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3-1 疑惑のDゲームらしいですよ


「え、それってどういう事?」

「これはあくまで俺の想像、仮説の話だ。だからそうと決まったわけじゃない」

 だけどこのヘルプを見る限り、その可能性が高いんだ。

「……話してくれ」

 トラウマのチャンネルでは珍しいシリアスシーン。

 だけど、俺はわざとそういう演出がしたくて言っているんじゃない。

 本当にその可能性があるかもしれないと思っているんだ。

 だから今から大河に、そして視聴者にその理由を、推理過程を話そうではないか。

「それじゃあ行くぞ?」

「う、うむ」

 デスゲームと聞いて緊張しているのか、口調はいつものだけど、声色が完全に素になっていた。

「まず、とは言ってもそんな複雑で長い推理じゃない」

「そうなのか?」

「そっ。それでな、ヘルプにはこう書いてあるんだ」

 俺はこっちを向いているであろう大河の方を見ないように、真っ直ぐと正面ににあるディスプレイに視線を注ぎながらヘルプを読んだ。

「空腹ゲージについて?」

 ヘルプ画面の一番上に表示されている題名を音読して、おそらく首を傾げているであろう大河。

「簡単に説明すると、どうやら隠しメーターで空腹度ってのがあるみたいなんだ。時間経過や活動内容によってどんどんと値が減って行き、一定ラインまで下がるとバットステータスに掛かってしまうらしい」

「バットステータス?」

「名称は空腹。実にシンプルだな」

 企業の方はもう少し捻ったり、オシャレな名前が思い付かなかったのだろうか。……残念。

「デバフ内容は移動速度低下にアイテム破壊速度低下、アイテム使用効率低下、攻撃力低下、防御力低下その他にもエトセトラっと、言ってしまえば全ステータス低下だな」

「なるほど。確かな移動速度が落ちた気がするな。何とも鬼畜仕様なのだな」

「だな。んで、さっきの結論の理由は次の項目だ」

 真剣味が増した俺の声に、大河がゴクリと喉を鳴らした。

「空腹度がゼロになると、その瞬間にゲームオーバーになる」

「ゲームオーバー……」

 大河が復唱した言葉と、俺がさっき言った言葉。デスゲームと合わせて考えると、このゲームオーバーというのは現実における俺たちの死だ。

「……何故それでデスゲームという結論に至った?」

 かすかに震えた声で問う大河。

「考えてみろ。どうして俺たちは今これほどまでに空腹を感じている?」

「それは……」

「さっきトラも言ってたよな? 確かに移動速度が落ちてるって、つまり現在空腹度低下によるバットステータスを受けちまっている事だ。んで、この空腹感もそのバットステータスによる影響じゃないかと思うんだ」

「っ!」

 結論の理由がわかったのだろう。

 背後で大河の身体が跳ねるのを感じた。

「そ、それってつまり」

「そうだ。格好だけじゃなくて、ステータス状態も俺たちの感覚に影響を与えるんじゃないか?」

「……つまり、ゲームオーバーを迎えるとだ……」

「そう。キャラの死すらも俺たちに共有されるかもしれない」

 バットステータスによって空腹感を感じるという事は、ステータス内容が俺たちの身体とリンクしている証明だ。

 無論確定したわけじゃない。

 あんな有名ゲーム企業がデスゲームを作って、実況者たちに参加させる理由は思い付かない。

 大企業だって死者を出してしまえば後処理は大変なはずだ。

 しかも相手が幅広く顔を公開している実況者となればなおさらだ。

 だけど、万が一だとしても、最悪を想定しておいて損はないはずだ。

「トラ。ゲームオーバーは絶対に避けるぞ」

「うむ! 当然だ!」

 デスゲームは関係なしにこういうサバイバルゲームをやるならばノーミスが最高だ。

 とは、現状困った事がある。

 このまま空腹度が下がり続ければ待つのはゲームオーバー(死)だ。

 つまり、今必須なのは服よりも食料。

 大河もそれがわかっているのか、服よりも食料がありそうな飲食店半壊の探索をしていた。

 このまま何も食べる事が出来なければ危ないかもしれない。

 二人揃ってドキドキしつつ、探索する事現実時間計算で五分ほど。

「あった!」

 ついに見つかった食料。

 その名も戦時クラッカー。

 完全に非常食である。

 とはいえ、俺たちの空腹感は正直言ってやばいレベルだ。

 具体例を出すならば、高熱を出して丸丸一日何も食べずにいて、その次の日熱が下がった時ぐらいの空腹感に襲われているのだ。

 これでどの程度俺たちの腹が、というより空腹度が回復するのかわからないけれど、今はともかくはむるべしっ!

 アイテム欄から戦時クラッカーを選択し、使用。

 どうやらこれは一度で食べ切るタイプではなく、一定回数使えるらしい。

 長押しを続けている間、クラッカーの袋に手を入れて食べるモーションが繰り返されていた。

 空腹度自体は目に見えないため、自分たちの空腹感から計るしかないのだが、さっき大河が探索をしている間に見つけた項目があったんだよな。

 項目名。食べ過ぎについて。

 どうやら食べ過ぎるとそれはそれだデバフがついてしまうらしい。

 現実でも食べ過ぎるとお腹が痛くなったりするわけだし、当然といえば当然なのだが、なんともまあリアルなものだ。

 だから腹が膨れたと思ったら食べるのをやめないといけないのだが、ここまでリアルなのだから画面に映っているクラッカーの量と、腹の膨れ具合は一致しているはずだ。

 だから一袋丸丸食べても問題ないだろ。

「うむ。これで助かったな!」

「そうだな」

 俺の予測通り一袋丸丸食べでデバフに掛かる事はなかった。

 だけどしっかりさっきまであった空腹感は綺麗になくなった事から、助かったのは確実だ。

 と、確信していたのだが、どうやらそれがフラグとやらになってしまっていたらしい。

「……う、ウマ! 突然画面が曇って来たのだが!?」

「まさか故障か?」

 大河の焦った声が聞こえてヘルプを画面を横にズラすと、確かに風景が霞んで見えていた。

「……ん? ヘルプ画面は普通に見えてるな」

 曇って見るののはヘルプ画面などのウインドウ外。

 通常のゲーム画面というか、キャラ視点というべき範囲が曇っているのだ。

「……まさか。デバフか?」

 空腹感とは違う。食べ過ぎデバフも視界がおかしくなるなんてヘルプには書かれていなかった。

 疑問符を大量注文する事になってじったが、この疑問はすぐに解決する事になった。

「……あ」

「どうしたのだウマ?」

「いや、空腹度の下に似たような項目が……」

「似たような項目?」

「……渇き度についてだって」

「…………」

 俺の言葉に口を閉じる大河。

 渇き度というのはつまり、喉の渇き度と思って良いんだろうな。

 どうしていきなり喉が渇いたのか。

 もちろん空腹度と同じく時間経過ってのもあるだろうけど、ここまでリアルに作られているゲームだ。おそらく原因は先ほど食べたクラッカー。

 クラッカーなんて水分のすの字もないパッサパサな食べ物だからな。

 このゲームは地味に鬼畜仕様だ。だからクラッカーには空腹度が回復する代わりに、渇き度が下がるという罠でもあったのだろう。

 つ・ま・り・だ。

「結局ピンチ状態から脱してないって事だよな!」

 これは流石に不味いんじゃないか!?

 いやしかし、水分を補給するためのアイテムくらいすぐに見つかるはずだ。

 ……いや、違うな。

 サバイバルにおいて大切なのは水と塩とされている。

 飲んでも問題ない水がこの鬼畜仕様ゲームで簡単に手に入るのか?

 引き続き飲食店半壊地の探索だ。

 次回更新は火曜日です!

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