勇者動く
前回の投稿から気づけば二十日以上経っていました……。あれ?こいつ毎日投稿か?と期待した方。ホントすみませんでした。
朝起きると、気分は最悪だった。珍しく悪夢をみていたようで、心臓が早鐘を打っている。内容は全く覚えていないが……。
しばらく横になっていると、鼓動が落ち着いてきた。そのまま起き上がって朝食を摂ることにする。
食堂でフェイスを見つけたので向かいに座る。
「おはよう」
「……もう昼だぞ。ミヅキ」
「もしかしてそれ、昼ごはん?」
「ああ」
まあ普段からこんな生活をしているわけで、僕は気にしていない。ファーナシスでは散々叩き起こされたが、ここには僕の睡眠を妨げる者は誰もいないのだ。とはいえ、午後からは戦争に参加しなくてはいけない。
「フェイスは夕方の担当だったっけ?」
「そうだ。ミヅキは昼だろ?行かなくていいのか?」
「これ食べたらいくよ。もう派手に動く気はないしね」
残り魔王は四人。もう半分も死んだのだから、本格的に向こうも動くだろう。後続の勇者が来るまで持ちこたえて、到着と共に攻勢に出る。これが僕の考える今後の展開だ。
十二魔将とかいうのも居たが、今となっては大した敵ではない。きっと一吾でも鼻で笑って倒せるレベル……そこまで弱かったか?まあ特に問題なく勝てるだろう。
総力戦となれば、ケヴィンなどの実力者もいるので問題ない。沼田も参加すれば更に安心だ。
そして最後に、大魔王を全員で袋叩きにしたい。いや、白状すると、大魔王については何も考えていない。とにかく倒せばいいと思っている。
そんな寝起きの取り止めのない思考を終わらせて、僕は今日も戦争に向かう。
ーー
「ヒャハハハハ!人間どもめ!泣け!喚け!俺様が血祭りに上げてやるぜー!ヒャッハーー!……グオフッ!」
……十二魔将「狂血」のバル、あっさり死亡。あまりの呆気なさに物足りなさを感じつつ、刀についた血を拭う。これ以上戦果を挙げては流石にまずいんじゃなかろうか?もしかして戦況を滅茶苦茶にしているのは僕なのだろうか?
そんな不安を振り払うように、僕は戦場を駆けるのだ。
ーー
一時間後、早めに切り上げた僕は、宿でフェイスに慰められていた。
「やってしまったああああ」
「き、気にするなミヅキ、誰にでも失敗はあるさ」
あれから一時間、それはもう立派な戦果を挙げてしまった。また魔王を倒してしまったのだ。でも放置したら人が沢山死んだわけだし、結果的には良かったんじゃないでしょうか?
「どうも剣を抜くと夢中になっちゃんだよ……」
「戦うお前は楽しそうだからな」
「まるで僕が戦闘狂みたいじゃないか」
「まさにそうだが」
「……慰める気ある?」
「強欲」のフレッド。襲いかかってきたんだ。僕はただ身を守ろうとしただけなんだ。
精神にダメージを与えてくるフェイスは、話を逸らしてきた。
「そ、そういえば!ファーナシスから手紙が来てたぞ」
「む、ようやく全てが終わるかもしれない」
怪訝な顔をするフェイスをよそに、僕は部屋に戻った。
手紙はファーナシスの王からだ。
そこには、最前線の街の王とは会わなくていいこと。
勇者が数日後には到着することが書かれている。
みんなもう到着するの?予想より早い。まさか僕が出発してすぐにファーナシスを出たのか?
やっと本格的に戦争が始まる。暗がりに染まってゆく街を眺めて、僕は高揚と、わずかな不安を感じていた。
ーー
そして四日後の朝、正確には昼。僕の本能は危険を察知して目を覚ました。
「ええ!?」
落ちる雷、焦げる枕。この見慣れた光景に、僕は犯人の名前を呟く。
「白沢?」
「おはよう」
久しぶりの暴力的な目覚ましに僕は少し微笑んだ。数日しか離れていないわけだけど、懐かしい。
「相変わらず朝弱いなあ、水月」
「一吾…….」
と、その声の主を見ると、いきなり殴られた。
「い、一吾クン!?」
「急に出て行きやがって!みんな心配したんだぞ馬鹿!」
「……悪かったよ」
「ま、無事で良かったぜ」
やはり彼らといると楽しい。朝は起こされるが。
「よし、成瀬。作戦会議だ」
そして入ってきた大山の一言で、みんなの顔が引き締まった。
ーー
場所は移動してギルドの会議室。本来なら城で行うべき会議であるが、ファーナシス王やギルドが動いてくれた。各地の実力者が集い、今後の作戦を練っている。
「剣聖」ケヴィン、「閃姫」フェイス、そしてファーナシス王の子、クリスティーナ。他にも闘技大会で見かけた人たちや、全く知らない人。一目見ただけで強いと分かる。
その中に勇者が混じっていることが、僕には驚きだ。半年前にはただの高校生だった僕たちが、今となっては立派な戦力というわけだ。
目的は、とにかく戦力を集中させて魔王と十二魔将を叩くこと。準備が出来次第、僕たちは攻勢に出る。これまで防戦一方だったのだが、攻め入ることにしたのだ。
大魔王は一条、大山、清水、沼田、鈴木、ケヴィンが向かう。ついでに僕もこちらだ。
残りは魔王、十二魔将担当。前線を下げないよう、魔族を減らす役割を担う。
「敵の城に全員いればいいんだが、当然戦場に散らばってくるだろう。慌てず各個撃破してくれ」
ローゼさんが大まかな策を伝えてくれる。
「大魔王には護衛もいるだろうから、気をつけろ。なにしろ大魔王の情報が少ねえ。実力は未知数だ。やばいと思ったらすぐに逃げろよ?」
緊張の面持ちで耳を傾ける中、沼田は不敵な表情だ。だから何があったんだ君は。なんで強者の余裕纏ってんの?確かに強いけども。
ともかく人間対魔族の決着は近い。そんな実感はまだないが、僕も紅雪の手入れをしに、宿へ戻った。
そして次の日、戦場に立った勇者たちは、英雄となるべく、足を踏み出した。
「さあ、戦争を終わらせに行こうか」




