おい、隣の頭がお花畑のアホが......《改編版》
魔性の森の魔力濃度の異常調査っていう依頼書がコンクレント冒険者ギルドにあって、受注してみたんだが......まさか、原因が同族のマンドラゴラだとは思わなかったぜ。
依頼内容に詳しい期限は書いてなかったから、ちょっとした休暇も兼ねて、魔素が濃い場所でのんびりしていようと思ったんだが、魔性の森で本当に異常な濃度を感知できるとは思ってなかったんだ。
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「魔性の森の異常調査?おい【ハイクエスト】ボードに下級クエストの依頼書張ってっぞ?リラ!」
「ええ~!?うそだよ、うそ!アタシちゃんとテッケイしてるもん!ギルちゃんバカじゃないの?バカなんでしょ?」
「リラ......徹底......。」
ハイクエストボードには、基本的にギルドランクがB以上でないと受けれない決まりになっており、ギルが指摘した依頼書......魔性の森関連のモノは、大体が下級のクエストボードに貼ってあるハズだ。そこでハイクエストボードの依頼書に気づいたギルは、冒険者ギルドに収集される依頼をクエストボードに貼る仕事をしている受付嬢のリラ・ギュケルに声を掛けた。
その時、リラはギルドカウンターの奥の厨房に繋がる開き扉と、ギルドに併設された酒場を行ったり来たりしていた。両手に食べ終わった食器をもって行ったり、新しい料理を運んだり忙しそうだ。
リラ・ギュケルは小柄な身長に肩まで切り揃えられた赤髪を揺らし、小走りで駈けていたところに声を掛けた金色の髪にツンツンした髪型の青年に向かって『片手に持っていた』料理を『その場でパッと離して』指をこちらに向けて言った。
離した料理は、地面に落ちる前にリラの周辺をクルクルと廻っていた拳大の大きさの火の玉に受け止められていた。
ギルは思った。
(アイツのフォローは半端ねーな......よく付き合ってられるぜ。)
ギルのことを「ばーか、ばーか」と連呼する赤髪の少女は同色の目を厨房に向け、火の玉から皿を受けとり早足でカウンターの奥に消えた。
カウンターに消える少女に「あああん、てめ.....シャウトすっぞ!」っと声を上げる。
「アークウェイ?それを受けるのかい?」
「んあ?いや......はっ!これ受けると魔素が濃いところで土に潜ってヌクヌク出来るじゃねーか!?」
「いや、それは......どうだろう?クエスト放棄じゃないのか?」
「ばっかお前、レイシス見てみろよ!期限がねーんだよ」
声を掛けてきたのは、ギルとパーティーを組んでいる『リストリア』メンバーのレイシスだった。レイシスは白銀の騎士甲冑を纏い、ギルと並ぶ身長をもつ青年だ。レイシスは、短く切り揃えられた青い髪を籠手越しに掻きつつ「うーん、間違い......じゃないよな」と紙の詳細とそこにあるギルドの承認書を見ながら呟いていた。しばらく、紙とにらめっこしていたが、「あぶり出しか!?」とか、馬鹿なことを言い始めたので取り上げて、受理カウンターに持っていった。そのあとを、レイシスがうんうん唸りながらついてくる。
「レイシス......うぜぇ!あっち行ってろ、シャウトすっぞ!」
「そんなこと言わないでよ、僕たちパーティーじゃないか、一緒に行くよ。」
「ああん?何いってんのレイシス、俺は休暇が欲しいんだよ?わかってんの?」
「もちろん!でも、しっかり休むためには周りを護衛した方が休めると思うんだ。」
どうやら、レイシスはついてくる気満々らしい。レイシスは黒い目をこちらに向けて、何を当たり前なことを......みたいな雰囲気で言ってきた。
「それ、休めねーからな?」
呆れながらギルは言った。
「だいたい、お前ついてきても、どうするんだよ......俺が土の中でじっとしてるのを眺めてるのか?」
「当然じゃないか!快適に過ごせるように尽力するよ。」
「最低でも三日は動かねーし、話しかけても無視するけどいいのか?」
(諦めろよ、てか、一人にさせてくれ)
と思いを込めて突き放すことを言う。
レイシスは、キリッとした顔でどこかに戦いにでも行くかのような気配を醸し出した。
「アークウェイを眺めているだけでも僕は満足だよ!一週間でも「わかったこうしよか!?」」
こいつは何を言い出すんだ!?怖いやつだな。
「なんだい?アークウェイ」
「おし、何で嬉しそうなのか絶対に触れたくないが、俺は依頼から一週間で戻ってこよう!」
これでどうだ?妥協案だろ?と付け加えてレイシスに言った。
レイシスは考える素振りをしながら、少し残念そうな顔をしてうなずいた。
「うん、そうだね......僕がいたら迷惑になるかもしれないね」
「なんで、そんなにショックなの!?」
そして、受付カウンターの前で繰り広げられる光景に、受付嬢は顔を真っ赤にして俯いており、周りからは呆れる顔をする男性陣と、キャーキャー高い声を上げるモノ共に別れていた。その中に男が混ざっていたことには誰も触れなかった。
ここ、コンクレント冒険者ギルドの中でも、レイシスの容姿は美少年いや、美青年であり、爽やかな見た目に、気遣いもでき、頭の回転もよく、まさに容姿端麗で頭脳明晰な騎士様だった。爽やかな笑顔を向けられたら、老若男女を呆けさせるほど甘いマスクを持っている。
しかし、なぜか恋人がいる話はあまり上がらなかった。それはレイシスを狙っている彼女達が、お互いに牽制していることもあるかもしれない。でも、告白されることは結構あるらしい。
それでも、今までで付き合ったことがある人物は一人もいないと言う。
本人は気づいていないが、ギルも結構の美青年であることは周知の事実だ。つまり、この二人が同じパーティーで行動していることで、色々な憶測と、レイシスの周りを気にしない発言で常に注目の的になっている。
「はいはい、ゴチソウサマデスねー、で受けんの?冷やかしなら、アタシの作ったゴハンを試食すると良いわ!」
そして、騒々しい中で変な空気を一食するような声が、赤い顔でうつ向いてる少女の後ろから出てきたリラによって掛けられた。
赤い顔をしていた受付嬢に「休憩してきなさい」といって場所を変わったリラは、目の前の物凄く嫌そうな顔をする金色のツンツン頭と、ニッコリ微笑む青い髪の青年の前のカウンターに座った。
「で、どうするの......行くの?」
「いや、行くんだけど、レイシスどうにかなんねーの?昔馴染みだろ。」
「いやよ、それと帰り道が一緒になっただけでモノノケに襲撃されたわ。」
「こえーよ、レイシス狙いの奴らはこえーよ!!レイシスお前早く誰か見つけろよ!?」
「いや、僕はアークウェイが認めた人しか付き合わないよ。」
「ほら、すべてはギルちゃんがいけないの。」
「ああん?おまえらぜってーシャウトしてやかっらな!」
受付に座ったリラ・ギュケルとレイシス・フォン・フェルセは古くからの知り合いである。レイシスの4代前のフェルセが、ここコンクレント冒険者ギルドに登録をしに来たときには、もうすでにリラは受付嬢をしていた。
さらに、そのリラの目の前で騒いでいる金髪の青年とは、昔ある軍に一緒にいた経緯を持っていた。しかし、それも1000年以上前の話である。いまどうという問題でもない。ただ、リラとギルの古くからの同僚がここで『魔皇』をやっていたりする。
そんな中、三人の話し合う声が続き、隣の受付カウンターに別の子が座りクエストを冒険者に手渡しし始めた。
「だから、なんで俺がお前に紹介しなきゃなんねーんだよ。」
「だって、僕の母シリシスはアークウェイが進めた人と結ばれたんだ。僕もそうでありたい。」
「シリシスちゃんの親のリオチスもギルちゃんが押し付けてた人と結ばれたわ!」
「てめぇーリラ、よけい「そうなのかい?」」
俺は恋の天使じゃねーよ!?
顔を背けて笑いを堪えるリラに上から思いっきり叩き、涙目にしてやって、話が意外にわかる飛び回る火の玉に依頼書の受注をお願いした。
「聞いてた通りだ、俺一人、一週間で戻る。」
「リラが、迷惑......掛けた。依頼......了承。」
そう言って、火の玉の色が赤から青色に変わって、また赤に戻ったときには、見せていたクエストにクエスト受注の判子が押されていた。
ギルは涙目の少女を無視し、後ろにいたレイシスに、嫌々声を掛ける。
「レイシス悪いが俺はこれから、休暇......クエストに出てくる。一人でな!あと、恋人の話だがお前が選んだヤツなら大歓迎万々歳だ!きっといい関係が築けるハズだ......お前ならな」
レイシスの肩に手を置き通りすぎようとするとき、今のギルの声を聞いたのか、周りのテーブルに座っていた多種多様な女性陣が立ち上がり、「戦よ!」「戦国時代よ!!」「ギルっていう強敵はもういないわ!」といって一目散に冒険者ギルドを駆け出していった。ギルは最後の台詞にイラッとしながら、これで、いいだろとレイシスの横顔を見た。
「でも、僕が選んだ人じゃあ......ギルが満足しないと思うんだ。」
レイシスの呟きに、ギルは、なんで俺が満足する必要があるんだよ!!と叫びたかったが堪えて聞かなかったことにした。
そして、冒険者ギルドを出ていくときに、またレイシスから声が掛けられうんざりしながら振り向いた。こちらをみるレイシスは真剣な顔つきで騎士甲冑に差している幅広の騎士剣に手を当てていた。
「魔性の森くらいじゃ、何があっても大丈夫だと思うけど......悪いけど、もしものために、僕たち『リストリア』は近くで受けられる依頼をメンバー全員で受けてるから危険だと感じたら即座に合流してくれ......」
「ハッ、いい顔をするじゃねーか、わかったよ。一週間で必ず戻る。なんなら、先に戻らなかったとき用に捜索クエストを出しておいても良いぜ。」
レイシスの雰囲気や顔つきに、当時魔皇軍の右腕として接戦を繰り広げた戦友の面影を見た気がしたために、心配されるのも悪くないと思った。
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コンクレント湖上都市に掛かる大きな橋を通らずに、水面の上を魔性の森に向けて歩っていた。
「やっぱり直線距離で行った方がグランドブリッジを通るよりも、はえーよな。」
そう言いながら、水面を滑るように歩いていく。まるで氷の上を滑っているようなスピードがでていた。
ギルフォードが使った魔法は、自然魔法のひとつ水属性の中級魔法【アクア・ストライダー】。
水面と足裏の間に膜ができ、あたかも重力を感じさせず、ちょっとした波紋しか起こさずに水の上を滑っていくことができる魔法である。
「とりあえず、魔素が濃いところにいって擬人化で失った分をある程度回復させないとな、【制限】かけても減る量が半端ねーんだよな昔からさ」
そうぼやきつつ、目の前に森が見えてきた。少しスピードを落とし、全体像を確認する。
「あん?魔素が濃すぎないか?いや、一ヶ所から溢れている気がすんぞ?」
コンクレントの湖、『レーゼン湖』現魔皇の名前から取る湖の、膨大すぎてさざ波が起こる岸辺にたどり着き、森の中に足を踏み入れた。
この時にはもう、休暇とか考えてはおらず、本当に起こった異常の調査に乗り出していた。
「まぁ、新たな魔王とかじゃないことを祈るかな。」
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6日が過ぎ、森の中の魔素濃度の異常に濃い所まで近づいて来たところで、今まで、マンドラゴラ本来の姿で行動していたのを辞めて、擬人化した。どうやらここは擬人化していても溢れすぎる魔素で魔力の回復速度が上がっているようだな。
それにーーー。
「なんで、中心に近づくほどに魔獣がおとなしくなってるんだ?」
ここに、来る前に魔獣との戦闘は数回こなしてきたが、それでも、魔性の森のクセに、魔獣が全然出てこないと感じていた。
魔獣とは、世界の神が遣わした、殺し、喰らい、奪う、の三つの知識しか持たない『世界の化け物』と教会で教えられている。
【魔王】でも人間でも、他の種族でも、関係無く襲ってくるため、この世界の外敵という認識で間違いはない。また、似たようなものに魔精というものもおり、こちらも世界の外敵として、絶えずギルドのクエストボードに、討伐依頼が貼り付けられている。
ギルはこの『世界の外敵』が神が産み出し、殺した数だけ、即座に『戦闘記憶を継承し』産み出される魔獣の世界基盤を当時魔皇に仕えていた頃に、魔皇から直に教えて貰ったことがある。ギルは産まれる魔獣がそんなことあるはずはないと思っていたが、魔皇が、
「よし、お馬鹿なフリードさんに教えてあげますよ。」
「はぁ?あ、俺はギルフォード・アー「よし、わかったわ、フリードさん」」
皆まで言うな。そんな顔をして、シタリ顔の美少女は蛍光色の髪に6色の花びらを持つ飾りを前髪にくっ付けており、エメラルドグリーンの瞳をギルに向けた。
「魔獣の転生システムは、いまに始まったことじゃないと思うわ。何故なら、私の固有スキルで世界基盤に干渉しようとしたら、この世界の管理者にあったわ!青い世界で青い『たんさん?』っていうのを頂いたわ。」
どう?すごいでしょう?
そう言って話す160cmくらいの身長の少女は、ない胸を張って自慢していた。故に、言いたいことをいってしまった。
「ない胸張られても、うちの即死誘発型の連中の方がありましたよ?気にしてるんですか?話変えないでください。あと、ギルフォードです。」
「どういうことですか!?フリードさん!あの子達は『えぇ~同じくらいですよ~』って言ってたのに!」
ガガンッ!と少女の後ろに弱めの雷が落ち、ショックを体と魔法で表現する器用なことをしていた。
そのあと、乱心の魔皇とそれを押さえるために、マンドラゴラの即死誘発型との内戦が始まってしまい、魔獣について知れたのは2週間後のことだった。
そんな過去を懐かしみつつも目的の記憶を思い出す。
「たしか、ここで、魔獣を殺すとすると、別の位置で、『どんな最後を迎えたか』という記憶を持った魔獣......つまり耐性持ちが増え、魔獣の質が段々上がっていくが、所詮魔獣なんで元々弱い種を殺しまくっても、その種が特別に強くなったりはしない、記憶の継承は3回までで、そのあとはリセットされるんだッけか?」
そう言いつつ、周りでじっとして一定の場所を向いてる奇妙な魔獣の群れを通りすぎて行く。
魔獣の種類は多種多様で統一性がないが、ここにるやつに同じ種がいない不思議な光景に、ゾクリとした。
気をまぎらわすように言う。
「ヴぉい、まじかよ......これ、魔獣代表の会かなんかか?」
足を止めずに物凄く魔素......もはやアメ玉くらいの魔力が、地面からポコポコとわき出てきていた中心に近づくと、周りには魔獣がいなくなった。地面に【魔力波紋】という原初魔法を使い地中に何があるか理解した。
あったのは何かの種子。取り出そうとしたらーーー。
グルゥゥゥゥーーー。
そういう警告する鳴き声が森の全体から、この場所に踏み込んだ自分に向かって放たれた。
正直、こんなに殺意の籠った視線にさらされせたのは500年ぶりで、動揺してしまった。
「ーーーッわーたよ、さがるよさがる。」
そういって、魔獣共と一緒の位置まで下がったら警戒は解かれ、ホッとしてしまった。
俺としたことが情けねーな、そういって森の隙間から見える明るくなり始めた空を観た。
2時間くらいしても、魔獣に動く気配はなくただただじっとしている。
3時間目で日が出始めたときにことは起こった。
「!ぅえ?」
すとんきょうな声をあげてしまったが、仕方がないと自分に言い聞かせる。
今まで濃すぎるほどの魔素を吐き出していた地面から急速に魔力が霧散していくことが感じ取れた。
その元はあの種子だろう。魔法植物は魔核に魔力という生命力がないと死んでしまう。つまり......
産まれる前に死ぬ。
そう思って、なぜかはわからないが、何かをしなくてはいけない気がした。
この森に入ってから古い過去や、もう思い出すことも出来ないと思われていた記憶のことが、頭をよぎったからかもしれない。
こいつはここで死ぬべきじゃない。
いつのまにか口から、そう零れていた。
そして、その思いに呼応するかのように、魔獣達が咆哮を挙げて、自らを魔素に姿を戻す奇妙な現象を目撃してしまった。
ギルは思う。
こいつらはもしかしてこうなるときのためにここにいたのか?
減少していく種子から感じられる魔力が感じられなくなる僅差で、魔獣達の粒子状の魔素が地面の種子に吸い込まれていった。
だが、
「足りないのか?ばかな!?A級クラスの魔獣だっていたんだぞ!こいつはなんなんだ......」
次には地面に生えていた木や草さえもカラフルな粒子となって吸い込まれていく。
段々と減少が収まってきたが、まだ、安定しているとは言えない状況だった。
ギルは擬人化をとき、地面に潜ったマンドラゴラの姿になり、悪態をつきながら自らも、魔力を送った。
「ああ、くっそ、この大飯ぐらいが!?元魔皇の右腕の俺が力をやるんだ!ぜってー面拝んでやんぜ!」
魔素を吸収しまくる種の周りに、自分以外はポッカリと空いた地面だけになってしまったが、だいたい、1時間くらい魔力を送り込んで安定し出した種を見てほっとする気持ちになるのと、大きな疲労がありぐったりしていた。
疲労の元はMPがなくなってからも、かなりの量を送り込んでいたからだ。
これを元に戻すのに一体ドンだけ掛かるのだろうか。
ここまで、力を尽くしてやったんだから、コイツに、今まで溜め込んだいた魔力が戻るまで面倒をみて貰おう、と思った。
少しして、地面から上に向かってまだ弱々しいが魔力反応が近づいてきたことを感じ、息を殺す。
モコーーー。
(あん?)
地面からいきなり綺麗な蛍光色の花が出てきて、呆気にとられてると、花の下から地面に引っ張られている花と同じ綺麗な黄色の長い髪が覗きギルは自分の心臓部である魔核が締め付けられた気がした。
声をハッすることもできずにいると、次に、おそるそろるといった感じに黄緑色の澄んだ色の目が周りを見渡し、自分と目が一瞬あったその時体に電撃が走り抜けていくのを感じた。
(お......れは、この人を、知って......いる?)
その少女はまた即座に周りを見回して、動こうとしていた。どうやらこっちのことは気づかなかったらしい。
そして、この知っている気がする魔力波長......
いま感じている心を「あり得ない」と無理矢理抑えこみ、取り合えず同族として言った。
「よう、兄弟!」
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そして、出会ってから4時間たった今、ギルは思った。
「ちょっと!フリードさん、川ですよ!この先に海があって大航海に乗り出す冒険が待ってるんですね!!」
「......おい、取り合えず川に足を入れるのはいいが、俺を下ろしていけ兄弟!!」
「わかってますって、ここに置きますよ。ーーーわあつめたい。」
「......あれはヤるな......兄弟は絶対やる。」
『元の姿の』少女の胸元までの深さがある川に入ろうとする幼女の脇に、肩から下げられた珍妙な鉢植えに入れられた状態で抗議をする。
2次災害は回避に成功し、あとは、ことが起きるのを待っていた。
そしてギルの思った通りのことが起こる
「よーーし、えい!」
ザバンーーー。小川から水飛沫が上がる。
「はい!ヤったよ!?マジで兄弟ェやったよ」
そういいつつ、水面に沈んだ黄色の花を蔓で引っ張り挙げた。
「ごはっゴホゴホ!」
「ああん?知ってたのなら教えろって?」
ブンブン頭をふる少女に生暖かい視線を向ける。
「そりゃーあれだ、常識をもって行動できるのかテストしたまでだな。だいたい、見れば、足がつくかどうかわかんだろ?浮くと思ったのか?人じゃあるまいし」
「常識って、はぁはぁ......教えてくれて「飛び込んだのは誰だ?兄弟ェ」」
「......私です。」
そんなやり取りをしつつ、休憩と称して小川で休むことにした。
闇っていう幼女は近くに蔓で簀巻きにして、地面に転がしておいた。文句を言うが無視だ。目を離すと何をするのか分からないからな。
そして、
その場から動かないことで、何かのキャラクターの形を模したカラフルな鉢植えを取り出すときに使った魔力がある程度回復したのを確認してもらい、出発しようとしたとき目の前の林の中から、猫耳の女性が現れた。猫耳の女性は緊張気味に口を開いた。
「そこにいるのはギルかニャ?」
「誰ですか?そのイケメンみたいな名前は?」
そして、その質問に間髪いれずに答えた少女と猫耳女性の間に沈黙が流れる。