未来を思って
店主が帰った後、僕は孤児院の子供達と触れ合っていた。
「このお兄さんはミズキさんですよー」
子供達が群がってくる。四、五歳の子供が多く、中には赤ん坊もいた。みんなすこし、痩せていた。
「お兄ちゃんミドゥキって言うんだ〜!」
「ミドゥキ〜!遊んでー!」
言えてないから……
僕が適当に子供達をかまっていると、後ろから声が掛けられた。
「おい!どういうつもりだよ!なんでまた俺達を助けたんだよ!」
盗みをしていた子供の内、少年の方だ。名前はトーマというらしい。もう一人の少女はカヤという。二人共十歳で、この孤児院の最年長だ。
「勿論、善意だよ」
あとは僕の名を騙ったやつに地獄を見せる為だ。
「嘘だ!もしかして院長が目的なのか!?」
「へ?」
予想外の言葉に、間の抜けた返事をしてしまう。
「月下狂人って人も、院長を狙ってるの」
カヤが言う。だが「も」ってなんだよ。まるで僕が院長を狙ってるみたいじゃないか。本物の月下狂人も、狙ってないと思うよ?しかし気になるな。調べるか。
「それは違いますよ。ミズキさんはそんな人じゃありませんよね?」
院長が赤ん坊を抱いて現れる。
「じ、じゃあ何が目的なんだよ!」
トーマは僕がここに無条件で手助けをするのが腑に落ちないようだ。
「たまには人を信用した方がいいよ。まあ厳しい環境で生きてくにはその疑ぐり深さは必要かもしれないけど……」
人を信用できないのは悲しい事だと僕は思う。
未来を思って、目を輝かせるのだろうか?この子供達は。なんかこう、うまく言葉にできないけど、彼らの日常に僅かでも希望を与えたい。そんな事、恥ずかしくて言えないけど。
「ま、僕は悪人じゃないから安心していいよ」
善人でもないんだけどね。そう心の中で呟いた。
「ミズキさんはいい人ですよ。大丈夫です。信用して、いいんですよ」
院長が優しく声をかけた。
「信用できねーよ!なんで、なんで俺達を助けるんだよ……」
少し泣き声になってきたトーマを院長が抱きしめる。
僕は場違いかな。そう思い僕は部屋を出た。
少し外に出る、と書き置きを残して家に戻った。
ー
「と、言うわけで、みんなにも手伝って欲しいんだけど。……なんでそんな驚いた顔してんの?」
事情を話すと三人は一様にキョトンとした顔をしていた。
「いや、お前が人助けなんて珍しいと思って」
「失敬な」
「いいぜ!手伝ってやるよ」
「ありがとう。白沢と森山は?勿論報酬はぼくが出すけど」
「報酬なんていらないわよ。わたしも手伝う」
「あたしも」
僕は優しい友達を持ったなぁ。心からそう思った。
「お、俺も報酬なんていらないゼ☆」
ダウトォォ!
「……じゃあ森山は僕と食材を買ってきて料理を作ってくれる?」
「わかったわ」
「一吾と白沢は孤児院に行ってて」
孤児院の場所を書いた地図を渡す。
なぜこの人選なのか。それは白沢があまり料理を作れないからだ。
「二人はそこで僕達が行くまで警備しといて。もし誰かか来たら適当に追い返して追跡してほしい」
「わかったぜ!」
「それ普通に難しくない?」
白沢が言う。
「やってみれば意外と出来るから大丈夫!」
「今適当言ったでしょ」
「君達なら出来る!……追跡出来そうになかったら、追い返すだけでもいい」
「追跡だけにしとこうぜ」
「じゃあ行動開始っ!」
僕は森山と露店街へ向かった。
ー
「食材って言っても、何作る気?」
「まずはお粥かな?いきなり沢山食べても胃がびっくりするから」
この世界に米は存在する。パンが主食としては主流だが、根強い米人気もある。
「どれくらい?」
「お金は気にしなくてもいいからね。全員が満足できるくらい買ってこうか」
「そうね」
「森山は小さい子好き?」
「ええ、成瀬が小さい子好きなのは意外ね」
「別に好きではないよ。嫌いでもないけど」
「恥ずかしがらないの」
「うるさいな。でも森山は似合ってる。よくお母さんって呼ばれてるから。」
「……お母さんか」
森山が少し暗い顔になる。
「わたしね、そう言われるのが辛くて、あんた達のところに来たんだ」
森山が話し始めた。




