聖剣召喚!光天!
ドーン!
中に入った瞬間に大男が飛んで来た。一吾が巻き込まれて一緒に外へ飛んでいく。
「ギャーッ!」
「なにあれ?」
「さあ」
「ちょっ、たすけて……」
「あのーすいません、冒険者になりたいんですけど」
「おい!聞こえてるだろ!」
何事も無かったかのように僕は魔法を放った直後らしき、受付の女性に話しかける。こちらもまた、何事も無かったかのように対応してきた。
「あ、それでしたら試験を受けていただきます。ちょうど他にも試験を受ける方々がいらしたので、その方々と一緒でよろしいですか?」
「ええ、問題ないです。」
「では、こちらです」
「まてまてまてぃ!なに俺を無視してくれてんだこの野郎!助けろよ!」
「あ、ごめん」
「申し訳ございません」
うわー棒読みだ。全然謝る気ないよこの受付。
「そもそもなんでいきなりあいつが飛んでくるんだよ!」
「いえ、しつこく言い寄ってきたので、ちょっと」
成る程ね、確かに言い寄ってみたくなるような美人だけど……ちょっと、で人を吹っ飛ばすのは怖すぎる。
しかし一吾は
「じゃあしょうがねぇな!」
「そうですねっ」
つくづく美人には弱い奴だな。
ー
僕達は受付嬢に部屋に案内された。
「あれ?一条じゃないか」
「え?成瀬達か」
そこには一条、大山、清水、鈴木がいた。
試験を受ける他の方々、とはこいつらのことだったのか。
「成瀬達も冒険者か?」
「そうだよ」
「あら、お知り合いでしたか!なら丁度良いです。」
受付嬢の説明によると、冒険者になるには試験が必要らしく、これからそれを行うとのことだ。
「個人技能ですか?」
「ええ、ゴブリンを一体、倒していただきます」
ゴブリンというのは人型の身長80センチくらいの魔物で、ファンタジーではお馴染みだ。はっきり言って異世界に来てスペックが上がっている僕達には余裕な相手だ。実際にダンジョンでも何度か倒している。
「余裕だな!何回か倒してるし」
「なら大丈夫そうですね!」
僕達は装備を整え、森へ向かった。
受付嬢はそのまま付いて来ている。試験監督として合否を判定するようだ。
「ゲギャッ」
「まずは俺からだ!」
一条がゴブリンと向かい合う。あれ?一条って剣使ってたような……持ってないんだけど。
「聖剣召喚!来い、光天!」
一条の周りに光が集まる。あまりの眩しさに僕達は目をつぶった。
目を開けると、一条の手には光り輝く剣があった。
聖剣召喚の固有魔法が使えるようになったのか。って
おい、ずるいだろ。あんなのザ・聖剣じゃないか。
僕のなんてザ・妖刀だよ?あんな光り輝いてないよ?冷気と妖気ダダ漏れなんだよ?
そんな僕の嘆きをよそに一条は簡単にゴブリンを倒した。まるで浄化されて行くようにゴブリンの死体が消える。あれは光魔法に共通する性質で魔物などに効果的だ。
「イチジョウ様合格です!」
「よし!」
その後も清水と一吾は刀で、大山は拳で、鈴木、白沢、森山、僕は魔法で倒し、全員合格となった。
それぞれ、ダンジョンに行く前よりも大幅に成長しているようだ。
ー
「全員合格、おめでとうございます!それではご説明させていただきます」
僕達はギルドに帰り、受付嬢から冒険者についての説明を受けていた。
「冒険者には下級、中級、上級、特級、極級があり、依頼を達成することで徐々にランクが上がります。皆さんは下級からスタートです。
次に依頼の説明です。依頼はボードに貼り出さていますのでそこから選んで下さい。依頼を受ける場合は、紙を剥がして受付に持って来ていただければ大丈夫です。
そして依頼にも同じようにランクがあり、ご自分の一つ上のランクの依頼までしか受けられません。ここまで大丈夫ですか?」
「お金はどうなってますか?」
「おっと、説明不足でしたね。紙を受付にお持ちいただいた後、そこで契約金を払っていただきます。依頼を達成すれば、契約金をお返しし、更に報酬をお払いします。後は魔物の素材を持って来てくだされば、そちらもギルドで買い取ります。」
「成る程、大丈夫です。」
「ではパーティーについてです。依頼は複数人でもお受けいただけます。その複数人をパーティと呼びます。臨時にパーティーを組んで依頼を達成する事も可能ですが、基本的には決まったパーティーで依頼を受ける場合が多いです。パーティーを登録すれば色々便利ですのでオススメです。」
僕達はパーティーを組む事にした。一条、大山、清水、鈴木のパーティーと僕、一吾、白沢、森山のパーティーだ。
「承りました。では説明は以上です。ギルドカードの作成や、みなさんの情報、パーティーの登録があるので、依頼は明日以降にお受け下さい。」
無事済んだな、冒険者登録。
ー
僕達は王宮にある自室に帰った。明日から冒険者になって収入を得るので宿が借りられる。この部屋を引き払う準備をしなければならない。ちなみにすでに何人かは引き払っている。
お、名案を思いついた。ちょっと出よう。
僕は日が落ち始めた街に再び出向いた。