俺が守る!
魔指弾→魔銃
氷化→氷雪
変更しました。
ーー→
鉤爪は残りの勇者を殺しに向かう。聖剣を剛腕に任せてこっちに来たのは、まるで覇気のない男が恐ろしかったからだ。
あの時に見せた殺気は鉤爪の危険信号を最大に鳴らした。
(何が成長前の勇者だ、あんなの化けもんじゃねぇか)
羽を動かしながら独りごちる。
「逃さねぇぞ!キヒッ!」
恐怖を振り払うように叫ぶと、鉤爪は一条達に襲いかかった。
一条達は迎撃の準備をすでに整えていた。一条、大山、清水、ゴードンを中心に壁役をし、後ろから他のメンバーが魔法を放つ。
「当たんねぇんだよ!」
だが魔法は当たらない。壁役もあまりの速さに対応できなかった。
「「グアァァァ!」」
後ろで魔法を放っていた生徒が負傷する。
「おい!大丈夫か!……おまえら!命に代えても勇者達を守るぞ!」
「「おお!」」
「魔法師団も死ぬる覚悟で魔法を放てぃ!」
「「ははっ」」
騎士団が負傷した生徒を庇う。
「キヒヒヒヒ!お前らはターゲットじゃねーよ!引っ込んでろ、トルネードォ!」
しかし鉤爪が手を大きく振り、魔法を使う。突風が吹き、勇者と騎士らを吹っ飛ばした。
「くそっ!」
なんとか逃れた柿崎、野村がやけを起こして突っ込む。剣を二人同時に振り下ろした。
「キヒヒ!遅せーぞ!」
プシュッと音がして二人の腕が斬り飛ばされた。
「「うごあァァァァァ!」」
二人はあまりの痛みに地面を転がる。
「殺すのは後にしてやるよ。仲間が殺されるのを見てな!」
残されたのは一条、大山、清水の三人だ。
「光輝!俺がなんとか持ち堪える!なんとかしろ!」
大山が剛力を発動し、強化された脚力で距離を詰める。そのまま拳を突き出し、蹴りを放つ。
「まだまだぁ!」
「私も援護する!」
清水も先頭に加わった。刀を抜き、斬りかかる。
しかしーー
「オラァァァァ!」
「グハッ」
「くっ」
鉤爪は二人の攻撃をいとも簡単に躱し、蹴り飛ばした。
吹っ飛んだ二人にトドメを刺そうと鉤爪が近づいた。
「もうお終いだぜぇ!」
一条は大山になんとかしろと言われ、困惑していた。自分に切り札になるようなものはない。
あるとしたら『聖剣召喚』なのだが一条はまだそれを使えないでいた。
周りの固有魔法保持者は次々と使えるようになっていく状況に焦っていた。
ふと脳裏にクラスメイトの顔が浮かぶ。
(みんなを守るのは俺だ!)
目の前には今にも殺されそうな仲間がいた。
「うおおお!頼む!来てくれ!『聖剣召喚』!」
力の限りに叫ぶ。光が一条の手元に集まると、それは次第に剣の形をなす。初めて持つはずなのに、自然とその剣は手に馴染んだ。
「今度は何をするつもりだぁー?」
「俺が仲間を守る!」
一条は斬りかかる。先程までとは段違いの動きに鉤爪は目を見張る。
「いい感じだなあ、おい!」
数合打ち合う。あきらかに鉤爪が押されていた。
「チッこりゃまずいかもな…」
「逃さない!光峰斬!」
巨大な光の斬撃が鉤爪を襲う。
あたりが光に包まれた。
光が収まると、そこに鉤爪の姿はなかった。
「大丈夫か!二人とも!」
「問題ない」
「ああ、大丈夫だ。」
「よかった…」
「あいつは?」
大山が聞く。一条は一瞬迷ったが、嘘を言うことにした。
「さあな、死んだのか、逃げたのかわからない。」
「そうか…」
一条は確かに聞いていた。
(今回は引くぜ。でも今度あったら覚えとけよ!)
鉤爪は光の中で確かにそう言っていた。
←ーー
次回ちゃんと成瀬が戦います。