結構本気出したよ
寝落ちしてました。
コンコン
ドアをノックする音がする。知らないのか、二回しかノックしないのはトイレノックと言われているんだぞ。僕は狸寝入りを決め込んだ。
コンコンコン!
僕の心の声が聞こえたのか?しかし僕は朝に弱い。なにより起きる意志がない。
ドンドンドン!
というか朝早すぎない?まだ朝食の時間じゃないよ?薄眼を開けて時計を見るとまだ六時だった。
ドドドドドドドッ!
ちょっ、待った!ドア壊れるでしょ!
僕は急いでドアを開ける。
「よう、相変わらず朝弱いな水月。」
ドアの外には一吾がいた。こいつ……
「しってるならおこすなよ。で、なんのよう?」
僕は半ギレで対応する。呂律が回らない。
「いや、今日初めての実戦だろ?緊張しちゃってさ、訓練付き合ってくれよ。」
「やだ。」
「そんなこと言わずに頼む!剣術だけでいいからさ」
「けんじゅつだけっていってもね……」
「な?いいだろ?」
「ほかをあたってくれ」
「そんなぁ」
うーん、めんどくさいな。……待てよ、これはいい機会かもしれない。丁度昨日半殺しを決定したし、起こされて気分が悪い。訓練の名目で憂さ晴らしをしようじゃないか。
「しょうがない、手伝ってあげよう」
「よし!恩に着るぜ!」
ー
支度を済ませたあと、僕達は訓練場に来ていた。
僕らは木刀を握っている。
訓練の初めは全員木剣だったが、訓練を重ねるにつれ、木刀を扱う者が出て来た。僕や清水や一吾が主だ。一から剣を習ってみようとも思ったが、僕にはどうもしっくりこなかった。
千年前には刀なんてなかった。この世界に刀が現れたのは僕の聖剣の影響だ。僕の聖剣は刀の形をしていた。
「さあやろうぜ!勇者様♡」
「寝起きだから手加減できないけど、気をつけてね☆」
若干一吾の顔が引きつった気がしたけど気のせいだろう。
「いくぜッ!はぁぁっ!」
一吾が斬りかかってくる。僕は最低限の動きでかわす。再び一吾が木刀を振る。これまた簡単にかわす。
「くそっあたんねえ!」
「反撃していい?」
「大丈夫だ!勇者様♡」
一吾がニヤニヤしながら「勇者様♡」と言う。
うん、やっぱり殺そう。手加減なんて必要ない。
僕は木刀を振った。それだけで一吾の後ろの壁が切れた。
「ま、まじかよ…」
「まだこれから☆」
そう言うと僕は全速力で間合いを詰め木刀を叩きつける。
「ぐぁぁ!」
頭に綺麗に入った。すっきりするなー。
「どう?僕、結構本気出したよ」
「いや、痛えし全然見えねぇよ!」
「僕たちがこれからやる殺し合いなんてこんなもんさ」
「そうか、そうだよな。殺し合いだよな…」
「まあ最初は大丈夫だよ」
「二人ともー!ご飯だよ!」
鈴木が呼びに来た。今日も、元気そうで何よりだ。
「わかった!すぐに行くよ」
ー
食事を終え、身支度を整えた僕達はダンジョンの入り口前に来ていた。ダンジョンは氷でできているようで周りにいるだけで寒い。それもただの寒さではなく、ゾッとするような寒さだ。
「みなさん良いですかな?初めての実戦ですので無理はせんようにお願いしますぞ」
「「「はいっ」」」
今回の探索はひとグループ四、五人でやる。ダンジョンの各所に騎士団、魔法師団の人がいるので安心という訳だ。僕のグループは一吾と沼田、白沢、木村だ。
木村というのは白沢の取り巻きみたいなもので大体近くにいる。
戦力で言うと一番強いのは一条の所だ。一条、大山、柿崎、清水、鈴木がいる。
最近柿崎が沼田と鈴木が話しているのを濁った目で見ているのが不安だったがグループが別れたので少し安心だ。
「では行きますぞ!」
ダンジョンとは下に続いて行く洞窟のようなものだ。中にはたくさん魔物がいる。
そのダンジョンに足を踏み入れた瞬間僕は気づいた。
この奥に僕の聖剣がある。
この冷気のゾッとする感じは僕の聖剣だ。ロッタスさんは魔物の邪気だと説明しているが、僕にはわかる。これはそんなものじゃない。もっとタチの悪いものだ。
少し懐かしく思いながら道を進むと、初の魔物が現れた。 ゴブリンと言われている小人型のものだ。
一吾が真っ先に斬りかかる。ゴブリンも抵抗するが、異世界に来て色々強化されている勇者に敵うはずもなく、あっさり斬られた。
「うっ、あんま気分のいいもんじゃねえな。」
今の所敵はゴブリンだけだ。その後も多数のゴブリンを倒しながら進むと、開けた場所に出たので休憩になった。