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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第5章 ソルの変化
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(4)予想内の変化

 考助に加護のことを話したソルは、一応里の現状を報告してから屋敷へと戻った。

 そのあとも特に変化が起きるわけでもなく、いつも通り就寝することとなる。

 そして、その翌朝。

 自身の身体に変化が起こっていることに気付いたのは、そのときだった。

「こ、これは?」

 まるで、進化したときのように、新たな力が自分の中にあることに気が付いた。

 これほど大きな変化が起きたのは、しばらくぶりのことだ。

「ソル様? いかがしましたか?」

 部屋の外から問いかけてくる声に、ソルはようやく呆然としていた意識を立て直した。

「いや、なんでもない。それよりも、着替えを済ませたらあの方のもとへ行くので準備をしておいてほしい」

 昨日に引き続いての連日の訪問に驚いたのか、次の返事が返ってくるまでにしばらく間があった。

「・・・・・・かしこまりました」

 それでも了承の返事はしっかりとあったので、ソルはそのまま布団から抜け出して、管理層に向かうべく着替えを始めるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 今朝がた屋敷で驚かれたように、ソルが連日管理層を訪ねることなど滅多にあることではない。

 以前にあったのは、アマミヤの塔が制圧戦を仕掛けられたときくらいだった。

 そのため、転移門から現れたソルを見て、たまたまそのとき転移部屋にいたシルヴィアが驚きの表情になった。

「あら、ソル。珍しいですね。何かありました・・・・・・と、わざわざ聞く必要はなかったですね」

 昨日ソルがなんのために考助のところに来たのかは、シルヴィアもきちんと聞いていた。

 それを考えれば、ソルがなにをしに来たのかはすぐにわかった。

 

 シルヴィアの台詞を聞いて、ソルも余計なことは言わずにただ頷いた。

「はい。昨日の件で来ました。ですが、主様はいらっしゃいますか?」

「もちろんですよ。つい先ほどまでくつろぎスペースにいたから、いまもいるのではないでしょうか」

 シルヴィアが転移部屋に来ていたのは、これから別の階層に移動するためであって、直前までくつろぎスペースにいたのだ。

 そのときにはしっかりと(?)考助はソファの上で寝転がっていた。


 シルヴィアが別れる前には、今日は一日のんびりすると言っていたので、いまもそのままくつろぎスペースにいる可能性は高い。

「そうですか。ありがとうございます。そちらに向かいます」

「ああ、待って。私も一緒に行きます」

 そう即答してきたシルヴィアに、ソルは首を傾げてみせた。

「それは構わないのですが、なにか用事があったのでは?」

「ああ。それは大したことではないのですよ。少しだけコレットのところに顔を出そうとしただけですから」

 子育てで忙しいコレットやピーチは、毎日のように管理層に来ることができるわけではない。

 それぞれの子供が大きくなって、以前よりは楽に来るようになっているのだが、それでも頻繁に戻ってこられないのが現状だった。

 その寂しさをよくわかっているシルヴィアやフローリアは、よくふたりの家に顔を出しに行っているのだ。

 

 コレットへの顔出しは後回しにすればいいと告げたシルヴィアに、ソルは頷いた。

「そうでしたか」

 ソルとしては、別にシルヴィアが一緒に来ることが嫌というわけではない。

 単に、用事を済まさなくてもいいのかと軽く考えて聞いただけだった。

「そういうわけですから。さっそく行きましょう!」

「? は、はい」

 なぜシルヴィアが積極的になっているのかわからずに、それでもソルはくつろぎスペースに向かって歩を進めるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「あれ、ソル。どうしたの? ・・・・・・って、聞くまでもないか」

 室内に入ってきたソルに気付いた考助は、シルヴィアと同じようなことを言ってきた。

「はい。今朝がた起きたら大きな力を感じたので、早速来ました。具体的にどんな力かはわかっていません」

「なるほどね。どれ、ちょっと見てみるよ?」

 考助は、一応断りを入れてから左目の力を発動した。

 絶賛不調中の考助だが、特に暴走することなくいつも通り左目の力は発動した。

「ふむふむ、なるほどね。ある意味、予想通りといえるのかな?」

「なにかわかりましたか?」

 考助の呟きに、シルヴィアが反応して問いかける。

 こういうときのソルは、コウヒやミツキと同じように、考助の思考を邪魔するような真似はしないので黙ったままだ。

 

 ソルのスキルを確認していた考助は、視線をシルヴィアへと変えた。

「月神の加護が付いているのは当然として、鬼神姫きじんきに進化しているよ」

「「鬼神姫?」」

 初めて聞くその種族に、シルヴィアとソルが同時に首を傾げた。

 考助はそれを見て苦笑しながら答える。

「いや、種族に関しては僕も初めて聞くからよくわからないよ。むしろ、シルヴィアのほうが詳しいんじゃないかな?」

「いえ。さすがに私も初めて聞く種族です」

 考助の問いにシルヴィアは首を左右に振った。

 

 ソルの「鬼神姫」もそうだが、アマミヤの塔を含めたそれぞれの塔にいる眷属たちの進化種は、そもそもシルヴィアたちが知らない種族のほうが多い。

 特に進化の段階が上になればなるほど知られていない種になる傾向がある。

 そのことを知っているため、考助も深くは突っ込まずに特に表情を変えることもしなかった。

「ふーん。そうなんだ。ああ、あと月光の裁きっていうスキルが増えているみたいだね」

 天恵スキルを確認した考助は、以前には見られなかったスキルを見つけて、そうソルに教えた。

「月光の裁き、ですか」

「うん。まあ、どういうスキルかまでは詳しくはわからない・・・・・・いや、ちょっと待てよ?」

 そう言いながら唐突に首を傾げた考助に、ソルとシルヴィアはお互いに顔を見合わせた。

 

 不思議そうな顔になるふたりを余所に、考助はもう一度ソルのステータスを見直した。

 ソルと話をしていて気づいたのだが、現人神としての格が上がったいまなら、もっと詳しい説明を見ることができるのではないかと思い付いたのだ。

 じっとソルを見つめてくる考助を、ソルは照れたような表情を浮かべて見ていたが、考助自身はそれどころではなかった。

 いままでは無意識に使って制限していた力を、暴走しないようにさらに多くの神力を流し込んで、拡大してみる。

 イメージとしては、水道の蛇口をさらに大きくひねって多くの水を出すようにするような感じである。

 慎重に力を流し込んでいった考助は、ある程度のところでそれを止めてから結果を確認する。

 そして、いままでと違ったイメージが頭に流れ込んできたのを確認した考助は、思わぬ収穫に表情を緩めた。

 

 考助の表情を見て成功を確信したシルヴィアは、そっと考助に問いかけた。

「上手くいきましたか?」

「うん。どうやら月光の裁きは、攻撃魔法と防御魔法の両方を兼ね揃えているみたいだね」

 「裁き」と名前が付いているからてっきり攻撃だけだと考えていたシルヴィアとソルが、驚きの表情を浮かべた。

「他にも使い道はあるかもしれないけれど、いまのところ確認できるのはそれくらいかな?」

「畏まりました。わざわざ確認ありがとうございます。このあとで、色々と試してみます」

 その説明に丁寧に頭を下げたソルに、考助は頷きを返した。

「そうだね。でも、あくまでも確認できているのは可能性の範囲だから、あまり無茶は駄目だからね」

「はい」

 釘を刺すような考助の言葉に、ソルはどこまでも真面目な表情でそう答えるのであった。

ソルが神化しました。

進化ではなく、神化です。

いや、神化も進化のうちのひとつになるのですが。

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