つのことに気がつく。
「あした終業式だった」
高校生にとっての至福の時間、夏休みが始まる。
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