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千年


老人に連れられた僕達は会議室のようなところに案内された。まだクラスメイト達は状況を飲み込めていないようで、素直に従った。それぞれが席に着くと、しばらく待つように言って老人は去る。


改めてこの世界に来た人数を見ると丁度20人いた。クラスは40人程だが話し合いに参加していたのは20人だったらしい。二分の一の確率で異世界なんて、まったく、運が悪い。


「おい!どうゆーことだよ!これ!」

「そーだよ!どこなんだよ!」


この事態に早速騒ぎ出したのは柿崎と野村の不良コンビだった。確かに訳のわからない事態で騒ぎたくなるのもわかる。僕は最初の時、全く慌てていない素振りを見せたので「大物だ!」などと褒められたがなんのことはない。驚きすぎて硬直しただけだ。つまり騒げている彼らは中々に期待できるんじゃないだろうか。とにかく、これをきっかけにみんな不安な表情で話し始めた。

僕にも一吾が話しかけてくる。


「この世界か?水月が前に来たのは」


僕が全く動揺していないというのが分かったのか、一吾は割と落ち着いてた。だが白状しよう、二度目もびっくりして絶句している。


「そうだよ。みんなには秘密でね?」


もしバレたら面倒が多そうだ。


「りょーかい」


一悟はあっさりと納得してくれた。……ん?一悟との会話が途切れ、僕は周りが騒がしいのに気がついた。みんなの顔を見れば解る。不安爆発!という感じだ。


「みんな、落ち着いて!取り敢えずあのお爺さんが戻ってくるのを待って話を聞いてみよう!」


椅子から立ち上がった一条が声をかける。

流石は学級委員長、みんなを落ち着かせるのに成功した。まぁ顔を見るに一条も不安そうだけど。

そうして一悟と話しながらクラスメイト達を眺めていると、大山も話しかけてきた。こちらも珍しく不安な表情だ。


「成瀬達は不安じゃないのか?平気な顔をしているが」

「いやいや、僕も不安だよ?一体何が何だか」

「お、俺も」


…ごめん、嘘です。そして一悟君、白々しい真似は止めなさい。

しかし、こんな怪しい対応でも一応落ち着いたのか、大山は目をつぶって黙りこんだ。

僕は一悟との会話も飽きたのですこし考える事にした。

まあ、経験を踏まえると、


・人間に危機が訪れていて僕達は召喚された。しかしこの召喚は人間が狙ってやった訳じゃない。

・だから日本に帰りたいと言っても帰れるものじゃない。


僕が前回来た時もそうだった。神かなんかが関わっているのだろう。人間贔屓の神がこの世界の人間を救うためにやった、と僕は睨んでいる。世界を越える魔法なんてこの世界の人間でも使えない。


・で、こんな事を説明された僕達は二択に迫られる。願い通り世界を救うか、危険は御免だと安全に帰れるまでこの世界で過ごすか。


ここまでは分かるが一つ、気になることがある。僕は世界を危機に陥れていた邪竜達は根絶やしにしたはずだ。今度はなにが人間を脅かしているのか?

そんな事を考えていると先程の老人が戻って来た。これから説明を行うようだ。



説明を受けたクラスメイト達は、怒り、困惑し、悲しみ、迷った。当然、すぐに結論は出なさそうなので、ひとまず僕達は戦う術を学ぶことになった。

日本人からすれば謎理論だが、この世界では当然だ。一応軍隊があって治安を守っているとはいえ、なにかと物騒なこの世界では犯罪に追いついていない。普通に暮らしていくとしても多少の心得は必要だ。

と言うわけで贅沢にも王城の客間を一人一部屋与えられた僕達は明日からの訓練に向け、取り敢えず休むことになった。

ちなみに老人に質問したところ、世界を脅かしているのは魔王という存在で、邪竜ではないらしい。ついでに、勇者ーつまり僕ーが世界を救ったのは千年くらい前らしい。そんなに経っているとは驚きだ。もう伝説の存在になってるみたいだし。名前も伝わっていなかった。


つまり僕がこの世界に来るのは日本の時間で一年ぶりくらい、この世界だと千年ぶりということか…文明は千年前からそんなに進歩してないように見えた。

まぁいいや。僕は寝ることにした。



コンコンコン

僕は部屋をノックする音で目を覚ました。窓を見たが、外はまだ暗い。朝ではないのだろう。ドアを開けるとそこには一吾が立っていた。

中に招き入れると一吾は口を開いた。珍しく真剣な表情をしている。


「水月、ちょっといいか?」

「どうしたの?」

「やっぱり不安でな、俺たち、帰れるのか?」

「さあ、僕にはわからない。暫くこの世界で生きてくしかないだろうね。」

「お前はどうするんだ?」

「僕?適当にやるよ。クラスメイトと一緒に行動する。」

「そ、そうか良かった。俺もだ。水月、頼むぞ。危なかったら助けてくれ。」


珍しく一悟は気弱なことを言った。


「当然だろ。僕の数少ない友達だからね」

「へっ悲しいことを言うなよ」


一吾は帰っていった。



次の日、僕達は勇者の能力というものについて説明を受けていた。

説明するのは昨日と同じ老人だ。


「良いですかな?カードと唱えるとその通り、ステータスカードが出ますぞ。お金も保管できる優れものですじゃ。」

「「「おお……!」」」


実際にやって見るとカードがポンッと出て、感嘆の声があちこちから上がる。僕にとっては常識のような物なので感動なんてしない。


「固有魔法と書いてあるのが先天的な魔法ですじゃ。持っている方と持ってない方がおりますのぅ。固有魔法がなくても、練習すれば通常魔法が使えますぞ。両方とも魔力を消費しますがの。魔力は皆さんがこちらに来た時に身についているはずですじゃ。ちなみに称号というのもあり、何かをした者にだけ与えられますぞ。」


そう言われて、クラスメイト達は自分のステータスカードを見る。僕のはこんな感じだ。



成瀬水月


固有魔法

「忘却」「聖剣召喚+…」「言語理解」

通常魔法


古代魔法

金色防御魔法陣、魔銃、透打


称号

殺人鬼(シリアルキラー)、非天、忘却の悪魔、龍殺し

所持金

金貨1000000枚



称号とか完全に勇者のものじゃ無い。なんだよ殺人鬼って。まぁしょうがないんだけどさ、盗賊とか貴族とか、いろいろ殺した記憶あるし。


そして、二つ思い出したことがある。一つはここでのことをいろいろと忘れているのは「忘却」を自分にかけたからだということだ。もう一つは聖剣の事で、確か邪竜の王の亡骸に刺さってる筈だ。それを見つければ「聖剣召喚」の後ろの「…」も分かると思う。


ちなみにお金は金貨一枚=銀貨十枚=銅貨百枚だ。

金貨一枚は日本円で約1万円なので、僕の所持金は百億あることになる。

僕のは邪龍討伐の報酬が入っているから大金になっている。日本にいたら一生縁のない金額だ。


「言語理解」は取り敢えず全員持ってるようで、問題なくこの世界の人と会話できている。だが他の固有魔法を持っているのは少ないだろう。


「すげぇな!柿崎固有魔法持ってんじゃん!」

「飛鳥もじゃん。いーなー」

「ほう…一条も大山もあるのか」

「うん、聖剣召喚だって」

「俺は剛力だ」


…うん、割といるね。他にも何人かいるっぽいし。一条は僕と同じの持ってるし。勇者ってこんなもんなのか…?


「水月!見せてくれよ!……げ!」


僕のカードを見た一吾が引いている。まぁそうだよね、殺人鬼だからね。

そんな一吾のステータスは



佐藤一吾


固有魔法

「光魔法」「言語理解」

通常魔法


称号

勇者


まあ固有魔法があるので当たりだろう。

普通、古代魔法は欄にないみたいだ。そしてなぜ僕は勇者じゃないんだ。


それはさておき、訓練は魔法と剣術だ。魔法はこの老人と魔法師団の人達が、剣術はこの国の騎士団の人達が教えてくれる。豪華な講師陣。

そういえば魔法は千年前と違うのだろうか?僕はあまり得意じゃないけど楽しみだ。


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