弟子?
次の日
「ミドゥキー!」
「ごふっ」
僕は腹に痛みを感じて目を覚ました。見ると、腹の上に四歳くらいの子供がいた。名前は確かライアンだ。
「あ、ああ、おはよう」
怒るわけにもいかず、挨拶をする。顔が引きつっている気がするが、気のせいだ。
「おはようミドゥキ!」
子供は元気だなー。
同じ部屋で寝ていた一吾は既に起きているようだ。
「ミドゥキこっちこっち!始まるよ!」
なにが?寝ぼけた頭でぼんやり思うが、ライアンは僕を外へと引っ張っていく。庭に着くと、そこには向かい合う一吾とトーマがいた。それを囲むように子供達がいる。……なにやってんの?僕は少し眠気が覚めた。
「来たな、ミズキ!」
トーマは敵意を剥き出しにしていた。なにかしたっけ?
「おはよう。なにしてんの?」
「いや、こいつがいきなり勝負ってよ」
一吾も困っているようだ。
「かわってくれね?」
「ヤダ」
きっぱりと断る。だがトーマはしつこい。
「イチゴと勝負した後はお前だ!」
「「両方かよ」」
一吾と同時につぶやいてしまった。僕は一吾と声を潜めて話す。
「適当に相手しとけば?」
「いや、それもできねえ」
一吾の話では、トーマは未だに僕達を信用しきれていないらしい。院長を僕から守る!の一点張りで、僕が起きていなかったので一吾にも喧嘩を売ったようだ。なんか目の敵にされてないか?僕。
「おい!勝負しろ!」
「理由は?」
無駄と思いつつ、一応聞いて見る。しかし意外にも、答えは返ってきた。
「おれは冒険者になってここの助けになるんだ!だから、お前みたいな悪い奴から院長を守るんだ!」
理が通っていそうで通っていないそれは、もしかしたら小さいながらも彼の男としての意地かもしれなかった。なら僕も真面目に相手をしなければなるまい。
「わかったよ、一吾のあとね」
一吾にもやらせることは忘れない。一緒に引こうぜ貧乏くじ。
「え?……ったく、いいぜトーマ。かかってこいよ!」
「いくぞ!」
この場には院長、白沢、森山は朝食の準備でいない。カヤも手伝いでいないので、遠慮なくやれるというものだ。
トーマが木剣を持って走る。しかしまだ一吾は動かない。剣が一吾に届く、その瞬間一吾は剣を避け、トーマに拳を突きつけた。
「おれの勝ちだな!」
「くそっ!」
まあ当然。次は僕だ。
「まだやれるかい?」
「当たり前だ!ミズキ!」
トーマはさっきと同じように突っ込んでくる。僕も一吾と同じように直前で避けると、剣を奪って足をはらった。
「くそっ、勝てねぇ!」
「まだまだだね」
倒れたトーマはどこかすっきりとした顔をしていた。
なにか吹っ切れたのかな?
「トーマ」
なんとも言えず、名前を呼ぶと、トーマは話し始めた。
「俺、捨て子なんだ。拾ってくれたのが院長で、俺はここで育ったんだ。だから恩返しがしたい!冒険者になって稼ぎたい!だから強くなりたい!」
「ほお〜」
「ミズキ!俺の師匠になってくれ!」
「はいぃ?」
面食らってしまった。弟子なんて考えた事もない。前回この世界に来た時は毎日戦いに明け暮れていたのでそれどころじゃなかった。僕はチラッと一吾を見た。無責任に親指を立てている。
「……わかったよ」
そう言ってしまった。
「よっしゃ!俺も『白銀』とか『覇拳』みたいになるぞ!」
「だれそれ?」
「知らねーのか?最近有名な冒険者だぞ?登録一週間でもう中級になったんだ。」
「へぇー」
なんか知り合いな気がする。多分一条と大山かな?
「あとは『光牙』なんて数日で中級になったんだぜ?」
誰だ?光牙……光……光魔法?
そう思って一吾を見ると、ドヤ顔をしていた。いつの間に二つ名がついたんだ。一生『早起き兄ちゃん』やってろよ……
「まあ、トーマも強くなれるさ」
「うん!」
やっと打ち解けてきたかな?
「みんなご飯ですよー!」
院長の声が、庭に響いた。
僕はすっかり覚めた意識でそれを聞いた。
ー
夕方、ようやく月下狂人と名乗る男が訪ねて来た。
仲間を数人連れている。
「ここの院長、アリシアはいるか⁉︎」
応対に一吾が出る。僕は扉の外で待機だ。気配を消して様子を見る。
「いないな」
「お前は誰だ」
「代理を頼まれた男だ」
「では中に入れろ」
「いやだ。自分がいない間誰も入れるなとアリシアに言われてるんでね」
「なんだと?俺は上級冒険者、月下狂人だぞ?言うことが聞けないのか?」
あからさまに嘘ついてきたな……一吾は笑いをこらえている。
「ああそうだ。わかったら帰れ」
「なら力づくだ」
そう言うや否や男は仲間と共に一吾に襲いかかる。
「おらあぁぁ!」
一吾は一瞬でそれを吹っ飛ばした。
「くそっ、化け物か?こいつ!逃げるぞ!」
「おい!待て!」
一吾は追うそぶりを見せ、僕に目で合図する。僕はそれを見ると男達をつけた。
さて、ここからが本番だ。




