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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 古い契約と新しい(?)アイテム
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(4)絶対無敵のお姉さん

 考助が作る交神具は、本来はいきなりなんの繋がりもない状態で作ることはできない。

 交神対象の女神を知っているか、受け手側、今回の場合はシュレインが相手の女神との繋がりが無ければならないのである。

 電話でいえば、相手の番号を知らなければ掛けることができないのと同じことだ。

 いまは考助自身が、ほとんどの女神と対面したことがある上に、シュレインが称号を持っているので、なんの問題もなく交神具を作ることができた。

 考助は、すでに何個も交神具を作っているので、特に戸惑うことなくあっさりと目的の物を作ることができた。

 もし、考助が交神具を作っているところを、なにも知らない聖職者が見れば、顔を青くしていただろう。

 それくらいありえないことを考助はやってのけているのだが、その当人は気にすることなくシュレインに作った交神具を渡していた。

 ちなみに、考助に一番近いところにいる聖職者であるシルヴィアは、交神具づくりくらいでは特に反応を示さなくなっている。

 

 そんな考助の交神具作成事情はともかくとして、考助から交神具を受け取ったシュレインは、早速クラーラ神と交神を行っていた。

 シュレインとしては、緊張するので心の準備(?)ができてからと考えていた。

 ところが、シュレインが考助から交神具を受け取るなり、クラーラ神からの神託が来てしまったのだ。

 そのため、シュレインが準備をする間もなく、交神具を使う羽目になったというわけだ。

 

『シュレイン、それはちょっとひどくない?』

 などということを考えていたら、早速クラーラ神からお小言をもらってしまった。

「す、すみません?」

『あ、そこは疑問形なんだ。どうせだったら、もっと普段の口調で良かったのに』

 相変わらずクラーラ神はシュレインの口調にこだわっているようで、なんとなく残念そうな雰囲気での言葉が返ってきた。

 シュレインはといえば、どう対応していいのかわからずに、少しばかりおろおろとしている。

 もし考助がこの場にいれば、珍しい姿を見れたと笑っていただろう。

『普段からそういう姿を見せていれば、考助ももっと可愛いって言ってくれるだろうに』

「ふえっ!?」

 普段は誰からも来ないような突っ込みを受けて、シュレインは顔を真っ赤にして絶句してしまった。

『そうそう、それそれ』

「ああう。・・・・・・もう、勘弁してくだされ!」

 クラーラ神からの撃に、シュレインは自分の中でわけのわからない状態になって撃沈するのであった。

 

 

 すっかりペースを乱されてしまったシュレインに、クラーラはすこし時間を空けてから話しかけて来た。

『そろそろ落ち付いてきたかしら? これで少しは慣れてくれるといいのだけれど?』

「はあ、まあ。・・・・・・なんとか」

 クラーラが、先ほどからシュレインを揶揄からかっていたのは、シュレインの固い態度を崩そうとしてのことだった。

 その効果があったのかどうかはともかく、シュレインの緊張はほぐれている。

 それとは別の意味で落ち着けない状態にはなっているが、クラーラにとってはいまのほうが好ましいのだ。

『んー・・・・・・。もう少しほぐれてくれると嬉しいのだけれど・・・・・・』

「か、勘弁してほしいのじゃ!」

『そうそう、その調子その調子!』

 完全にクラーラにペースを握られたシュレインは、たった数十秒の会話で、ぐったりとベッドの上にあおむけになった。

 

 いまシュレインがいるのは、管理層にいる自室である。

 誰もいない場所なので、いままでの醜態(?)もクラーラ以外には見られずに済んでいた。

 管理層でそれぞれに与えられている個室に、ノックもせずに入ってくる者はいないので、そういう意味ではシュレインも安心してクラーラと交神をしているのだ。

「はあ。もういいのじゃ。それで、なにか話すようなことでもあるのかの?」

『んー。いいや、いまは特にないかな? 単に、シュレインと世間話をしたかっただけ』

 いくらなんでもそれは軽すぎないかと抗議しようとしたシュレインだったが、そもそもシルヴィアや考助が普段行っている交神のことを思い出して、それは止めておいた。

 彼らは彼らで、まさしく世間話と言っていいような気軽さで、交神を行っている。

 それも相手が三大神というのだから、それよりも格下になるクラーラに言っても意味がないと考えたのだ。

 

「世間話・・・・・・といっても、神を相手にするような話はなにもないと思うがの?」

 完全に普段の調子になったシュレインは、ベッドの上で寝転びながら疑問の声を上げた。

 別にいまの言葉は突き放すつもりではなく、本当の意味でなにを話していいのかわからなかったのだ。

『だから神というのが固いのよ。普段あなたが考助たちと話しているようなことを話したいわけ』

「普段といっても、ほとんどが塔の管理に関することじゃが?」

『はあー、もう。固いわねえ。・・・・・・まあ、とりあえずとっかかりとしてはそれでもいいからお話しましょう』

 呆れたような口調で言ってきたクラーラに、シュレインは固いと言われてもと思いつつ、まずはヴァンパイアの里についての話を始めた。

 

 

 シュレインにとっては意外だったことに、クラーラが聞き上手だったため、交神は小一時間ほど続いた。

 終わってみれば、それこそシルヴィアたちと同じように長い間付き合ってきたような感覚で話をしていたのだ。

 しかも、どちらかといえば、年上のお姉さんを相手に話をしているような感じで、交神を終えたシュレインはいままで感じたことのないような満足感を得ていた。

 交神を終えたシュレインは、自分自身は満足したがクラーラはどうだったのかと気になったが、すでに交神は切っている。

 今更繋ぎ直すのもどうかともやもやしていたのだが、すぐに「またお話しましょうね」という神託がきた。

 そのクラーラのフォローに、神託を受け取ってシュレインは、ベッドの上ですべてお見通しかと苦笑するのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 しばらく部屋のベッドでゴロゴロしていたシュレインは、気分転換をするためにくつろぎスペースへと向かった。

 すると、そこにはなにやら水鏡をいじっているシルヴィアがいた。

「なにか不具合でもあったかの?」

「あ、シュレイン。いいえ。そういうわけではありません。普段から触れて、手になじませようと思っているだけです」

「ああ、なるほどの」

 どんな道具でもそうだが、手になじめばなじむほどうまく使えるようになる。

 シルヴィアは、何気ない日常でも水鏡の神具に触れながら、神具に親しもうとしているのだ。

 

 そのシルヴィアが、水鏡に触れながらシュレインを見てきた。

「それで? 交神はどうでしたか?」

「ああ・・・・・・うむ。なんというか、色々な意味で刺激的だったの」

 僅かにげんなりした表情になったシュレインに、シルヴィアは少しだけ首を傾げてから小さく笑った。

「いい意味で、想像を覆されましたか?」

「うむ。まさしくその通りじゃの」

 現実に姿を現すことがある以上、絶対不可侵とは言えないが、それに近い感覚で神を見ていた(考助は除く)シュレインだったが、今回の交神で見事にそのイメージが崩されてしまった。

 救いなのは、悪い方にイメージが崩れていないことだろう。

「こういうと失礼に当たるかもしれないのじゃが、どちらかといえば、絶対に敵わない幼馴染のお姉さんという感じじゃの」

 自室で折り合いをつけた際にそんな感想を持ったシュレインが、しみじみとした様子で、そんなことをシルヴィアに漏らした。

 そして、それを聞いたシルヴィアは、プッと噴出した。

「確かに、それは中々いい表現ですね」

 シルヴィアにも思い当たることがあったのか、そんなことを言いながら頷くのであった。

シュレインは、いままで直接女神たちに触れることはなかったので、今回が初めて深く女神と触れた機会になりました。

いい意味で価値観が破壊されています。

ちなみに、シュレインの中で考助は別格(別枠ともいう)です。

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