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魔法想花の小さな庭園  作者: 流水一
1章ー0日目ー
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小さな庭園≪改編版≫

ぽかぽかした暖かい日差しに、体をくすぐる風の心地よさ。

近くを流れる川のせせらぎも聞こえる。

陽光を浴びる微睡みの中、優しい光に包まれているように感じた。



目を醒ますことすら名残惜しいと感じますが、これから生活する新しい世界にドキドキが隠せません。

あの神様がwktkする気持ちが理解できますね。


もう、戻ることはできないあの殺風景な空間に思いを馳せる。


そんな中、自らの黄色の髪が目を覚ますようにと、顔をくすぐった気がしました。

なにも考えず、じゃれてきた前髪を手で払い、寝返りを打ち目を開く。

寝転んでいるため視界は90℃傾いていますが、段々と目が光に馴れてきて見えた世界はーーー。


「......はい?」


呆然とするアンは体を起こして、今いる自分の位置を再確認する。


「えっと、ユーレさんの神界を......それから、転生されて、でも、動けなくて」


言葉に出していることも気づかずに、あたふたと黒いワンピースから延びる手を振り分かりやすく混乱していた。

自分を落ち着けるようにと、慎ましい胸に手を当て深呼吸を数回し改めて、周りを見る。

あの真っ暗な空間が、まるで嘘のように思える光景が目の前にあるのだ......戸惑うことも無理はないだろう。



空には、昇ったばかりの太陽が暖かな陽気を、地面に振り撒き、地面には草は生えてはいないが、荒れているわけでもなく、綺麗に耕された場所もあり、少し奥に見えたのは、日の光を乱雑に反射している水の流れがあり、透明感溢れる小川が流れていると思われる。しかし、ここが、自分が転生した異世界ユーレリーゼではないことは、すぐに気がついた。

なぜなら、目の前にそびえる門が、原因の一つである。

また、遠くに見えるのは大樹であり、自分が、唯一見たことがある世界樹霊よりは、さすがに小さいがその風貌が、世界に8本しかない世界樹を彷彿させる。しかし、それだけなら霊樹アズマ以外の、別の世界樹のそばにいるだけかも知れないと思うだろうが、遠くの大樹とアンが立つ丁度その間に、この場所に不釣り合いな黒い柵が、見渡せるほど遠くまで続いており、視線を木で出来た質素な門の上に移すと、そこにはーーー。


『小さな庭園Level.1』


と書かれた看板が垂れ下がっていた。

とりあえず、ここが、自分の生涯の友になる魔法の中らしい。

眠りに落ちるとここに飛ばされる説明を受けていなければ、勘違いをするところでした。

冷静になり、そう考えるアンは、先程までの混乱が嘘のように目を輝かせて、両開きの門を早足で潜り、この空間の探索に乗り出した。

やはり、今まで触れてこなかった『魔法』について興奮を抑えきれないようだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


3時間後ーーー。


アンは、フラフラになるまで、この庭園の中を探索した結果。

庭園のど真ん中にそびえる大樹の足元の根っこに腰掛け、今まで見たことについてまとめることにした。

庭園の広さは私の世界にある東京ドーム2個ぶんの大きさ......どこぞのテーマパークか! 歩くだけで大変すぎる。

やはり中心はここの大樹で、少し丘みたいに盛り上がってるから、全体を見渡すことができる。

小川による水路は、丘をグルっと囲む円環状になっていて、そこからさらに4方向に延びていた。

水路によって、庭園が4つのグループに分けられていることがわかった。

庭園の入り口を北だとすると、北側には比較的に花を植えるところが多い気がする。

『気がする』だけなのは、実際にこの庭園には、草木が大樹以外に、何もないからである。

大樹を挟んだ南側では、他と比べ、全体的に水路によって仕切られている範囲が狭く、その範囲内に、綺麗にならした地面と、ある程度舗装された道があった。たぶんだけど、こっちは神様に聞いていた研究施設系建物を、作れる場所だと思う。

しかし、もうこの時点で、私が知っている庭園の定義を越えていた。土地のスケールのでかさに萎縮するばかりである。

西と東には、入ることができなかった。上から見た感じだと、果物とか作物が作れそうな場所と大きな池が見えるくらいだ。


私の魔法の中で、作物食べてどうなるんだろう?

種子を手に入れて検証しようにも、今はまだそのエリアに、入ることすら出来ないから、

やはり......看板に書いてあった『level.1』に関係がありそうだ。今は放置しても問題ないと結論づける。


行けないところにいつまでも構っていられないしね。

それから、新たな発見がないか探し、最後に大樹の所にポツンと立つ昔懐かしの赤い郵便ポストを見つけた。中には手紙が入っており、差出人は当然あの人だろう、心にじーんと来るものがあり、一度胸に抱えてから封を切った。


書かれている内容に目を通す。


『やぁ、これを読んでいると言うことはある程度空間内を動き回ったようだね......』


ええ、まったく、足がガタガタです。


『空間の広さだけどごめんね、もっと大きくしておきたかったけど、時間がなくてね......』


......いえ、とても、大きいと......思います。


『まぁ、レベルが上がれば、どんどん大きくなるから大丈夫だろうけどね......』


......なにそれ怖いんですけど......神様の感覚が怖いんですけど!?私がおかしいの?


『ボクも、ユーレリーゼの世界基盤(システム)については、ある程度理解してるから組み込んでおいたよ。エッヘン!』


システム?私がいた世界との違いは、魔法だけじゃないのかな?組み込むってなんだろう?


『こっちでは、経験を積むと魂に蓄積されていくんだ。それで、その人がどれだけの能力を持っているのか示すカードがあって......僕の世界で言う履歴書みたいなものかな?あれ?違うかも......まぁ、うん、それが暮らす上で身分証明にもなるから、必要だよ。』


神様......神様理解してるって書いてるじゃないですか。う~ん、なんでしょう?記憶を掘り返すと似たようなモノをどこかで聞いた気がします。

あれですか、ゲームでいう所のEXPってやつかな。カード?


『じゃあ、とりあえず、僕お手製のカードを入れておくよ!もしも、魔物とかだったら使う機会ないと思うけど(笑)』


クシャッとしたい!いま、心からこの手紙をクシャッとしたい!


『最後に助言をするけど、今のキミじゃあ、ユーレリーゼにいる『スラポン』っていう浮遊するゲルにも勝てないから、魔法が使えるからって、無理しないでちゃんと、自分の能力を理解するんだよ......気を付けてね』


うっ......俺ツエエエエしようだなんて、そんな......ことは。


最後に、こちらを心配する文章に胸の内が暖かいと感じます。

別に神様は、何気なく書いただけの社交辞令だとしても、今の私には心の支えになっていることは間違いないでしょう。

第二人格として、分割されたときから理由はあれど、側にいてくれたのは、あの少年のような神様ですので、少し依存しているのかもしれませんね。一生を観察するっていうストーカー発言もありますが、言葉を交わすことは出来ないと思っていた矢先に、置き手紙とは......嬉しい限りです。


手紙に書いてある神様が伝えたかったことを、頭の中に反芻し、封筒の中にあるカードを掴んだ。

取り出したカードは、無色透明のスマホくらいの大きさだった。厚みは余りないが......

触ってみても動かなかった。何故だ!!


「うん......神様が理解していないモノを私が理解できるわけないわ。」


そう言って、カードと手紙をワンピースのポケットに入れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



1時間後......場所は、北側エリアの端、東側エリアとを別ける水路のすぐそば。


アンは個人的にこの場所を気に入っていた。

いまだに周りには、売れない団地みたいになっていて、さら寂しいが、ここは他のエリアと違い、東エリアの端、つまりすぐとなりには、綺麗な水面の池があり、この場所からとても近いことがあげられる。


お気に入りなのは間違いがないが、建物も何もないこんなところにいつまでもいられるわけがない。

そこで考えた。

思い出されるのは、【小さな庭園(リトル・ガーデン)】の説明を嬉しそうにする神様の顔......そして、言っていたこと。


「たしか、想像と創造を司る権能の縮小版......って言っていたわね。」


アンは思った。つまり、少年のような神様がテーブルやらコップを出すように自分もイメージすれば、この空間内ならば、できるのではないか?


「イメージ......イメージ......」


神様はすべてって言ったけど、私の魔法は庭園関係や、園芸道具とかじゃないと創造できない......と思う。もしくは割りに合わない消費をするかのどちらかでしょうね。


だから、漠然と家とかじゃだめです。

イメージするのは、前世の記憶にはっきりある『金色の建物』でも、周りには水がないから、砂利を......

大きな石が不自然に置かれていて、でも、見たものを魅了する配置......


アンが目を強くつぶり、思い出を頭の中で形に変えることに集中している間。アンがお気に入りと決めていた空間に、水面のように波紋が広がる。波紋はある一点を基準に上下左右に広がっていく、広がっていく波が体を撫でるも、アンは気づかない。何故なら、体から気力のような何かが、ガンガンと減っていっているからだ。はじめは、蛇口を少し開いていた状態が、明確に形をイメージしたら、蛇口が全開まで開いてしまったかのようだった。


頭は、ジンジンし、脳を締め付けられる感覚。

身体も全身を襲う痛みで指一本も動かせない。

それでも辞めないのは、もはや意地か......それとも......

痛みを堪え、大きく空気を吸う。


イメージは出来た。あとは、出力するだけ......


出力場所をーーー固定。


あとは......


アンは今まで堪えていた痛みに対して、これでもか!というくらいの大声を出した。

そしてそれが、決め手となった。


「告げる!記憶を糧にし......想いを形に、顕現させよ!!」


日が沈みそうな夕刻、庭園内に目を眩ますほどの白い閃光。

少し遅れて、重たい音と共に地面を揺らす。

閃光が晴れたそこにはーーー。


静寂を破るのは、一つの音。


カコンーーー。


となる音が聞こえた。

音がした方を見ると、水路から汲み上げられたのだろう、流れる水を受ける何かが、貯まってきた水の重さで倒れ、またしても軽快な音を鳴らす鹿威しがあった。


さらに、目の前にそびえるのは、転生前の記憶の中にある、金箔を惜しみ無く使った建物......違うことは下が、砂利で出来ていることだろう。


「はぁ、はぁ.......やっ、ぱり......出来た。」


そう満足そうに呟いて、ついに意識を手放してしまいそうだった。


朦朧とする意識の中、最後に言っておきたいことがあった。

目の前にそびえる金色の建物に視線を向けて


「これじゃない......感が、半端ない。わ」


正直、前世の記憶を疑いたくなった。

金色の建物それは、下から見上げるほどの高さがある。『5階建ての塔』だった。




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