強襲!!ネコミミ!!《改編版》
この魔性の森を抜けて、大都市であるコンクレント湖上都市まで目指している途中、心ともないMPを回復させるため小川で休憩をしていたのですが......
「しらばっくれるとは......オマエ嘘が下手二ャ!」
「え?嘘じゃなくて人違いですし、この草はフリードさんですけど!」
そう言って、勘違いしている茶色の髪の上に同色のネコミミを生やしている20歳くらいじゃないのかな?そのくらいの女性に、ファンシーなポップコーン入れに入っているフリードさんを両手で持ち、頭の上に掲げました。
「誰だニャ、そのふりーどってのは!ソイツはギルフォードニャ!」
ネコミミの女性は、こちらを指して茶色のブーツにすらりとした足で地団駄を踏んでいました。
後ろに見え隠れする尻尾が、クネクネ動きキュートですよ!!猫さん!触りたい......
しかし、あんなに一生懸命なところを見ると......
「フリードさん?もしかして......」
「......んだよ。」
「ギルフォードっていうイケメンみたいな痛いなまえぇぇぇぇって、っ痛いじゃないですか!?」
「はっ、どっちでもいいだろが!のすぞ!!」
どうやら、フリードっていうのは偽名みたいですね。
あと、そのフリフリ動く草で、人の眼をピンポイントで叩くの止めてもらえます!?
この鉢植え投げ捨ててやろうか?いや、後が物凄く恐そうですのでやめておきます。
仕方なくですよ......ビビってません。
そんな話の中、フリー......ギルフォード(笑)さんの声が聞こえてなかったらしく、目の前の茶色い猫の人は、少し身構えつつも頭に疑問符を浮かべていました。
どうやら植物間ネットワークを用いた念話のためギルフォード(笑)さんの声は聞こえなかったようです。私の声は肉声ですので聞こえたと思いますが。
ネコミミの女性が何やら考え込んでいますが、どうしたのでしょうか?
とりあえず、ギルフォード(笑)さんを入れている元ポップコーン容れを肩から下げて、左の腰元に流れるように肩紐を通して、ネコミミさんに近づきました。
「あの、やっぱりコレ、ギルフォード(笑)さんだそうです。引き取って貰っても良いですか?」
ビクッとして尻尾を逆立てる彼女。
「ッ!うぇ、ニャァ........どういうことニャ?」
あの、ちょっと、ほんのちょっと近づいただけじゃないですか!?なんで、3m以上も離れるんですか!!
ショックで立ち直れませんよ!あと、腰元の草から、「おまえ、バカにしすぎじゃね?ああぁん?上等だ!早く下ろせや血祭りにあげてやんぜ!」とか、聞こえるんですけど!怖いんですけど!!
(やっぱり、ーーーをバカにするか......転生しーーー。)
「ん?」
ネコミミの人に意識を無理矢理向けてたんで、最後は何て言ったか聞こえなかったんですけど......まぁ、いっか。
近づいてみて思ったんですが、結構身長高いですね!170cm?いやそんなにないでしょう、160cm後半くらいですかね?茶色のショートヘアーの前髪の一部がクルリとしていて可愛らしいと思い、じーと見つめてしまいました。そしたら、ネコミミと尻尾がざわざわってして、更に距離を取られてしまいました。見てただけですよ!!猫のおネーさん!かむばっく。
なにやら警戒されてしまったようです。困りました。コレ以上近付くのは逆効果な気がして、この場で動かずに待ってみます。
その間に、猫のおネーさんと知り合いかどうか確認しておきましょう!
(ところで、ギルフォード(笑)さん、あのネコミミおねーさんと知り合いですか?)
(おし、兄弟ェ、絶対吊るす。もっと高い所に、決めだぞ。)
(ッ!ちょっ、すいませんでした。うそですよね?そうですよね)
(で、知り合いかどうかだが......)
(うそって言って『フリードさん』もうトラウマなの!)
(おま.....兄弟、自ら弱点をさらすなよ、戦場じゃ命取りだぞ。)
そんな話をしつつ、猫のおねーさんに向けて微笑むのを忘れない。しかし、
(あああああ!微笑んだだけなのに!めっちゃ距離取られたぁぁぁぁ。)
(ぶはっ!凶悪なんじゃねーの?兄弟の笑顔。)
(この草ブッ飛ばす......)
(ああん?やんのかシャウトすっぞ!)
距離が10メートルくらい離れてしまったネコミミのおねーさんは、濃い茶色の目をチラチラとワタシではなく、フリードさんでもない方角に視線を送っていいますが、なんでしょうか?
動きがないその間に、フリードさんが知り合いかどうか教えてくれました。
フリードさんの声は、植物間ネットワークでの念話なので、植物しか聞くことはできないはず。
私は念話が出来ないので小声です。
(あいつの名前は、ミャオ・チャトレ、知り合いっていうか、同じパーティーを組んだりする仲間だな。)
(え?フリードさんってこの森に棲んでいたんじゃないんですか?)
(ちげぇよ?町住まいだな、そんで、アイツの種族は獣人族の猫型だったはずだぞ。)
そう言われ、やはり周りを気にしている様子の彼女の頭にあるネコミミとウリウリ動く尻尾を見る。
確かに猫さんですね!触りたい。
異世界に来て、『はじめて異世界っぽい』人に出会えた気がします。草?雑草は雑草ですよ!ノーカンです。
(......)
(え、ちょっと別に変なこと言ってませんよ?)
いきなり、沈黙したフリードさんに考えていたことがバレたのか!と焦りましたが、違うようでした。
(あぁん?いや、普段のミャオの態度じゃないな......ってな)
(ほっ、そうですか、何が違うんですか?私的には、約束の街まで連れていってくれそうですし、フリードさんを預けて、冒険の旅に出たいんですけど......)
(はぁぁぁぁ!?行かせねーよ?なにいってんの、バカなの?いや、アホでしょ。)
どうしてですか!?意味がわかりません。
(なんでよ!クンクレントまで行って家に帰ればいいじゃない!私には関係ないわ。)
(コンクレントな?アホの兄弟ェ、せめて約束くらいは守ろうぜ?)
なんて、なんて失礼な草なんでしょうか!確かに始めに色々教えて貰いましたし、私に出来ることならって了解しましたけど、約束くらいって!?他は出来てないとでも言うんですか!全く!
私だって
......体を動かし瀕死になったり。
......川で沈んだり。
......場所と方向がわかんなくて、ぐるぐるしたり。
すいません。なにもしていませんね。
頭の中に今までの行動が鮮明に写ります。『歩く迷惑』そんなスキル取っていそうです。
もう、自分でいうのもなんですが、ボケーとアホ面で口から魂が抜けそうなっていると、ネコミミ少女に動きがありました。
てか、フリードさん、さっきからだんまりで、結局このあとどうすればいいのか聞いてないんですけど.....
「そ、それじゃ、ギルを渡すニャ!」
そう言って、手が届く距離まで近づいてきたネコミミのおねーさんは、片手を伸ばしてたので、抱えていたフリードさんを渡そうとしました。
そしたら突然ーーー。
(まて!渡すな!殺されるぞ!?)
「ーーーッ!」
フリードさんのその一言で、体に電流が走ったかのような痺れを感じましたが、不思議と、鼓動のバクバクとした音が聞こえないことと、突然のパニックで、思考が真っ白になることはありませんでした。
故に、極めて冷静に行動に移すことができました。
渡すために伸ばしていた両手を引っ込めて、胸の前にカラフルな鉢植えを持ってきて、その場でしゃがみ、地面に落とし穴に勢いよく落ちるように、ストン。と潜りました。
この一瞬の行動のとき、殺そうとする本物の殺気を感じましたが、不思議と恐怖はありません。もしかしたら、自分の発動スキル【精神安定】の効果かもしれません。
最初の両手を引っ込めるとき、ミャオ・チャトレさんは出していた手で、鉢植えを掴もうとしましたが失敗し、掴むことと同時に、後ろに隠していた手から、銀の閃光が横殴りに振り抜かれたのです。これは、地面に潜ることで回避しましたが、もし、当たっても鉢植えがありましたし、フリードさん......それに知り合いなら、切らないのではないかと考えていたのです。
そして、地面を移動して距離を取ってから、地上に出て、ミャオさんに意識をむけました。
右手のナイフを振り切ったポーズのまま、止まっていたミャオさんは、少し目が開きましたが、それほど避けることに対する驚きはなさそうです。私が避けることをある程度想定していたのでしょうか?
(チッ、やっぱりそうか......)
(なにがですか?こんなときに。)
(そうは言っても、なんだ余裕そうじゃねーか?)
(ちょっとしたスキルで恐怖心を抑えているだけですよ。ところでなにがです?)
そう、質問しつつ目線はネコミミおねーさんに向ける。
(ミャオは固有スキルに【識別眼】を持ってるんだ。コイツは迷宮探索とか、未知の探検とかで、異常と言われるほどのスキルだ。何故ならコレさえあれば、罠にはまず掛からないし、宝箱の選別もできる。)
(それが今どう関係あるんですか?)
じりじりと近づこうとするミャオ、しかし、なんで一気に来ないんでしょう?本来なら私くらいの生まれたばかりの雑魚なんて一発で殺せそうですけど......
(それがな、このスキル相手にも使えちまうのさ......だから、俺の事も名前を識別して、一発で見抜いたしな)
(そういえばそうですね、見た目そこいらの雑草なのに......)
(うっせーよ!!ああん?でもなんで、最初からあんなにビビってんだ?)
そう言ってまた考え込むフリードさんですがすぐに答えにたどり着いたみたいです。
(そうか!物凄く緊張して、ビクついてたのは兄弟ェを視ちまったからか。)
(私ですか?え、私強いの?)
(ペッ!たぶん即死誘発型って見ちまったから、その威光だろうな)
プチッ!何かが切れる音がしました。
「草なのに唾はかれったあああああああああ!!」
そう叫んだことで、戦闘の火蓋が明確に切って落とされたみたいです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今のは【絶叫】ニャ!?」
じりじりと伺っていた、ミャオは、いきなり叫び声をあげた目の前の見た目は可愛いが、殺戮種に恐怖を抱く。
できれば、最初の不意打ちで喉を潰せておけば、戦いも有利に運べたのに!と唇を噛みつつ、目の前のアホ丸出しの雰囲気が、殺気を纏う雰囲気を感じ、こちらも本格的に思考を切り替えた。実は【識別眼】のスキルで、ギルフォードの魔核の内蔵量が極端に低下していることと、隣の殺気を撒き散らした蛍光色の髪を持つ幼女の魔核にギルフォードの魔力粒子が取り込まれていることから、彼女に隷属または、封印されていると踏んでいた。あと、キモい入れ物が封印具かもしれないと思った。
最初にギルを渡されそうになったとき、彼女から殺気は感じなかったが、獣人特有の直感が『危険』と警告していたために、受け取らず距離を置いてしまった。
しかし、今の彼女がしたことを見ると離れて正解のようだ。
「......【嘆きの慟哭】コレほどとニャルと......」
【識別眼】のスキルのおかげで、今行われたことが理解できた。
本人はお気楽にギルに話しかけているが、感じないのか?彼女の半径5メートル範囲の空間が歪んだのが。
ミャオは猫型として200年と、長い時を生きた中で、マンドラゴラの即死誘発型と戦ったことはない。
パーティーメンバーの中でも長寿なのは、上に飛び抜けた二人を除けば、1番ではあるが、自分が生まれる前に絶滅していた種との戦闘はどうしても手探りになってしまい、いつものように行かないことが多い。しかし、これでも冒険者としてSクラスの実力を持つことと、マンドラゴラの分かりきった弱点があれば、たとえ、伝説級の殺戮種でも対応できると確信していた。
そして、初見殺しを何とか、かわしたってよりは、幼女が無意味に叫んだの方が近いかもしれない、いかんせん範囲がわからなかったので下がったが、現状、半径5mと見定めることができた。
そして、その範囲内の植物以外の生命体が強制的に魔素に還元し吸収されていくのを眺めていた。還元量から昆虫が少しいたくらいだろう。私が範囲内にいればMPを一瞬で吸われて、そのショックで、昏倒するだろう、獣人には魔核はなく、MPが二桁しかないため、急激な減少はショック症状を起こしてしまうからだ。そのかわり獣人はMPが、どうやっても増えないが、魔核がないのでMPが切れても倒れることはなく普通に戦闘も可能という利点があるが、こと、マンドラゴラ相手だとMPの全体量が少なすぎるために、急激なMP変化で起きるショック症状が弱点になりかねない。
また、マンドラゴラの持つ固有スキル【絶叫】は種類があり、上位種は3個、普通種は1~2個持っている。【嘆きの慟哭】【狂乱叫壁】【異常付加】の3つだ。そして、目の前のギルに頭を蔓で叩かれてうずくまっている幼女は、即死誘発種。持ちうる【絶叫】は5つ。この3つに、【魂の衝哭】と【死魂の叫び】の5つだ。この2つは使われたら、高いMPせめて200はないと抵抗出来ない。故に、MPが多くても二桁後半の獣人にとっては、抵抗できずに必殺されるのでマンドラゴラの即死誘発型は『殺戮種』と言われているほどだ。注意しなければならない。
「あんなんでも、即死させてくるニャ.....なら、確実に弱点を攻めるニャ!」
そうって、ミャオ・チャトレは、大きくもなく小さくもない胸を窮屈そうに押し付ける胸ポケットからある木の実を取りだし、右手に握り、左手に銀の短剣を逆手で握り直す。