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グレース・デュラメルの談話室  作者: 葛霧
グレース・デュラメル
11/14

グレースの結婚相談所8

※本日は0時・12時に更新しています。


流血残酷表現シリアス展開です。

でも後半恋愛タグが火を噴くぜ!

リュコスが社交界デビューを果たしてから早3か月。

必ずしもグレースとリュコスが同じ夜会に出ることはない。しかし、かなりの頻度で同じ夜会に出席していることが噂になるにも十分な月日である。

とはいえ、元々グレースは夜会に積極的に参加する方であり、セルジュとの婚約解消がなされたため、その前後を合わせると数か月にわたりほとんどのお茶会や夜会に参加しておらず、ようやく『謹慎』が解けて復帰したような状態である。元々のグレースの交友関係の広さと深さを考えれば、グレースの下に夜行の招待状が押し寄せるという表現に近い数が贈られてくることは想像するに容易い。今までの不義理の分もと、グレースが大きな夜会がメインではあるが、再び顔を出すことになったのはこの国にとって大きい変化である。


一方、リュコスはというと、元々人嫌いという噂すらあるシュバリエイト家の嫡男である。元々両親祖父母そろって夜会に出ることは稀であったのだが、リュコスについてはハーゼとセットで夜会に出席することが多く、歴代のシュバリエイト家の人間のことを考えればかなり積極的に夜会に参加している方と言えよう。とはいえ、王太子が参加するような夜会にしか参加しないとも言いかえられるので、数で言えばグレースの3分の1にも満たない数であるのだが。ただし、王太子が出席するような規模の夜会であれば、グレースが参加していないはずもなく、当然、ハーゼとともにリュコスも出席し、顔を合わせると言うのは必然とも言えた。


グレースは基本的にどんな者が相手だろうと人好きのする微笑で話を続けることができ、ひっきりなしに人が寄ってくる状態である。一方、ハーゼは今まで王位継承権第2位という順位ということもあり、現在、自らの派閥づくりのためにせっせと夜会で顔を売り歩いているというところだ。リュコスはその護衛を兼ねている。護衛中となれば、当然、個別に談話することは難しい。そもそも、リュコスの標準的な表情は冷ややかな無表情である。公爵家と言う名前に惹かれた令嬢がいないわけではないが、その無表情故、箱入りのご令嬢が近づくにはハードルが高すぎた。そもそも、数少ない公爵家である。リュコスから話しかけるか、ハーゼから紹介してもらわない限り、挨拶すらままならないのだ。

ある程度リュコスと付き合いがあれば単純に真面目一辺倒で融通の利かない男で、若干冗談が通じないというぐらいの認識なのだが、そのような態度はご婦人に好かれづらいものであろうし、男性側としても話が続かないのであればそれ以上関わることもない。シュバリエイト家とお近づきになっても、さほど旨味はないのだ。無論、現王太子であるハーゼとリュコスが従兄弟であることはリュコスの社交界デビューをきっかけに広く知られている。しかし、今までの王家の対応とシュバリエイト家の動向を振り返っても、さして媚を売ったところで変わるまいという結論を持つ者も多い。そのため、リュコスは誰かと話す機会そのものが少ないのだ。

そんな中、ハーゼの護衛中とはいえ、グレースとは親しげに話すリュコスの姿は人からどう見られるか。グレースがそんな状態を気にしないはずもない。しかし、話しかけてくるリュコス本人が気にしなければ、何の意味もないのだ。




「どういうおつもりですか?」


クラウハウゼン公爵家主催の夜会で、既に夜半を過ぎた時間である。

グレースは昼間は庭園を一望できるバルコニーに体を寄せ、そう呟いた。

山吹色のバッスルラインのドレスは広間の明るさと光の当たらない影の濃淡でまた違った趣を感じさせる。昨日届いたばかりのドレスではあるが、心が浮き出し立つような気持には全くならないのは、このシチュエーションのせいかもしれない。恐らく関係ないけれど。


「どういうつもりとは?」


薄いカーテン越しに返ってきた声は最近話題のシュバリエイト公爵家次期当主のリュコスだ。今日は珍しく、ハーゼの護衛ではなくシュバリエイト家嫡男として出席しているらしい。

僅かに甘さの感じる声に、グレースはそっと息を吐いた。

既に季節は夏を終え、秋に移り変わっている。夜も過ぎれば吐いた息は僅かに白く煙る。


「あなたは、ハーゼ殿下の従兄弟で、あまり王家としても私とあなたが近しいのは喜ばしくないでしょう?どうしてここまで関わるのですか」


ハーゼからグレースに近寄るなということは言われてないだろうことは予測しながらも、グレースは吐息をこぼすように小さな声で再び問いかけた。

それに対して少し困ったような拗ねたような声でリュコスは返す。


「貴女から俺に近づいてきたのに、そういうことを言うんですか?」

「私は礼節を重んじただけです」

「貴女が関係性を誤るとは思えない」


リュコスがはっきりとそう言い切ると、グレースは黙り込んだ。

あまり言葉をやめるのは悪手だと知りながらも、グレースの口は何も言えない。

そんなグレースの肩に少しの重みと温かさを感じてグレースは思わず、後ろを振り向いた。

後ろに夜会の明かりを浴びて僅かに紺瑠璃の色を見せる髪を少し乱したリュコスがいた。

上着がないところを見ると、自分に掛けられたジャケットは彼の物だろう。


「返さなくて構いません。女性が肩を冷やすのはよくない」

「…ありがとうございます」


正直に涼しいから肌寒くなっていたのでグレースは有難くリュコスの上着を借りた。

リュコスはグレースの隣に寄ることに許可を問い、それが受け入れられると片手分の距離に並んだ。リュコスは暗くて何も見えない庭園に視線を投げるグレースを見下ろしながら、何の感情も込めずに問いかけた。


「貴女が気にしているのは、俺がハーゼの代わりに殺されかけたことですか」


グレースの体が強張ったのを見て、リュコスは納得した。

確かに、あの時のことを彼女はトラウマとまではいかないにしても強く記憶に残っている。

人が殺される瞬間を見て、それが怖ろしかったのか、後ろめたいと思っているのか、同情しているのか、はたまた憐れんでいるのか。

リュコスにしてみれば、既に過去のものなっているそれを、彼女はまだ引きずったままだったのか。


「恐ろしかったのです」


リュコスがそんなことを思案していると、グレースは薄く開いた口から吐息のように声を落とした。グレースは相変わらず視線をリュコスに合わせることなく、震えそうな声を絞るように続ける。


「あの時、ハーゼ殿下の婚約者候補だった私が、あなたを殺そうとしたセルジュ様の婚約者になった私を、どう思っているのか。それを知るのが怖かった」


リュコスは予想の範囲外だった答えに目を少し見開いた。

グレースがバルコニーの柵を掴む手が震えている姿を見た。


「人が殺される瞬間を見たからではなく?」

「人が死ぬのも殺されるのも何度も見てきました」


グレースは自嘲しながら、自分の手が震えていることに気が付いてそっと自分の両手を合わせ、胸元に寄せた。


「私は、リュコス様が思っているほど綺麗には生きていません。

確かに、目の前で人が傷つけられた。それも酷く。それはリュコス様が最初でした」


確かに、それはそれでショックでした。私に構ったせいで、貴方の命を奪いかねなかったのだから。

そういって少しだけ、グレースはリュコスを見て泣きそうな微笑を見せた。

それもすぐに消え、再びグレースは暗闇へと顔を戻す。


「でも、そのすぐ後に私はセルジュ様の婚約者になりました。

―――それが、地獄の始まりでした」

「セルジュがどれだけ王族に相応しくないかは聞いている。貴女が、それをどれだけ助けてきたのかも」

「いいえ」


グレースは否定した。

死人のような、空に溶けるような声で。


「最初は、婚約して2か月ほどでしょうか。セルジュ様が誘拐された後のことです。

あの時の残党が、婚約者として私の名が公表され、私の存在を知りました。

彼らは報復として、私を対象にしました」

「グレース嬢も誘拐されたという話は聞いていませんが」

「えぇ。誘拐はされていません。ただ、外出中に襲われました」


貴族であれば移動中の襲撃対象となることはよくあるとは言わないまでも可能性として高いものだ。当然、デュラメル家もその対策はしていた。


「私は馬車の中で乳母と震えてただひたすら賊が捕えられるのを待つだけでした」


乳母が自分も震えながらも、必死に自分を抱いて命に代えても守ると、必ず助かると言い聞かせていた。


「乳母は賊の放った機械式弓矢で頭を貫かれて死にました」


自分を強く抱きしめたまま死んだ乳母の体がどんどん冷えていくのを体全部で感じた。

あまりにも強くて、護衛が乳母の死体から離すまでずっと私は血の滴る死体に抱きしめられていた。

賊は襲撃した本隊のみならず徹底して残党と賊の縁者もすべて捕縛され、女子供関係なく縛り首にされたと聞いたが、それが何の救いになると言うのだろうか。


「賊は、王妃様の息がかかっていました。王太子であるセルジュ様があれだけ怖ろしく痛ましい目に遭ったのだから、婚約者である私も同じような経験をするべきだと」


あまりにも人非人とした事件だというのに、これはフォーゲルライン公爵家の権力を持って潰された。当時のデュラメル家に抗議するだけの力はなく、泣き寝入りするしかなかった。


「セルジュ様は、我慢のできない方ですから、それを御すことも諭すこともできない私が至らなかっただけの話かもしれません。しかし、私はあの方が不足している分、それ以上を求められました。私とて必死でした。将来の王妃として国民を守るため、ただそれだけでした。

ただ、結果としてセルジュ様よりも勉学や馬術、教養面で優れていた私を目の敵にすることになりましたが。私は、必要だったから学んだにすぎません。努力しただけです。どうして、教師の話をまともに聞くこともなく逃げ回り、教科書を破り捨てるような人間よりも劣らなければならないのでしょう」


セルジュ様の気に入らないことをする度に、グレースの父親が呼ばれ、自分の年ほどの子供に王子とはいえ頭を下げる姿を見るのは辛かった。今振り返っても、グレースの非のあることなど全くと言ってよいほどないと断言できる。


「婚約者を立てることもできない自尊心ばかりが高い女の鼻を折ってやると、我が家で飼っていた猫と番犬を殺されました」


まだ彼らが生まれた時からずっと見ていた。世話を焼くことは許されなかったけれど、それでも使役する方法や餌をやることは許されていたから、兄とともに空いた時間があれば二人で可愛がっていた。


「大きな災害が起きれば、王太子妃も同然なのだからと、教会へ監禁されました」


無辜の民の安寧を祈るためというのは体の良い口実で、その実、王族が何もしていないと言われるのを避ける為だけのパフォーマンスに他ならなかった。


「神殿は風が強くて、祈りのための部屋は檻のようで、そのための服は薄くて寒くて、災害で命を落とした民を悼むためと食事も日に一度、薄い粥一つだけで」


たった1週間といえども、冬場に神殿へ追いやられた時は死を覚悟した。

幸いにも神殿に顔の利く知人がいたため、何とか生き延びたが、それも紙一重だった。

神殿から出された後はどんなに早くとも1週間は床から出ることができなかった。


「自分を尊敬しない女など、自分よりも支持を得る女など、自分より秀でている女などと、口に出すのも嫌悪するような罵声を幾度となく浴びせられました」


反論などすればどうなるかなど今までのことで十分理解していた。

彼に常識や情など通用しないのだと、十二分に割り切っていた。


「私ではない、もっとセルジュ様にとって都合の良い、自分よりも優れていない令嬢に婚約者を差し替えたいようでした」


代わりに婚約者になりたいというのであれば、望んで変わっただろう。

でも、それは王も、王妃も、他の貴族の誰もが許してくれなかった。

誰も止めてくれないくせに。

幾度となく暴漢を差し向けられ、毒を仕込まれ、幾多の暗殺者を送られた。

時には通りすがりの幼子が巻き込まれ命を散らすことだってあった。


「この10年間で、両手では済まない数の命が私の周りで失われました」


グレースは冷え切った両手を見た。

白い手袋でおおわれているのに、内側から零れるような赤がにじみ出るようで。

それをしばらく静かに眺めて目を閉じ、ゆっくりと再び瞳を開けばその手はただのグローブに収められた女の手でしかなかった。


「私を恨んでいる人間はすべて死にました」


グレースの手が及ぶよりも前に、気が付けばお互い潰し合ったり絶望して命を自ら断ったりして、気が付けば残されていたのはグレースと僅かな友人だけだった。

それでもいつその関係が終わるのか、強制的に終わらせられてしまうのかわからない。

グレースの知らないところでグレースへと憎しみを持たないとも限らない。

誰かを信じ切るには時間が立ちすぎていて、傷口は閉じてもその中はまだずっとジクジクとグレースの心を蝕み続けている。


「今、私を確実に恨み憎む人間がいるとすれば、王妃とセルジュ様、そしてリュコス様。あなただけです」


死んだ人間は死んだきりだ。

呪い殺すことはあるかもしれないが、そんなことよりも現実として刺されたり毒を盛られて死ぬ方がよほど多い。恐るべきは生きている人間なのだ。


「もし、リュコス様に後遺症の残る怪我をしていたらどう償えばいいのかわからない。あの時のことは私のせいだと言われても、どんな言葉と行動を返せばいいのか考えられない。既に王家との関係を切った私にはもう関係ないのだと言われても、今までずっと私はあの方たちのしてきたことを拭ってきたのです。恨まれるのも憎まれるのも矛先を向けられても仕方ないと理解しています」


本当の忠誠心があるのならば、命を賭してでも主君の凶行を止めるのが忠臣というものでしょう。私は、それができなかった。人の手を借りて、なんとか最小限にとどめることしかできず、守ったなどと口が裂けても言えないことばかりで。

どれだけの人に恨まれているのか、憎まれているのかわからない。自分が恥じるようなことをしてきたとは思えない。それでも、私の周りで命を散らした、もしくは傷を負った人間を大切に思う人からみたら私はどういう対象なのだろうか。


グレースは零れそうな涙を必死に耐えて、唇を噛んだ。

噛んだ唇から声ともいえない音を、リュコスは拾った。


「怖い」



しばらくとも言える時間の空白を経て、リュコスは露骨にため息をついた。

それにグレースは身を竦ませる。

リュコスは逃がすまいと、グレースの目を強く貫くように見つめた。


「違うだろ」


震えるグレースの指先を、リュコスは握る。

自分が思っていたよりもずっと冷え切っていた指先は、リュコスの体温が移り、少しずつ感覚が戻ってくる。

少しリュコスはグレースの手を握る強さを強めた。

左手で、そっとグレースのこぼれそうな涙を拭った。ごつごつとした荒れた指先に対して、労わるように傷つかないように触れる指先は優しさしか感じなかった。

それなのに、自分を見つめる瞳は依然として恐ろしいまでに強い。


「グレース、貴女が本当に伝えたいのは、そうじゃないだろう」


迷いなどかけらもなく、リュコスはグレースを見つめ続ける。


「確かに、怖いのも怖ろしいのも本当だろう。でも、どうしてあなたは本当に一番必要で欲しいものを口にしないんだ」

「だって、そんな、私は」

「たった一言でいいんだ。貴女の周りはその言葉を望んで待ち続けている人ばかりなのに、なんでそんなに躊躇するんだ?」


こんなにわかりやすいことなのに、なぜわからないのかわからない。

呆れすら含んでそう続けるリュコスに、グレースはもう何を言っていいのかわからない。

こんなことを言うつもりはなかったのだ。ただ、本当は、あのセルジュに射られた時の怪我について心配していただけだったのに、どうしたここまで言ってしまったのかわからない。


リュコスは困ったように、それでいて強請るような甘さを含んだ声でグレースに囁いた。




「助けて、と言ってくれ。


それだけで、俺は貴女のためにならなんだってできるから」




どうか、貴女を助けさせてくれ。




グレースの手のひらに落されたリュコスの唇一つがそっと離れた。

拭われた傍からどんどん溢れる涙を耐えることができず、グレースは自分よりも頭一つ分背の高いリュコスを見上げた。


「…お願い」


リュコスの触れた手を握りしめ、グレースの手はリュコスの胸に縋った。





「助けて……っ」


「当たり前だろう」




リュコスはよく言えたというように微笑んだ。




「誰もが貴女に言っただろうけど、俺も言うよ。

 グレース、貴女は何一つ悪くないよ。

 ……俺は、貴女を憎んだことも恨んだこともない」


だから、もう2度と、他の誰かが貴女を悲しませることも苦しませることもないと誓うよ。


「グレース、俺は、貴女を助けるよ」



もう一度グレースの心に浸み込ませるようにリュコスはグレースに告げた。


本当は普通の可愛い女の子に過ぎなかった彼女が、昔のように当たり前みたいに笑えるように。好きなものを好きだと、我慢なんてしなくて済むように。








**************************




――――やってしまった。



グレースは侍女に同伴してきた兄に先に返るよう伝えてもらい、人目につかないように馬車に乗り込んで真っ先に頭を抱えて出た感想である。


全部吐き出すように胸の内にしまっていた言葉がボロボロどころか堤防が決壊したかのように、誰にも言えなかった過去が押し流されるように口から零れた。

なんでこんなことを言ってしまったんだろう。

ほとんど初対面のような相手だと言うのに、私はいったい何を言っているのか。

こんなこと、ハーゼ殿下の従兄弟なんという面倒な人間に言ってどうするつもりなの私。

愚痴どころか外に流れたら本当にシャレにならないことしか言ってないクリスタにすら言ってないのに何が起こったの、え、薬?そんなわけないし、最近確かに色々油断はしていたけれども、よりによって暗殺未遂のきっかけの私にそんなん言われてどうするのよ本当にリュコス様何者シャレにならない困るっていうかこんな話出たら私が終わるわどうしようどうやってこの話消そうかしらそうだリュコス様を社交界から消せばってそんなことしたらダメでしょう落ち着け私そもそも警戒しなきゃならないような人間相手にこんなことした私が悪いのよいやでもリュコス様の傍は大層安心感があって数年ぶりに神経とがない時間だったけどそうじゃないそこじゃないとにかくグレース・デュラメル最大最悪の失態をどう挽回するかという話なわけで。こんな夢みたいな、おとぎ話のようなことが起きるなんて。


…そんなものどこにもあるわけないでしょうに。



馬車の鏡越しに映った自分の顔は自嘲して少し歪んでいるように見えるのに。


「助けてくれるって」


利用し合うのではなく、ただ、私を助けてくれるって


「どうしよ」




もう、助けてくれなくてもいい。


――――今、生きてきた中で、きっと一番幸せな気がするから。





嘘になるぐらいなら、夢のようなままで構わないから、助けてくれなくていいよ。



・・・今までそういう機会に恵まれることも夢を見ることもなかったので、実は一番プリンセスストーリーにひっそり憧れていたのがグレースという。

結局信じてないんですけどね。家族すら損得で考えてしまうようなグレース嬢です。

現実を割り切って生きてきた中で救い上げてくれるヒーローをどこかで夢想しつつもそんなこと有り得ないとわかっていた彼女です。

似たようなことをしたエドガーは現実として貴族的に求婚してきたけど、そうじゃないんだよ。疲れてんだよ放っておいてよ。という心境のグレースをかっさらってったリュコスよ…。お前、真面目キャラどこに忘れてきた。どこにもないんだけど。



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