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三年経ったら一歳児

0万PV、1ブックマークを達成しました! 皆さんありがとうございます!

1ブックマークは知人でした! ぬか喜びです!

(彼は普通になろうの住人なので、自演的なアレではないです)




 赤ん坊に転生したと気づき、それを受け入れたあの日から三年の時が経った。

 私は本日をもって満一歳であると両親からは聞いている。


 何故、三年の月日を経て満一歳になるなどと、そんな計算の合わないおかしな事態になるかというと、三年というのは、あくまで地球人だった私の体感としての時間だからだ。

 しかし今世における暦では、まだ一年しか経過していない。季節が一巡するのに1000日ほどを必要とするらしい。


 地球の公転周期は約365.25回の自転で1年だったが、この星は主星である恒星を一周するまでに約1000回の自転を必要とするようなのだ。


 いや、あの恒星が太陽に相当するからと言って主星と断じるのは早計か。この銀河系に属する星が周回する重心が、あの恒星の内にあるとは限らない。少なくとも私の乏しい知識からは断じることができない。


 学があれば判別できるのだろうか。


 学などなくともネットで検索ができれば判別がつく程度のことなのだろう。この不自由さを感じるたび、前世の住環境とは至れり尽くせりだったのだと思う次第だ。

 まぁ、私はホームレスだったのでネットの恩恵にあずかることのない後年を過ごしていたわけだが。


 ……さて、家を出れば木々の合間から伺うことができるだろう恒星がこの銀河系の主星か否かという疑問。この疑問が解けたからと何が変わるわけではないが、身の回りを情報収集していくにつけ、私にもう幾ばくかの知識があればと考えることは増えていった。一つの確定情報がその後の考察をどれだけ助けるかを思えば、悔やむばかりである。


 知識がないということは、おかしな点に気づく機会が減り、おかしな点を見逃す機会を増やすことだ。その蓄積が引き寄せる結果を運と呼ぶ人もいるし、自力と呼ぶ人もいる。運も実力のうちという格言はそういう意味なのだろう。


 人生に二週目があるなどと知っていれば、もう少し勉強もしただろうなどという戯言は、言っても詮無いこととだと自覚しつつも定期的に脳裏をよぎる。子供の頃に勉強をしていればよかったと感じるというよくあるパターンの前世版だ。


 ……まぁそんなわけで、数え方では満一歳ではあるが、今だ地求人としての感覚を大きく残している私の尺度では、この体は三歳児ほどの認識となっている。

 誕生からの経過日数も1000日ほどであるし、外見的にも私の身長は両親と対比して見るに幼稚園へ入園可能となる三歳児ほどのものに見えるので、一歳という言葉にこそ違和感を感じてしまう私なのだ。


 そして、自らの視点の高さを地球人の3歳児の平均身長と仮定し、その高さから伺える地平線までの距離を計算した場合に求められるこの星の大きさは、地球よりも大きなものとなることもわかった。自身の身長をメートル方で表現できない以上、あくまで自身のスケールに対する比率からの体感にすぎないが、私という生命体にとってこの星は地球よりも大きなものだとわかったのだから当面はそれでいいだろう。私の身長がビルより高いということもありうるが、そうだとしても主観において問題はないのだから。


 また、この星を周回する衛星は、複数存在した。地球では月ひとつだったのに豪勢なことだ。


 ここまでのことから、ここが地球ではないことを論ずるのは今更なのだろう。


 しかし、私がそれに気づいたきっかけは、以上のことを考察した結果ではない。そんなことは、覚醒した初日からそう時間もかからずに理解させられた。


 自身の転生を知った私は出来る限りの状況把握の努力をしながらも、新生児として本能のおもむくままに起床と就寝を繰り返すことした。寝て起きてを一日とするサイクルでの生活が不可能だったので正確な日数に換算することはできないが、おおよそ十日ほど経ったころだろうか。

 ようやく機能しだした視覚に映った両親は、人類のように見えるが、私の知っている人類とは少し違った。

 黄色人種だとか白人だとか黒人だとか、その程度の問題ではない。耳が尖っていたのだ。


 受け入れられる範囲内の差異であったのはいいものの、それでも転生先も地球であると事態を甘く考えていた分、驚きは大きかった。


 しかし時間をおいて考え直せば、想像外の存在になるよりはいいと気づけた。


 炭素系生命体。多細胞生物。哺乳類。陸棲。それもほぼ人類と同様に見えるということで、目の前の現実は不運ではなく幸運と捉えることにした。


 ……あー……でも、長い耳かー。すごくエルフっぽいわー……。母の胸が小さい点もエルフっぽいし。弓を使うところを見たことはないけど、少なくとも魔法は使うしなぁ。


 努めて自分を律しようという思いから、常より堅苦しい思考を心がける私ではあるが、エルフは実在したという『ナ、ナンダッテー』な現実を思うとどうにも力が抜けてしまう。普通だとか慎重だとかを捨てて『オレツエー』に走れとでも言わんばかりではないか。


 しかし、この私にとって都合のいい展開。普通に考えておかしい。ここって地球に縁のある場所なんじゃないだろうかと、この三年で何度も考えた。


 両親の外見が創作物としては見知った生き物のように見えることで、この世界が実は超未来で、遺伝子改造の結果だとか、軍事技術として秘匿開発されているVRMMOに検体として瀕死の体が提供されたとか、物語の中に迷い込んだだとか、いろいろと考えてみたものの、しかし今はどの可能性は無視してもいいものだと結論付けている。


 否定をしているわけではない。


 依然として可能性は残るものの、真実がどうあろうと主観的事実においては意味も影響がない、という判断に至ったのだ。

 妄想する分には、ここは未来で、宇宙開拓の結果テラフォーミングされた地球型惑星のひとつであるとでも思っていたほうが精神衛生上いいのではあるが。

 知ったつもりになれるだけでも、心は安心を抱くものだ。


 事実、重力加速度や、炎の性質など身の回りに存在するものを観察するに、大気中の主成分や住環境が地球に限りなく近いであるという結果が出るのだから、疑うなという方が難しい話でもある。かと思えば実態は、知覚性能と住環境の比率が、地球人のソレと近似値をとっているだけなのかもしれない。うーん、わからない。やはり学が足りないのがいけないのだ。


 しかし、まぁそんなことより、私は直面している現実を生きなければならないのである。グルグル考えては、着地点だけはいつも同じ。


 目の前には両親。左手には幼い手の暖かな感触。


「おっめでとう!! 今日も自分たちだけで起きれて偉いぞ!」

「クストちゃんもリリちゃんも、これで一歳ね。大きくなったわ……」


 この一年で慣れ親しんだように、朝日を感じて自然と目を覚まし、朝食の場へと向かった『私たち』を、豪勢な料理と共に両親が出迎えてくれていた。


「わぁ、おいしそう! これ何? どうしたの?」


 私の起床に合わせて目を覚まし、手を握り、共にやってきた妹は目を白黒している。

 さもありなん。本日が誕生日であると昨夜に両親に聞いたが、それを祝う風習を両親の口から聞いたことはない。私は前世の常識とゴソゴソする両親を見て昨夜のうちから察しがついていたのだが、妹の驚きは自然なものである。かわいい。私の妹、ホントかわいい。

 とてもかわいいが、それに見とれるのではなく、私は彼女と同じ表情を浮かべるよう意識する。


 そして、私の食べちゃいたいくらいかわいい妹はとても利発な子でもあるので、すぐに状況と昨夜の言葉を関連付けて、豪華な料理の理由が私たち双子が誕生して一周年だからだと悟るだろう。


だから一瞬の先回りを行う。繋がれた手から発言の気配を察知し、私が先に発言をする。


「あ! 統合記念日と一緒だ! 誕生日って、お祝いするんだ!」


 記念という概念に触れられる知識を、私たち姉妹は統合記念日しか有していないので、それを例に言い当てる。妹は関連性ではなく感受性のみで意味を見出したかもしれないが、私らしい要素として発言として組み入れた。


「大正解! 今回はクストの勝ちかな?」


 ちなみに統合とは国という枠組みの統合だ。この世界は統一されているらしい。地球なんぞ100以上の国に分かれているのに、すごいなこの星。たぶん地球より大きいんだろうに、星まるまるが一つの国で、さらには数千年の統治の実績までついてくるのだ。総人口が少ないんだろうか。


「もー! おねーちゃん馬鹿馬鹿! リリ言おうとしたのに!」


 かわいい。なんと一人称をリリという名前で言ってしまうのだ私の妹は。

 ちなみに妹と同じく私の一人称も名前だ。


「ふふん、クストはおねえちゃんだもん、当たり前だもん!」


 だもん☆


 一人称の名前呼びに、『だもん』という口調。ゲロである。前世では数十年を生きたジジイであったというのに、なんと芳しいことか。でも私は貫き通す。かわいくあらねばならない理由が、私にはあるのだ。


「でもリリはおねえちゃんだもん! 一緒じゃないとダメなの!」

「また言ってるわこの子……違うって何度も教えてるでしょ?」


 それは妹が私を観察して真似るから。


 リリは私が一人称を『私』に改めると真似するだろうし、口調もそうだろう。いけない。それは許されない。私はこの妹をかわいいままに保存したい。ちょっとアホの子みたいでも一人称呼びが許される限りは改めてはならない。

 だから誘導するのだ。自らを鏡とし、妹の口調を思うように作り上げるのだ。


 なんでも真似する。そして『リリはおねえちゃんだから、リリもおねえちゃんじゃないとおかしい』と主張する。

 三歳児相当としては地球の常識からすると天才児と言っていいほどに聡い子ではあるのだが、双子だからだろうか。なんでも真似することと、私と自分を同一視することに関係する注意は聞かない。わがままではなく、理解していない。


 リリは私が姉であることを理解している。しかし彼女にとってクストという私は自らの延長線上にある自分自身であるらしく、だからこそリリは妹であり姉だと主張するのだ。


 きっと、逆に私がリリの行動を真似することも多いという点が、それに拍車をかけてもいるのだろう。


「ぷーっ」


 ほっぺを膨らませて、不服をアピール。あらかわいい。

 今リリがとっているこの態度も、以前私が見せた態度で、それを真似た行動だ。


 私がやればリリが真似るとわかりきっていたので、それを見てみたくて手本を見せたことがあった。

 このようなリアクションをこちらの子供がとる行動として存在するのかは気になったが、リリに絶対に似合うと思ったのだ。ならば、やるしかあるまい。


 偉い人は言っていた。かわいいは作れる。

 それは事実だ。


 逆に言うと作れるのはかわいいまでで、超絶かわいいは作れないということでもある。努力したのに所詮はかわいい止まりの人たちはドンマイ。うむ。……かつて挫折した私は原石の大きさのもつ意味を知っている。


 何を言っているのか自分でもよくわからないが、私の妹はそれほどにかわいい。


 そんな超絶かわいいリリに私好みの仕草と口調で話しかけてもらうために、言動を真似されるのを利用し、日ごろから彼女の鏡たれと自らに課す私である。

 つまり、先ほどリリの口から出た言葉である『馬鹿馬鹿』とか実は私も日常的に使っている言葉なのだ。『おとうさん馬鹿馬鹿』と言われて口元を緩めてしまう父は、なかなかに気持ち悪い。でもシンパシーも感じるので娘かわいさにトロけた笑顔を私に向けても許すことにしている。


 彼も、家族だからといって大切とは限らないという考えを持つ私の、大事な家族なのだ。父は名をサントスという。でもエルフ顔でサントスはどうかと思う。

 そして私のクストというのも女性名には思えない。おかげでお漏らしを拭く動作が女の子に対する動作であることに気づくまでの短い間、性別を前世と同様に考えていた。いや、かわいい口調も似合うし、女の子でよかったけど。


 ちなみに『だもん』とは私流の日本語訳の結果であり、当然こちらの言語においてニュアンスの相当する口調というだけである。馬鹿という単語も同様で、阿呆と馬鹿はこちらでは同一の単語であったりもするが、私はその単語を聞くたびシチュエーションに照らし合わせて脳内翻訳している。

 当然、それは馬鹿を意味する単語に限らず言語全体に及ぶ。


 言語を習得する際に普通は一番馴染みのある言語に置き換えるし、思考もそれに順ずるわけだから自然な行為だが、改めたい点でもある。思考に用いる言語はとっさに口をつくから。


 そうそう、言語問題といえば、だ。


 異世界を扱う物語における『ご都合あるある』な言語の自動翻訳という展開は私には起こらなかったが、自動であるが故に、不本意なタイミングで日本語の単語を発してしまう可能性を考えると機能性に疑問が生じるので、こちらの言語を習得した今となっては自動でなくてよかったと思っている。


 文法については日本語寄りでないことには当初難儀したが、日本語でないことを意識する法則であることこそが未修得の単語を日本語で口走るうっかりを抑止しているとも思う。

 日本語は外来語と平気で組み合わせて運用されるものだから違和感なく使ってしまいそうだ。大したことにはならないかも知れないが、子供が謎の単語を話すと気になるだろう。


 あと、これも定番なのだが、日本語が古代語だとかいう系統の可能性。

 ……怖いので探りを入れていない。そこまでのご都合はないとは思いたいが……。


 最悪の展開として、前世持ちの転生者とバレるのも怖いが、自分の常識が壊れるのも怖いのだ。ただでさえステータスを認識できるのだから勘弁してほしい。

 例え両親と妹がNPCでも好きだと言い切れるようにはなったので、実はゲームの中でもかまわないのだがわざわざ答えを得たくもない。


「もー! もー!」


 ほっぺを膨らませて不満を主張していたリリが、私の放置に対してさらなる自己主張を始めた。口調での主張に加え、私と繋いだ手を振り回すという行為に出る。


 ちなみに私は右利きであり、妹も同様だ。

 しかし私がリリの右手を、利き手ではない左手で握るというのには、ほぼ例外がない。


 これは私たち姉妹の関係性を示している。利き手というのは、咄嗟の事態に対応するために必要なものであり、私がリリを被保護対象としていることを意味している。

 今日の場合は、起床後に手を握ってきたのはリリからであるので、妹の方も私を頼りにしているということでもある。双子だけど、先に生まれたからだけではなく、私はおねえちゃんなのだ。うむ。


 今回の人生は、今のところは順風満帆。


 クストという名前の響きや、前世が男性であった先入観から当初は自分の性について勘違いをしていたため、放尿を指向性を持って行うことを可能とする器官が自身に存在しないことに愕然としたこともあったが、今となってはどうとでもいいことだった。


 大事なのは、私には双子の妹が存在すること。

 前世においては、両親に隠し子がいなかったことを前提とするに限り、一人っ子だった私がリリなんて妹を持てば、これはもう萌え死ぬしかない。


 美醜については、1000日を経た今もなお、両親と妹、それに自身を数えた四名しかしらないため、万人にとって我が妹がかわいいのかは知る由も無いが、それもどうでもいいことだ。


 大好きな妹にそっくりな容姿を持つというだけでもう、転生してしまったことや他にもあれこれ何もかもが許せてしまう幸せ。

 自分と相手を同一視するという傾向は、リリだけのものではなく私にも僅かに存在するのだから、リリを好きでいる以上は前世のように悲観に走ることも今世ではないだろう。


 地球の遺伝の法則がこちらにも当てはまるのかはわからないが、一卵性の男女の双子というのは存在しはするものの、創作物で扱われるようには容姿が似ないと言われていた。自分の一部というこの感覚が得られない可能性を思うと、本当に異性でなくてよかったと思う。

 大好きなリリと似た私。私が少しだけリリでもある自覚が、いとも簡単に私を救った。


 ああ、私は本当に女でよかった。


 別に男同士の双子でもよかったのかもしれないが、前世が男である私は女の子をかわいく感じるようにきっと出来ている。こんなに好きなのだ。よかったに決まっている。ここまで男性器への未練を捨てられる自分に軽く薄ら寒いものを感じたこともあるが、これでいいのだ。


 まだ新生児として視覚が安定しない時期、状況の把握と平均的な成長過程を経るという目標の算段に努めていた頃、リリの泣き声を聞いて私という自我は彼女の存在を知った。


 双子はそれなりに珍しい。泣き声に気づいたなら近所の赤子である可能性を考える方が先だろう。

 だけど私の肉体がリリから分化したことを知っていた。その肉体を所持する私の魂もそれを知った。


 赤子とは母体から別れ、独立した一人になることに対してストレスを感じるといわれている。私の体もおそらくそのストレスを感じていたはずだ。しかしリリがいた。分化してなお一つ。前世よりの私の自我はそれを別人と断じたが、きっと受け入れたいとも思っていた。今の私はリリほどではないが彼女を自己と同一視しているし、それが幸せに直結している。


 普通であることへの欲求は未だある。


 蝋で固めた翼は重く、空気抵抗ほどしか空を舞うのに意味を持たない。そして堕ちては身を焼くのを助ける。偽りの翼で飛び立つことを夢見てはいけない。


 自らを大きく見せるために翼を広げてはいけない。その翼をもって鳥であると認められてしまえば、飛べるような気がしてしまうから。きっと飛ばずにはいられないから。


 前世の私は、力の及ばぬ領域に紛れ込んで身を焼いた。


 虫の飛翔用の器官を羽と言い、虫と異なる羽は翼と位置づけられる。


 鳥は虫と異なる羽を持つが、その翼は空を我が物とする。

 羽と異なるものを翼という。私が前世で纏った羽の相似形。鳥でない私のそれは飛べない翼だった。

 羽と異なると一まとめにしているだけで、翼にもいろいろあるのだ。私はそれを知らなかった。愚かにも鳥たちの前で誇示し続けた。重厚を美と言い放ち、誇った。


 誇示するための翼は、飛べなかった。


 国が違えば常識が違う。世界が違うというなら、なおさらだ。

 常識と言えば、誕生を祝うような風習があるのかという点も昨日までは怪しんでが、それが杞憂だったのは今日証明された。


 普通を知らねば、普通にはなれない。


 感性という部分においても、今のところ前世の常識と大きな差異が見られないことは僥倖だった。他にも四季より細かく区分されているが季節の変化も存在するし、食文化や常識面においても、前世での経験を持つことが枷になるような大きな差異はなかった。


 実感として得られた差異といえば、一日の長さは24時間とはだいぶずれている様に感じられる点や、日没を繰り返すこと約1000回で季節がやっと一巡という長い一年。私の家族が村という最小単位にすら所属していないこと。子供の成長速度が地球人とはだいぶ違う点。他にも小さいことなら細々と数ある。


 だがそれだけだった。感じている幸せに比べれば、小さなものだった。


 そもそも、一秒という体感時間ですら、感覚器官が地球人類のものではない以上、実際の一秒と大きくズレがある可能性が高い。地球人の一秒という体感時間と、この体での一秒という体感時間が、等しいなんていう保障もない。それもこの現実を生きる上ではどちらでもいいことだった。


 幸せな現実を、私は成長速度を妹に合わせ、這い、歩き、話し、食べて過ごし、それが今日という日に繋がっている。


 約1000日間の私と妹の成長。


 その速度は異常だった。リリの能力は私の知る三歳児相当のものではない。当然、彼女を指標とし成長を追いかけた私も同様だ。


 おかしいと思いながらリリを真似た。その結末を覚悟の上で真似た。


 二十歳過ぎればただの人を体言し、いつか馬脚を現すことは怖かった。

 だからこそ今世においては限界を逸脱し、鳥になろうとすることはやめようとしていたはずだった。前世の記憶というアドバンテージを押さえ込もうとしていた。


 なのにどうだ。私は蝋の翼をまた身に着けた。


 リリと私は双子なのだから、同一の肉体性能をもっているはずという打算もあった。彼女と同じ才能を持つ肉体なら、彼女を模倣しても問題ないと。


「こらこら二人とも。ケンカはやめなさい。これからご馳走なんだから楽しくな!」


 もー! もー! と言いながら繋がれた手はリリに回し続けられていたが、その回転を父が止めた。


 そうだ、ご飯。ご馳走。

 自分を大きく見せる行為は将来的には問題が出てくるだろうが、今はこっちのが大事だろう。ご馳走を頬張るリリ。料理が冷めないうちにリリが食べなくてどうするというのだ! 偉いぞ父。


「ご飯の前にちょっといい? どのくらい成長したか、能力値を教えてもらおうかな」

「ああ、それがあったか」


 ……は? 母は今なんと言った。能力値。それを知覚できるというのか。

 能力を数値でもって知覚するなど、まるでステータスではないか。


 エルフに魔法にステータス。いよいよゲームのようだ。プレイ中のゲームに似た世界に転生とは、創作物ではよくある話だが、あいにくと私に心当たりはない。

 ホームレスは電源など確保できないので、私はここ数年ゲームなどやっていないのだ。


「クスト、リリ、目を閉じて己の才覚を知りたいと意識してみな」


 父の言葉に、私たちはお互いの顔を見合わせ、目を閉じた。


 私の才覚とはどの程度のものなのだろうか。

 願わくば、リリと同程度でありますように。

イカロスの物語性が、いい歳になったいまでも脳裏にこびり付いています。

あとは、魔王が来るよパパなアレとか。

次回、主人公と妹ちゃんのステータス予定。

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