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つい夢中になってしまった。


…どうしよう?


 今、目の前には、僕の行動に若干引き気味の沼田と鈴木が、後ろには壁に刺さって動かない柿崎と野村がいる。さて、もう一度言うが、本来僕はクラスカーストでは中間に位置しているのだ。この世界でも、「成瀬って魔法も剣技も人並みだよね」って感じだ。


決して柿崎や野村を壁にめり込ませたりできない設定なのだ。


「いやいや、偶々だよ!ほら、よくある、あまりの怒りにパワーアップ!ってやつ?」

「「は、はぁ…」」


駄目だ、二人とも胡散臭いものを見るような目をしてる。助けて、神様。今僕の強さがバレたら、平穏な異世界生活がおじゃんだ。


「水月ぃー!あと鈴木も!一条が呼んでるぞ!」


僕が困り果てている時、救いの声が聞こえた。神様?ああ、一吾か。ありがとう、逃げる口実ができた。


「わかった!今行く!じゃあ、そういう事だから。」

「あ、あの成瀬君」

「な、なに?沼田クン」


僕は内心で冷や汗をかきながら振り向いた。思わずクン付けになる。


「ありがとう。助けてくれて。」

「あ、ああ、それね。ちゃんと鈴木にも感謝しなよ?最初に君を助けたのは鈴木なんだから。」


そう言って僕は一吾の後を追った。


「なんで呼ばれたんだろう、一吾は知ってる?」

「わたしも知りたいなー」


鈴木も心当たりが無いのか、首を傾げている。


「いや、俺も呼ばれたばっかだ。取り敢えず行ってみようぜ。」

「オーケー」


最初に説明を受けた時の会議室に着くと一条、大山、清水のクラスの中心の三人が待っていた。

ちなみに戦闘力もトップクラスだ。




一条が話し出した。


「実はロッタスさんからそろそろ王に謁見するように言われたんだ。」

「なるほど、訓練もひと段落したし、もう世界を救うのか決めろってことか。」


僕としてもその方が助かる。実は僕達はまだ王城から外に出させてもらっていない。この世界で生きていくための常識もないクラスメイト達は、出してもらっても迷惑だろう。

自国の人々はまだ僕達勇者の存在を知らないはずだ。


「そう、で、俺はみんなで世界を救いたい。俺たちはこの世界の人達より元から強いみたいだし、困ってる人を見過ごせないのもある。」


甘っちょろい考えだと思う。命を大切にしなさい、と言いたくなる。でもここでそんなことを言うつもりはない。というか言える資格ないし。


「へぇー…それで僕を呼んだ理由は?」


なんとなく部屋に帰りたくなってきたな…


「実は他のクラスメイトに根回しは済んでるんだ。成瀬も佐藤に言われただろ?ここにいるのは説得に関わった人達だ。」

「なるほど」


昨日の夜のあれってそういう事だったのか…あ、目逸らすな一吾。


「それで明日の謁見なんだけど、成瀬にも来て欲しい。」

「え?」


なんで?何となく嫌な予感を覚えながら聞き返す。


「大山と僕だけじゃ不安だし、成瀬もきてもらおうかなぁとおもって。成瀬って剣術も得意そうだし、適任かと。」


oh…


「そうだな。隠そうとしていたが私にはわかるぞ。後で私と模擬戦だ。」

「はい…」


終わった…清水はすでにやる気満々だ。


「わかった。謁見には僕も付いていく。期待されすぎな気もするけど。」


暗に見込み違いですよ?という意味をこめる。


「ありがとう。助かる。」

「俺からも礼を言う。」


全然伝わってない。君たちそれでも日本人か。

いいよ、もう腹をくくろう。貴族とかのドロドロに巻き込まれないようにするにはこれが一番かもしれないし。千年前に巻き込まれた時は本当に面倒だった。



会議が終わった後、僕は清水に連れられ、訓練場に来ていた。

壁に二つ程穴が空いていたけどなんの穴が皆目見当がつかないな…僕は極力見ないように努めながら清水に向き合った。訓練場にはなぜか一条、大山、一吾も、付いて来ている。鈴木は付いて来ず、どっかに行った。大方沼田のところにでも行ったのだろう。


「あのー、やっぱりやるんですか?」

「もちろんだ、さっさと剣を持て!」


もう嫌だ。部屋に帰りたい。

目の前にはやる気満々の清水が構えている。


「はいはい。」


僕は渋々木剣を持つ。


「始め!」


一吾がノリノリで号令をかけた。


お互いに間合いを図る。不真面目にやると頭をカチ割られそうだ。清水の剣先を見れば、これからの剣撃が見えて来た。僕がどうすればいいのかもわかる。当然、僕がそれに従えば清水に勝ってしまう。そんなことはあってはいけないので、取り敢えず僕から突っ込んでみた。

横に一閃、防がれる。間を空けずに振り下ろす、また防がれる。


「本気を出せ、成瀬!中学の頃は私よりも強かっただろう!」

「そんなこと言ったって清水は県大会優勝者だったじゃないか!」


いつの時代のことを話しているんだ、と僕は思った。高校で剣道をやってない僕より絶対につよいだろ。

そろそろ剣を飛ばされるとかして負けようか、と思い出した時、清水は禁句を言ってしまった。


「お前の剣道部はそんなものだったのか?」

「ん?」


いや、まて水月、大人になるんだ。あれは挑発だ。乗ったら負けだ。


「及ばずながら全力で行こう。」


乗ってしまった。

一吾がにやけている。まあ見ていなよ、元主将さん。もうこうなったら自棄だぞ


「その意気だ!」


今度は清水が突っ込んで来た。僕にははっきりと「最適解」が見えている。それに合わせて剣を振るう。

カンッ!

鋭い音がして剣がかち合う。

すかさず受け流して突きを放つ。ギリギリで清水が避ける。僕は息もつかせず剣を一閃する。清水が尻餅をついた。


「僕の勝ちだ。」

「…………」

「…………」


どうしよう。


「予想以上だったな。まさか負けるとは。」


だろうね。トップクラスの実力を誇る自分がまさか僕に負けるとは思うまい。


「すごいね成瀬、そんな強かったんだ。」

「なんで隠していたんだ?」


「いや、隠してた訳じゃないし。たまたまじゃね?」


適当なことを言ってみる。


「明らかに練習の時とは動きがちがったが」


大山、余計な詮索をするな。


「ま、まあ今日はなんだか調子がいいね。」


すごい怪しい。白々しい、と我ながら思う。


「まあ頼りになる人が増えたと言うことで明日は頼むよ?成瀬。」


まだ清水と大山は気になるようだったが、一条がしめてくれたので僕は解放された。


今日は疲れた…

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