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咎人の叫び  作者: 歩海
17/19

4−4

「あら、今日はみんな揃っているのね」


 シオンさんから色々なことを聞いた次の日のこと。正直言ってまだ納得できない部分はある。だって、それじゃあ、僕たちが何のために活動していたのかって根本的な問題になってしまうから。でも、それは今はそこまで重要じゃない。ただ、僕が普通の人の感性とはずれてしまっているのだけはわかった。そして、モヤモヤとしながら次の日もログインしたらみんな集まってきてそして最後にやってきたユキさん含め、『白夜の旅立ち』の7人全員が集合することになった。


花月かげつは久しぶりね」

「おう、もしかして俺だけか? 新入りと出会っていないの」

「俺も出会ってないですよ。多分俺たちだけですね」

「社会人組が綺麗にすれ違っているのね」


 シオンさんとそれから最後の一人、花月さんが仲良く話している。花月さんは銀色の鎧を着込んだ中年のおじさんだ。このギルドの中では一番の年長者だ。シオンさんよりも年が上みたいだ。この中で一番落ち着いていて、それが表情にも常に現れている。ヒゲが少し生えているが、まだまだ若々しい。できるサラリーマンって感じだ。そしてユキさんの言葉に花月さんは笑いながら、


「はははは、まあ俺は最近ちょっと忙しくてな。それで、その新入りは? ハルがいるならいるんだろ?」

「ハルくんがいるからっているとは限らないわよ。あの子見た感じかなり真面目そうだし、ハルくんと違って廃人じゃないから」

「誰が廃人ですか」

「がははは、そりゃそうだ」

「アオイは今山吹峠の方に行っていますよ」

「ん? へえ、サキの嬢ちゃんが言うだけあって真面目みたいだな」


 僕の言葉を聞いて、花月さんは高らかに笑う。というか、僕としてはサキさんの言葉に色々と言いたいことがあるんだけど。ジト目を向けるけれどサキさんはまったく意に返している様子がない。そんな僕とサキさんのやりとりを尻目にミナトがしみじみと呟く。


「でも、何気に揃うのって久しぶりですよね。僕も最近はテストでこれてなかったですけど」

「そうだな。まあ俺とシオンが大抵いないことが多いけど」

「仕事、忙しいですか?」

「それなりにはな。さて、と。シオン何か面白い話はないのか?」

「良いニュースと悪いニュースがありますよ」


 ヨミの質問に答えた花月さんはそのまま返す刀でシオンさんに聞いている。それはみんなも思ったのかシオンさんに注目している。昨日のことがあってから何も掲示板とか見ていないし何が起きているのか気になる。それに、まあ、アオイもいることだし、魔王討伐の方がどうなっているのか少しぐらいは興味があるし。そしてみんなの注目を浴びたシオンさんといえばおきまりの言葉を口にする。


「そうねぇ、こういう時は良いニュースの方から聴きましょ」

「了解、ギルマス。ただ、先に行っておくが何人か、覚悟しておいてくれよ」

「?」


 えっと、その前置きはかなり不穏なんですけど。でも、シオンさんがそう言いながら顔を見たのは、ヨミ、ミナト、そしてサキさん。サキさんの方を見たってことは多分だけど魔王討伐に関することだよな。まあ、今一番話題になることだし当然といえば当然か。でもそうなると、他二人の理由がわからないな。


「今回の魔王討伐に『黄昏』と『魔法同盟』が乗り出すみたいだ」

「!」

「ああ、そういうこと」


 でも、続くシオンさんの言葉を聞いてすぐに謎が解けた。そっか。それならヨミたちの方に視線を向けた理由もわかるな。『黄昏の集い』はヨミがもともと所属していたギルド、そして『魔法同盟』はミナトの親友がギルマスを務めている。さて、話を進めたいけどさっきシオンさんに指摘された人たちはみんなちょっと放心状態というか考えごとをしているっぽい感じなので僕が質問するか。


「でも、どうしてあいつらが参加したんですか?」

「うーん、単純に一番手っ取り早く資源を集めることができるからじゃないかな? ほら、最近あったPVPに参加していて次のパッチまでに間に合わなかったみたいでさ」

「そうなんですね。それで、悪いニュースはなんですか? まさかとは思いますけど『黄昏』とかが参加したせいで報酬が奪われるとかそんなところですか?」

「まさか」


 僕の疑問は一蹴される。あ、違うのか。強いところが参加したせいで手柄を奪われるというのは割とありがちな展開だと思ったんだけどな。イベント期間中のクエストにおいて、モブのモンスターたちは何度でも蘇る。でも、魔王とかボスは一度倒したら復活することはない。だから強い人たちがさっさと倒してしまったら他の人たちはダメージをあまり与えることができずに終わってしまう可能性がある。あくまで可能性なだけで実際のところは違うのだろうけど。それで、実際に何だろうか。僕は続きを求めるようにシオンさんを見る。


「報酬がなくなるということはないさ。むしろその逆、俺が聞く限りでは今回かなり手こずっているみたいなんだ」

「え?」

「ちょっ、それどういうこと?」


 シオンさんの言葉に僕だけでなく、ユキさんも驚いたようだった。正直言ってあそこのギルドの人間たちが苦戦しているだなんて考えられない。何があったのか詳しい話を聞きたい。でも、シオンさんは少し苦笑いすると、


「悪いけど、俺はこれ以上のこと知らないんだ。苦戦していることは聞いたが、その理由まではまだ」

「そう、シオンでも無理なのね」

「ま、1日待ってくれよ。すぐに調べるからさ」

「わかったわ。さて、そろそろこの話題を変えたいのだけど、他には何かあるかしら?」

「まあ、あるにはあるかな」


 そのあとに、僕たちはシオンさんから色々な話を聞いた。久しぶりに全員が揃ったからどこか手頃なレイドに挑もうかと話が出たけれど、今の時期はさすがに野良でも集めることはできそうにないのでやめておくことになった。そして、少したって、そろそろ良い時間ということでおひらきになった。僕もそのままログアウトしようとした時だった。


「あれ?」


 ユキさんから個別にメッセージが来ていることに気がついた。書かれている内容は、『今から私の部屋に来て』これがゲームではなくて現実だったら色々と問題になりそうなのだけどこれはゲームなので何も問題はない。どうしてわざわざ二人っきりというかあの場所で話すことができなかったのか不思議に思うけれど、僕はそのままユキさんの部屋へと移動した。


「ハル、ごめんなさい」

「いえ、構いませんがどうしたのですか?」


 ユキさんの部屋は年頃の女の子というべきかかなりファンシーという感じがする。でもかなり整理整頓がされていて物もそこまで置かれていない。ただ、ベッドの上にいくつかぬいぐるみが置かれている感じだ。そして、ユキさんはゆっくりと、僕を呼んだ理由を説明してくれた。


「あのね、ちょっと考えたんだけど」

「はい」

「私たちで、少し魔王討伐にいってみない?」

「ギルドで、ですか?」

「ううん、私たち、二人で」

「?」


 二人で? まあ、できなくはないというかあと4人を野良で集めるということなのだろうか。でも、わざわざ個人で動く意味がわからない。ギルドの人に声をかけたらきっとみんな協力して……ああ、そっか。僕の表情が変わったことに気がついたのだろう。ユキさんが種明かしをしてくれる。


「うん、わかったみたいね」

サキさん(・・・・)が無理ですね」

「うん、サキちゃんは魔王討伐にトラウマを抱えている。話をすることが限界なのに挑むなんて絶対に無理よ」

「そして、今の現状はサキさんのトラウマに似ていますね」

「ええ、これは私のワガママ。だから断ってくれても良いけど」

「僕が断らないのわかってますよね?」


 遠慮がちに言ってくれているけど、僕がここまで聞いて断るようだったらきっと、もう既にやめている。ユキさんもその自覚が少しあったのか苦笑いしている。


「じゃ、そういうことで、明日……?」

「どうかしましたか?」


 要件はこれだけだったようでユキさんが話を切り上げようとした。僕もログアウトするつもりだったのだけど、急にユキさんが言葉を詰まらせた。何か新情報が来たのかと思ったけど、そうでもないみたいだ。


「ハル、悪いけどログアウトはもう少し待ってくれる?」

「いいですけど、どうしたのですか?」

「なんかね、シオンが『ハルと一緒にいるのなら今すぐこい』って言ってる」

「どういうことでしょうか?」


 なんで僕がユキさんの部屋にいることがわかっているのかわからないが、その言葉に従う形で、僕とユキさんは共有スペースに移動した。そこには、サキさんを除いたみんながいた。


「え?」

「どうして」

「やっぱり一緒にいたか」


 僕たちがそろって戻ってくるとシオンさんがため息を吐きながら迎えてくれた。でも、どうして皆んなそろっているのだろうか。その疑問が顔に出ていたのだろう。でも、それよりも先にシオンさんは口を開く。


「お前たち、どうせ二人で魔王討伐に向かおうとしているだろう」

「え?」

「どうして」


 ファンタジー小説とかで、最後の方に勇者パーティーの一人がいいそうな言葉を言ってきた。その言葉に、僕たちは本気で驚く。まさかここまで見抜かれてしまっているとは思ってもみなかった。そんな僕たちの反応に、またため息を吐いて、


「どうしてわかったか? 仲間への思いが強いお前らのことだ。魔王が討伐されないことでサキに負担がかかることを危惧したのだろうよ」

「そこまでわかっているのなら、止めないでもらえるかしら」

「嫌だね。というかサキのことを考えているのは君たちだけと思ったのか? 俺と花月さんが止めなかったらミナトもヨミも馬鹿なことをしようとしていたんだぞ」

「というか、仲間のためにかつての仲間の元へ、罵詈雑言を受けに戻るって何考えているんだお前ら。それを知ったらサキの嬢ちゃんが悲しむに決まっているだろ」

「それは、そうですけど」

「……ごめんなさい」

「ミナトくん、ヨミちゃん」


 でも、続くシオンさんたちの言葉を聞いて、ヨミたちの方を見る。花月さんが言っていることはつまり、彼女たちはかつてのギルドに戻って、協力しようとしたのだろう。でも、僕はサキさんが悲しむということを忘れていた。確かに、自分のせいで僕たちが苦しむことがあったと知ったら、きっとサキさんは自分を責めるだろう。


「まああんまり責めるのも酷だが、少し傲慢であることは自覚しろよ。お前たちが動いたくらいでどうなるかわからない」

「それは!」

「そもそも誰も前衛がいないだろうが」

「!」

「ん? 花月さん?」


 でも、この流れはシオンさんでさえ予想外だったようで、驚いたように花月さんの方を見ている。花月さんの職業は騎士。うちのギルドでは唯一の前衛職に当たる。つまり、前衛が足りないということをわざわざ指摘したということは、


「俺も、協力しよう。というかちょうどいい。俺たち6人で挑めばいいじゃねえか」

「え? えっと」

「それならサキの嬢ちゃんを苦しめることは少なくともかなり減るはずだ。な? シオン」

「はぁ、確かにそうですね」


 花月さんの言葉に、シオンさんは諦めたようにうなづく。そして、僕たちも花月さんの言葉を聞いて、少しだけ光明が見えた気がした。そしてユキさんはそんな言葉を聞いて、


「……みんな、協力してくれるの? 私の我儘なのに」


 この状況になっても、まだそんなことを言ってくる。僕は少し呆れを込めながら、ユキさんに話しかける。


「僕も同じですよ。ギルドメンバーが苦しむのはいやだ」

「私も同じです」

「サキさんにはお世話になっていますからね」

「ま、ギルドっていうのはギルマスに影響されるもんだよ」

「これもまた、大人の役目なのさ。まあ、お前たちが動くのは想定外だがな……だが、ギルマス。ここはあんたのギルドだ。だから一言命令すればいい」


 僕の言葉を皮切りに、ヨミ、ミナトくん、シオンさん、花月さんが言葉を連ねる。僕たちの言葉を聞きながら、ユキさんは驚いたように僕たちを見る。そして、みんなの言葉を聞いて、


「わかったわ……久しぶりのギルマス命令だけど仲間のために戦うわよ」


 決意を込めた言葉を、僕たちに向けて語った。さて、と。僕も一つ、やっておくべきことを済ませておこうかな。自分の部屋に戻ってから、僕はとある人たちにメッセージを送る。


「すみません、一つ、聞きたいことがあるのですが」

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