傍観者↓
前話の主人公視点です。
少し話が短いです、すいません。
「あいつは確かスフィアスピナだったか?」
以前戦ったことがある魔物だ。
見かけによらず狡猾な魔物で、油断を誘い、その隙を縫って致命傷を与えようとしてくる。
「勇者が負けるとは思わないけどな……」
確かに厄介な魔物には違いないが、戦いに慣れている人間であれば問題なく倒せるはずだ。
そのはずなのに――
(あいつは何をやっているんだ?)
最初は様子をみるというところは評価するが、とっさの判断に弱く、迷いが多すぎる。
あの手の狡猾な魔物は、人の感情の機微を分かっているのだ。
迷いなど見せようものなら、すぐに喉元に喰らいついてくる。
案の定、魔物のスピードに対応しきれず、勇者の腹部に手痛い一撃が入る。
(やっぱりくらったか……)
少女の体が吹っ飛んで行く。
どうやら彼女は若いだけあって、圧倒的に経験が足りてないようだ。
(このままじゃマズイか……?)
スフィアスピナが意味のない予備動作を始める。
勇者がその光景を見て、薄く微笑んだ。
(駄目だ……完全なる判断ミスだ)
おそらくそんな勇者を見て、スフィアスピナも同じように笑っているのだろう。
痛手を負うと、人間余裕がなくなる。
すぐ近くに見える勝ち筋へと向かって闇雲に突き進んでしまう。
それが例え、用意されたレールに沿って、地獄へと向かっているだけだとしてもーー
叫びながら勇者は魔物へと切りかかる。
スフィアスピナも、ここぞとばかりに動き出した。
(まあ死にはしないだろう……死ぬほど痛い、かもしれんが……)
人はこうして強くなっていくのだ。
傷つき、敗れ、立ち上がり経験を積み上げていく。
彼女は勇者。
こんなことでは死にはしない。
確かに顔に傷は負うかもしれないが、まだ死なない。
俺には、この後起こる出来事を見届けたいという考えもある。
なら答えは決まりきっている。
【分岐感】の発動はない。
俺の運命はこれによって変わることはないということだ。
なら俺は好きにさせてもらうさ。
「え……?」
近くで呆けた声が聞こえる。
「やっぱり、女の顔に傷をつけたら駄目だよな……」
俺は魔力と電気を纏った掌で、スフィアスピナを地面に叩きつけた後、誰にともなくそう言った。
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