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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 塔のあれこれ(その21)
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(7)無自覚

 考助への質問攻めは、本当の意味で責めているというよりも、知りたいことをいろいろ聞いておきたいという意味での問いかけだった。

 「質問攻め」というのは、全員から次々に質問を浴びせられた考助が、そう思い込んだだけである。

 その女性陣は、考助が一息ついている間に、少し離れたところでなにかを議論していた。

 ようやく落ち着いた考助が、なんだろうと内心で首を傾げていると、その話し合いを終えたのかぞろぞろと考助に近寄ってきた。

 そして、誰が話すのかを決めていたのか、代表してシュレインが聞いてきた。

「コウスケ、いま一度聞くが、ここにある魔法陣は家が建てば見ることはできないのじゃな?」

「え? うん。出来ないよ? というか、家が建っていなくても魔法陣は見えないよ。その辺は、通常の魔道具と同じ。いまはみんなに見えるようにしているだけだから」

 市販の魔道具の中には、まがい物ではないことを証明するために、わざと魔法陣を見えるようにしている物もある。

 だが、魔道具が高度になればなるほど、使われている魔法陣を隠すのは当たり前のことだ。

 それは複製されることを防ぐ目的でもあるが、下手に魔法陣に触れて暴発したりしないようにするためでもある。

 当然、考助が作っている魔道具にもそのルールは適用されており、今回の家も同じであった。

 

 考助の返答に、一同は安堵の表情を浮かべた。

「そうか。それは良かった」

「うん。でも、改まって聞いてきたのは、なにか意味があるの?」

 どうして皆がこのような反応を示しているのかわからず首を傾げる考助に、フローリアがため息をつきながら答えた。

「まず結論から言うが、我らではいま見えている魔法陣を再現することは不可能だということが、話し合いでわかった」

「え? う、うん」

 いきなり作成が不可能だと言われて不思議に思った考助だが、とりあえず話の続きがありそうだったので、素直に頷いておく。

「そのこと自体は、まあ、別にいいのだが、問題は無理にこれらの魔法陣を作ろうとして暴走させることだ」

「暴走っ!?」

「やはり気づいていなかったのか」

 目を見開いて驚く考助に、フローリアが再び大きくため息をついた。

 

 フローリアの言葉をひきつぐように、今度は一歩引いて話を聞いていたイスナーニが加わってきた。

「考助様から説明を聞いたことと、いま目の前に見ている魔法陣を見れば、魔道具に携わる者たちがなにを考えるかは、わかります。間違いなく躍起になって、この魔法陣の解析をしようとするでしょう」

「それは、まあ、そうだろうね」

 イスナーニの説明に、考助はとくに反発するわけでもなく同意した。

 考助自身も見たことのない魔道具を見つければ、どんな魔法陣を使われているのか解析しようとするのだ。

 考助は、魔道具製作者たちの探求心まで否定するつもりはない。

 

 それがどうしたのかと言いたげな考助に、イスナーニは首を左右に振った。

「考助様は気付いておられないかもしれませんが、ここに使われている魔法陣の技術はかなり高度なものが使われております。私でも独自に解析しようとするには相当な期間がかかるでしょう」

「それもそう、かな?」

「これは自慢ではなく、私でもそう(・・)なのです。他の者たちが手を出せば、どんな危険なことをするかもわかりません」

 そう断言するイスナーニに、考助はちょっとばかり反論しようとしたが、他の皆が思いっきり頷いていたのを見て、反論することを諦めた。

 自分でも抵抗できるだけの材料が少ないと思っていたので、無駄な抵抗だと飲み込んだ。

「そうかもしれないね」

「かも、じゃないんだがな」

 微妙に抵抗した考助に、フローリアが苦笑して返した。

 

「まあまあ。いまはそれよりも、この魔法陣の隠蔽のほうが大事じゃろ?」

 続けて苦言を言いそうなフローリアをシュレインが、止めに入った。

 昨日言い過ぎたと心に引っかかっていたので、今回は早めに仲裁したのだ。

 幸いにして、考助はそのことには気づかずに、シュレインの話題転換に乗ってきた。

「隠蔽って言ってもね。それに限っては特別なことをするつもりはないよ?」

「・・・・・・本当じゃろうな?」

 攻めすぎないようにと思ってはいても多少は疑ってかかっているのは、普段の考助の行いのせいである。

 現に、他の面々も同じような視線を考助へと向けていた。


 女性たちの視線に晒された考助は、中途半端な答えはできないと悟って、数秒考えてから答える。

「だって、余計なことをしたら、それこそ隠蔽する意味がなくなるからね。基礎であとはやることは、魔法陣を隠すだけ」

 他には何もしないと言い切る考助に、何人かが疑わし気な視線を向けた。

 それを察したピーチが、シュレインよりも早く止めに入った。

「まあまあ。ここで疑っても仕方ないのですから、とりあえずはやってもらえればいいのではないでしょうか~? あとは隠蔽するだけなのですよね?」

「うん。そうだね。もう隠していいんだったら、やってしまうけれど?」

 そもそも他の面々が確認するまでは、隠さない方がいいと言われてそのままにしていた。

 他のメンバーがもう見ないのであれば、すぐに消しても何の問題もないのだ。

 

 全員が頷くのを確認した考助は、家の基礎に向かって作業を始めた。

 今回は魔法陣を隠蔽するだけなので、精霊たちの力を借りることはしない。

 考助自身が動いて消していくことになるのだが、それなりの広さがあるので意外に時間がかかった。

 とはいえ、同じような作業の繰り返しなので、特に失敗することなく終えることができた。


 だが、そう思っていたのは考助だけだったようだ。

「うん。これで終わり。もう問題ないと思うよ? ・・・・・・って、あれ? どうかした?」

 自分を見る女性陣の目が呆れているのに気づいた考助が首を傾げた。

 その考助に向かって、今度はシルヴィアがまじめな顔になって話し出した。

「コウスケ様。いまの貴方の自覚のなさは、少々危険です。その調子で人前に出られると、本気で危ないことになりかねません」

「えっ!?」

 真顔のシルヴィアの忠告に、考助は本気で驚いた。

 本当の本気で、考助はいままでの延長という感じで作業を行っていたのだ。

 シルヴィアが、巫女の立場で忠告してくるほどのものとは考えてもいなかった。

 

 そんな考助の心情を見抜いたのか、シルヴィアは首を左右に振りながら続けた。

「恐らくですが、神としての格が上がったことにより、扱える力も増しているはずです。それによって、作れるものにも大幅な成長が見られます。コウスケ様にその自覚が薄いのは、急激に成長した弊害だと思われます」

「そ、そうなのかな?」

 シルヴィアの忠告に、考助は思わず自分の右手をまじまじと見た。

 とはいえ、左目の力で自分が持っている力を見ることができるわけではない。

 右手から視線を外して他の面々の顔を見回すと、頷いたり、じっと見つめてきたりと反応は様々だが、同じように自分を心配していることが考助にはわかった。

 勿論、そこには考助をからかおうとするような色は見られなかった。

 

 彼女たちの顔を見た考助は、額に手をやり大きくため息をついた。

「なるほど。確かに自覚が足りないみたいだね。・・・・・・といっても困ったな。いまの自分だと、自覚するのは難しそうだよ?」

 考助にしてみれば、さほど大きな力を使って作ったという自覚はほとんどなかったのだ。

 自覚しようにも、この調子だとまた同じことを繰り返すのは間違いないだろう。

 考助の自覚を促すためには、誰か他の者がそばにいて指摘する必要がある。

 その考助の言いたいことがわかったのか、女性陣は一度顔を見合わせて、シュレインとシルヴィアが進み出た。

「時間があれば、吾がついていよう」

「私もですね」

 それなりに時間が取れて、魔法陣にもある程度知識があるとなると、このふたりが見張るのが一番いいという結論になった。

 ちなみに、イスナーニはクラウンの仕事もあるので、シュレインやシルヴィアほどに時間が取ることができない。

 

 こうして考助の家づくりは、監視付きで行われることになるのであった。

今回の考助の無自覚は、肉体の成長(?)に精神が追い付いていないためでした。

そのことをようやく自覚できた考助。


ここまで長々と考助の駄目っぷり(?)を書いたので、あとはサクッと家を完成させたいと思います。

・・・・・・タブン。

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