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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 錫杖の変化
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(1)儀式の考察

 儀式を終えたシュレインは、早速考助のもとを訪ねた。

「――――できたのはこれなのじゃが?」

「うーん・・・・・・」

 シュレインから宝玉を渡された考助は、右手で持ち上げつつすかして見る。

 とはいえ、以前のときのようにきちんと調べなければ、いくら考助といえどわかるはずもない。

「とりあえず、方向性はずれていないと思うけれど、きちんと調査してみる?」

「頼むのじゃ」

 首を傾げつつ聞いてきた考助に、シュレインは大きく頷いた。

 

 

 研究室での考助の調査は一時間ほど続いた。

 前回よりも時間がかかっているのは、より正確な調査をしたことと、間違っていないと断言できるだけの材料が揃わなかったためだ。

「うん。たぶん、大丈夫だと思うよ?」

「・・・・・・なんとも不安になる答えなのじゃが?」

 考助から宝玉を渡されたシュレインが、探るような視線を考助へと向けた。

「いや、こればっかりはどうしようもないかと。前にも言った通り、ここから先は時間がかかるからね」

「ふむ。そのかかっている時間の間に、変わっている可能性があると?」

「そういうこと。長い年月の間に、なにをどう取り込んでいくかなんて、予測するなんて不可能だからね」

 例えば、百年の間川の水に白い布を浸けていたとして、その間ずっと布が白いままであるとは限らない。

 ときには濁流が流れてくることもあるだろうし、野生動物がいたずらをするかもしれない。

 考助が言っていることは、そういうことだ。

 シュレインが作ったのは、あくまでもヴァミリニア宝玉やプロスト宝玉の元になる宝玉を作っただけで、そのものを作ったわけではないのだ。

 

「そもそもヴァミリニア宝玉とプロスト宝玉だって、似て非なる物だからね。置かれていた環境や与えられた結晶石によって違いはあるよ。もちろん、同じ目的のための道具、というくくりでは同じものといえるんだろうけれどね」

 考助からそう説明を受けたシュレインは、納得の顔になった。

「なるほどの。そういうことか」

「というわけだから、ひとつだけじゃなくてもっと作ってもいいと思うよ?」

 研究のためにも複数作ってほしいという顔をした考助に、シュレインは苦笑を返しつつ頷いた。

「それはそうじゃな。儀式の再現性も含めて、複数作るつもりではあったからの」

 なによりも、こういう道具に関しては、考助に渡した方がわかることも多い。

 とはいえ、下手に褒める(?)と暴走しがちになる考助なので、シュレインも敢えて渋々といった表情になるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「それで、結局いくつ作ったのですか?」

 考助がいなくなったくつろぎスペースで、シルヴィアがシュレインにそう問いかけた。

 考助はシュレインが渡した宝玉のひとつを持って、研究室へと駆け込んでいる。

「前の分も合わせれば、全部で六つじゃの。それ以上は、吾のいまの力では無理なようじゃった」

「数で制限されているのですか?」

 シュレインの力が回復さえすれば、いくらでも作れると思っていたシルヴィアは、不思議そうな顔になった。

 

 そのシルヴィアに同調するように、シュレインも頷く。

「吾も不思議に思ったのじゃがの。どう頑張っても最初の宝玉を作ることが無理じゃった。結果として、吾の能力が足りないと結論づけたのじゃ」

 いまのシュレインが、最初の宝玉を作る儀式を行おうとすると、精霊が呼び出されても宝玉がその場に残らない。

 一晩経って体力も十分な状態で儀式を行っても同じなのだから、精神や体力的な問題ではないと思われる。

 なによりも、儀式を行っているシュレイン自身が、いくらやっても無理だと感じているのだからどうしようもない。

「力というのは、大地母神の加護の力が足りないということでしょうか?」

「さて。さすがにそこまでは吾もわからないの。単に、吾の持っている能力が足りないだけかもしれんし」

 そもそも宝玉作り自体、初めてのことなのでわからないこともまだ残っている。

 なにがどう変化すれば、さらに多くの宝玉が作れるようになるかは、それこそそのときになってみないとわからない。

 

 首を左右に振るシュレインに、今度はフローリアが問いかけて来た。

「それにしても、儀式で精霊が物を置いていくというのは、不思議な気がするな」

「そんなことはないじゃろ」

「そうなのか?」

 あっさりと否定してきたシュレインに、フローリアは不思議そうな顔になる。

「人の営みとて、金を出せば物品をもらえるじゃろう。精霊との契約も同じようなものじゃ」

「そう言われるとそんな気もするが・・・・・・いや、精霊にそんな話は通じるのか?」

「なにを言うておるんじゃ。通じているからこそ、精霊は宝玉を置いて行っているのじゃ。逆にいえば、金が足りないから宝玉が置かれていないともいえるかの」

 フローリアの感覚でいえば、精霊が人に対してもののやり取りをすること自体ありえないことなのだが、シュレインに言われれば納得するしかない。

 なにしろ、実際にそういう契約をして、宝玉という物を得ているのだから。

 

 精霊との契約という感覚になじめていないフローリアに、シュレインは少し考えるような表情になった。

「精霊術もそういう意味では、契約の一種じゃろうな」

「ああ、なるほど。そう考えればいいのか」

 精霊術は、精霊と意思の疎通ができる者が、魔力を対価にして術を行使している。

 シュレインの言う通り、それもまた契約の一種といえるだろう。

 ヴァンパイアの行っている契約も、似たようなものだと考えても間違いではないのだ。

 

 

 フローリアが納得の表情になったところで、再びシルヴィアがシュレインに問いかけて来た。

「ところで、ひとつはコウスケさんに渡したようですが、他の宝玉はなにかに使う予定ですか?」

「む? いや、儀式について調べるために作っただけで、なにに使うかまでは考えていなかったの」

 そもそもシュレインは、自分が作った宝玉を使ってヴァミリニア宝玉と同じようなものを作る気は、いまのところない。

 そんなものをたくさん作っても、騒ぎの元にしかならない。

 さらに、考助が喜々として宝玉のことを調べているので、別の使い道が見つかれば、喜んで教えてくれるだろう。

 道具作りに関しては、考助に任せてしまったほうがいいと考えているのだ。

 

 道具作りは考助にという考え方は、シルヴィアとフローリアも同じなので、そこを突っ込むことはしなかった。

 逆にそれが考助をときに暴走させることになっていることには、幸か不幸か誰も気づいていない。

「・・・・・・今度はなにをやらかすだろうな?」

 ぽつりと呟いたのはフローリアだったが、ほかのふたりも否定をしなかった。

 やらかす前提になっているのは、夢中になっている宝玉が、すでに普通ではありえない道具だからだ。

 元が元なので、その先にできるものも普通ではないと考えるのは自然のことだろう。

 ちなみに、三人とも考助が宝玉を使った新しい道具作りに失敗するとは、まったく考えていない。

 なんだかんだいっても、考助は道具作りの権能を持った神なのだ。

 

「宝玉のことはコウスケさんに任せるとして、もとの錫杖に関してはどうなったのでしょう?」

 シュレインが宝玉を作ることになった儀式は、もとを正せば錫杖の使い道を考えていたためだ。

「それだったら、満足な結果が得られているの。そもそもこの錫杖が無ければ、儀式を行うこともできないからの」

 シュレインの能力にピタリと合わせたように、錫杖はシュレインの手になじんでいる。

 これが他の杖や別の道具を使って儀式を行ったとしても、そう上手くいかないことは、シュレイン自身が実感として得ていた。

 ほかにも錫杖の使い道はありそうだが、すくなくとも新しいいい結果を得られたと、シュレインとしては満足なのである。

新しい章が始まりましたが、第1章の続きです。

第1章は宝玉が焦点でしたが、第2章はどうなるでしょうか?w

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