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劣等魔術師の下剋上 普通科の異端児は魔術科の魔術競技大会に殴り込むようです  作者: 山外大河
二章 魔戦開戦編

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30 まだ終わりじゃない 上

 それからしばらく赤坂の力の事を話し終えた後、今度は赤坂が暁に訪ねた。

 今までこちらの情報を教えていたのと、暁の性格上隠さず教えてくれるのではないかと思って聞いたのは、二戦目で見せた不可思議な現象。

 確かに実体があった筈の暁の攻撃を暁はノーガードで受け止めた。

 あれは一体なんだったのかという疑問。求めたのはその解。

 それに対して暁は予想通り包み隠さず答えてくれる様で、暁は少し内容を纏める様な素振りを見せた後答えてくれた。


「さて、少し考えてみてほしいんだけどさ、自分で生み出した力で自分を傷付けるのは少しおかしいとは思わないかい?」


 言われて少し考えてみる。


(自分の力で自分を傷付けるのは……ふむ)


 そして一つ答えにたどり着く。


「それはつまり俺がおかしいと」


「ごめん俺の配慮が足りなかった。そういう意図はないから、うん」


 普通に謝ってきた暁は、意図を伝える為の例え話を始める。


「えーっと、じゃあそうだな。例えば対象物を一瞬で焼き付くす程の火力を持つ炎を操る魔術を使えたとする。だがそれだけの炎を扱えばその炎の熱量が術者に対しても牙を向く。まあそれは当然だろうと言われればそうなのかもしれないけど、自分の魔力と術式で生成したいわば体の一部の様な魔術が自分自身にまで牙を向くのはおかしいと思った人がいた。大昔の暁の当主だ」


「じゃあそれはお前ん所の研究成果って奴か」


 赤坂の問に暁が頷く。


「ああ。自らの魔術を術者に不干渉となるようにチューニングするのが暁の魔術研究の成果だ。だからあの時俺が正面から喰らった魔術は俺をすり抜けていったわけだ」


「……なるほど。すげえな」


「いやいや、まだ俺じゃやれる事は少ないし使いこなせてないこら。まだ凄いって言われるには早い」


 暁は謙遜するようにそう言うが、少なくともそれは渚にもできない芸当だと思う。

 去年の世界大会時点でそれを生かした様な戦い方をしていなかった事を考えると、この一年で暁はその技術を実践レベルにまで仕上げてきたわけだ。

 ……これはもしかすると渚と一対一で戦えば、五回に一回位の割合で暁が勝利を納めるのではないのだろうか?

 そう赤坂が考えていた時だった。


「まあそういう訳で、二戦目のカラクリはそういう事だ」


 暁はそう言って、会話に一区切りを付ける。

 そして赤坂に確認するように問いかける。


「それでえーっと赤坂……でよかったかな?」


 どうやら普通科のやべー奴という二つ名が先行しすぎて本名の方はうろ覚えだったらしい。

 赤坂は頷いて答える。 


「赤坂でいいよ」


「ああ、じゃあ赤坂」


 そして改めて暁は赤坂に問いかける。


「残りの三戦、どうする?」

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