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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 錫杖の変化
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(2)改造の方法

 考助がシュレインの作った宝玉を持って研究室に引き籠ってから翌日。

 比較的早めに、考助は調査を終えたらしく、研究室での引きこもりを止めた。

「もう調べ終わったのですか?」

 あと数日は籠っていると思っていたシルヴィアは、少しだけ驚いた顔になってそう考助に聞いた。

「うん。もともと予想していたのと同じような感じだったからね。そんなに多く調べることはなかったんだよ」

「なるほど」

 もともとシュレインが作った宝玉は、最初に彼女が持ってきた物をある程度調べていた。

 そのため、研究用にと渡された宝玉で調べたことは、どちらかといえば、別のなにかに使えないかということだったのである。

 別の使い道と考助から聞いたシルヴィアは、興味深そうな顔になって、

「それで? なにか見つかったのですか?」

「うん、まあ。いくつかね」

 シルヴィアの問いに、考助はニヤリと笑ってそう答えた。

 

 その考助の表情に、シルヴィアは一瞬だけ引きつった顔になった。

「・・・・・・なにを考えているのですか?」

「いや、なにその反応。別におかしなことは考えていないよ? ちょっとシュレインの持っている錫杖を改造しようと思っただけで」

 シルヴィアの反応に、ちょっとだけ傷ついた表情になった考助は、慌ててそう付け加えた。

「改造、ですか?」

 いまでさえ、シュレインは錫杖をどう使うべきかを悩んでいるのに、さらに変えてどうするんだという顔になるシルヴィアに、考助は小さく頷いた。

「うん。正確には、改造できるかどうかを確認していたんだけれどね」

「・・・・・・それで、できそうなのですか?」

「よくわからない、かな?」

「えっ?」

 困ったような顔になった考助に対して、シルヴィアは驚いたような顔になった。

 道具作りに関しては、わからないことはわからないとはっきりいうので、曖昧な態度を取る考助は珍しいのだ。

 

 そのシルヴィアの反応を見た考助は、ポケットの中から宝玉を取り出して、

「これは、シュレインが作った物だからね。これを使って錫杖の改造をしようと思ったら、どうしてもシュレインに確認することが出てくるんだよね」

「それは・・・・・・能力的に、という意味でしょうか?」

 そのシルヴィアの問いは、考助が錫杖に改造をしようと思っても、シュレインの力が足りなければできないのか、ということだ。

「うん。まあ、それもあるかな?」

「それ以外にも・・・・・・いえ。これはシュレインがいるところで聞いた方がいいのでしょうね」

 話が長くなりそうだと判断したシルヴィアは、それ以上この場所で聞くのを止めることにした。

 どうせこのあとに考助がシュレインに話をしに行くことはわかっていたので、一緒について行くことにしたのである。

 

 そして、そのシルヴィアの考えがすぐにわかった考助は、苦笑を返すだけにとどめた。

 

 

 シルヴィアの予想通り、くつろぎスペースに向かった考助は、そこにシュレインがいるのを見つけて、早速話を始めた。

「――――なるほどの。吾の話を聞きたいということはわかったのじゃが、考助の望むようなことができるかどうかは、それこそやってみなければわからないぞ?」

「それはそうでしょうね」

 シュレインの当たり前といえば当たり前すぎる返答に、シルヴィアも当然という顔をして頷いた。

 どんなことでも初めて実行することはある。

 ただ、それが本当に成功できるかどうかやってみなければわからないというのは、当然のことだ。

 考助のように、やる前からできると断言できるほどの見極めができるのは、あくまでもやることがその当人にとって簡単だとわかるときだけなのである。

 

 さすがの考助もそこまで感覚がずれているわけではないので、シルヴィアと同じように納得していた。

「まあ、そうだよね。でも、その前に、きちんと話を通しておいたほうがいいと思うよ?」

「・・・・・・話? なんのことじゃ?」

 てっきり自分ひとりでなにかをするのかと考えていたシュレインは、不思議そうな顔で考助を見た。

「あれ? 言ってなかったっけ?」

 シュレインのその顔を見て、今度は考助が不思議そうな顔になる。

 そこで考助は初めて、シュレインがなにをするのか、具体的な説明をしてないことを思い出したのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助が宝玉を使ってどう改造しようとしたのかといえば、簡単にいえば、いまの錫杖に宝玉をつけ足そうとするだけだった。

 ただし、言葉にすれば簡単だが、実際にはひと手間でできるわけではない。

 既に錫杖として完成したものに、新たに宝玉を付け加えようとしているのだ。

 単純に、錫杖の先に宝玉をつければいいというわけではない。

 そもそも錫杖がどういう構造になっているのか、完全に知っているのは考助だけだ。

 考助からどんな改造を施すのか説明を受けたシュレインだったが、残念ながら一度の説明だけでは理解することができなかった。

 

 何度か聞き直し、ようやく理解することができたシュレインが、最後にまとめるように言った。

「要するに、宝玉そのままの大きさでは組み込めないから、小さくしたうえで、杖の部分に仕込むということじゃな?」

「そうだね」

「わざわざ宝玉を見えないようにすることには、なにか意味があるのですか?」

 シュレインの答えに頷いた考助に、シルヴィアが口をはさんできた。

「それは単純に、魔力の流れとかを考慮すると、そうするのが一番いいから」

「ふむ。そこまでは、まあ、いいじゃろう。・・・・・・じゃが、なぜそれで大地母神と話をしなければ、ならんのじゃ?」


 シュレインが、考助から聞いた話で一番理解できなかったのは、この部分だった。

 考助が説明する間に、誰と話をするのかも聞いていたのだが、あっさりとクラーラと話をしてもらうと言ってきたのだ。

 たかが(?)錫杖の改造をするために、わざわざ神の一柱と話をする必要があると聞いたシュレインとシルヴィアが、頭を抱えたのは言うまでもないだろう。

 この疑問が出てくるのは、当然のことだった。

 

 そんなシュレインに対して、考助はキョトンした顔になった。

「え? だって、宝玉の大きさ自体を変えるなんて荒技、大地母神くらいにしかできないよ。それに、折角クラーラの加護を得たんだから、錫杖にも組み込んだ方がいいよね?」

 当たり前だろうという顔で言った考助だったが、それを聞いたふたりは、頭痛をこらえるように頭を押さえた。

 そもそも道具の改良をするためだけに、神の力を使おうということ自体があり得ないことなのだ。

 その上で、普通ではできない神の御業を、気軽に頼もうとしている。

 まさしく、考助でなければ聞いてもらえないようなお願いだった。


 念のためという感じで、シュレインがシルヴィアを見ながら問いかけた。

「・・・・・・そんなことを頼んでも大丈夫なのかの?」

 そのシュレインの問いに、シルヴィアは言葉で返すのではなく、勢いよく首を左右に振った。

 だが、それを見た考助の答えは、実に簡潔だった。

「大丈夫だって。むしろ、一度も聞かずにこっちで勝手に判断した場合のほうが、怒ると思うよ? クラーラは」

 その言葉は、実際に対面して話をしたことのある考助らしいものだった。


 考助の態度から実際にその通りなのだろうということはシュレイン(とシルヴィア)にもわかるのだが、いかんせん常識が邪魔をして踏ん切りがつかない。

 結局、考助の勢いに押されてシュレインがクラーラへと交神をしたのは、その日の夜食を終えてからのことだった。

やっぱり考助の暴走が始まりました。

といっても、この場合は、どちらかといえばクラーラの意向のほうが強いと言えますが。

考助はあくまでも、直接確認しないとクラーラが拗ねると考えたうえで、シュレインに提案をしていますw

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