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劣等魔術師の下剋上 普通科の異端児は魔術科の魔術競技大会に殴り込むようです  作者: 山外大河
二章 魔戦開戦編

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20 世界の実力

「……で、どうするかだよな」


 明らかに狙われやすそうな建物から飛び降り、とりあえずその陰に隠れながら赤坂は作戦を考える。

 ……まず問題はどうやって暁の居場所を割り出すか。それをどうにかしなければ相当不利な戦いになる。


 これが本来の団体戦だったなら、どこかしらで起きる戦闘で少なくともそのポイントで誰かが戦っているという事も分かるし、適当に動いていれば誰かと遭遇する事もあるだろう。

 そしてそんな偶然に頼るよりも現実的な手段として、魔術による周辺の敵の位置を補足しておくのが団体戦の定石だ。

 渚ならおそらくそういう探知に引っかからない様なステルス系の術式を含めかなりの広範囲で探る事ができるだろうし、美月もある程度の範囲と精度なら探る事もできる。

 だから一対一のこの戦いにおいてもそうした術でまず暁の居場所を探るべきなのだろうが。


「……うん、冷静に考えると俺無茶苦茶不利だよなこれ」


 暁がそれを察していたかはともかく、赤坂隆弘には魔術そのものが使用できない。

 即ちそんな探知魔術も使用不可。

 つまりはほぼ一方的に向こうにこちらの居場所がばれている状態という訳だ。

 ……その事実に改めて直面して思わず軽くため息が出る。


(……どうせ渚程とは言わないにしろ、とんでもねえ範囲と精度誇ってんだろあの野郎)


 もっともため息を付いた所で戦況が変わる訳でもない。

 とにかく動かなければ。


(……さて、俺の居場所を早々と探知したとして暁はどう動く)


 赤坂は周辺を警戒しながらその場から移動を始めつつ思考を凝らす。


 暁隼人はオールラウンダーだ。接近戦から遠距離からの魔術の打ち合いまで何でもこなしているのを中学の大会のネット中継で見た。

 だが個人戦のフィールドで遠距離は団体戦の枠に当てはめれば中距離だ。

 団体戦の広大なフィールドで遠距離と言えば……それこそマップの端から端へ攻撃してくる様な攻撃。

 果たして暁もそういう動きをしてくるのだろうか。


(……寧ろそう来てくれれば助かるんだけどな)


 魔術戦において遠距離からの魔術を核とした精密な遠距離攻撃はほぼないと言ってもいい。

 当然それを狙った魔術も存在する事には存在する。だけど科学が決して万能になり得ないように魔術もまた万能には程遠い。

 遠距離の地点に破壊力の高いエネルギー波などを打ち込む事はできても、それだけ離れた標的の頭を打ち抜く様な精密射撃では圧倒的にスナイパーライフルに軍配が上がる。

 故に武器の持ち込みが負荷な魔戦において一定距離以上から認識する間もなく頭を撃ち抜かれる様な事はほぼないと言っていい。

 あるとすれば着弾地点の周囲にまで影響が及ぶような派手な術式。


 もしそうであればその軌道である程度敵の現在地を掴む事ができる。

 だがそんな派手な攻撃を長距離射程様に術式を調整して放てば使用する魔力量もそれだけ増える。

 故にそれすらも撃ってくるかは分からない。

 一番可能性が高いのは向こうだけがこちらの居場所を知っている事を利用した中距離。もしくは接近戦での奇襲攻撃だ。

 ……射撃で場所を掴んでこちらから攻める様な展開にはそう持っていけない。


(でもまあそんな簡単にはいかねえよな)


 仮に打ってきても、それを優位な状況に変えるには向こうがこちらを潰すつもりで撃ってくる攻撃を躱せる事が前提なのだから。

 そう思った次の瞬間だった。


 何かが心臓付近に当たる感覚を感じた瞬間……急速に意識が削がれる様に視界が暗くなったのは。


「……ッ!?」


 ……胸に、穴が空いていた。

 血液は漏れない。デフォルトルールとは違い削られるのは精神。そこに肉体的ダメージも流血も伴わない。

 ……そう、精神が削られる。

 そして、気が付けば意識が遠くなり――



「……ッ!」




 そして次の瞬間には暁が視界の先に居た。

 だけど今居る所は戦闘フィールドではない。

 戦いが始まる前に暁と対面した仮想空間だ。

 そして暁は好戦的な笑みを浮かべて言う。


「まずは俺の一勝だな」


「……このやろう」


 思わず変な笑みを漏らしつつ俺は暁にそう言った。

 精密な狙撃はほぼないと言ってもいい。

 ……だけど冷静に考えればそれは確実にないという訳ではない。


 目の前の男はそれをやってのけたのだ。


「……さあ、まだ一戦目だ。まさかこのままあっさり全勝なんて事にはならないよな?」


「させねえよ。次だ次」


 だけど諦めるつもりはない。

 負けたら次どうすればいいか考える。

 その思考を止めなければ、止まることはないのだから。

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