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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 塔のあれこれ(その21)
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(2)階層決定!

 考助が家を建てる階層は、予想外にすぐに決まった。

 というのは、話を聞いたピーチが速攻で「それでは第七十二層に造ってはどうでしょうか?」と言ってきたのだ。

 あまりの早さに、たまたまそこにいたシュレインが一瞬動きを止めたほどだった。

「ふむ。理由を聞いていいかの?」

「理由? 理由ですか~。なんとなくの勘でしかないのですが、具体的になにと言われると困りますね」

 いつもの調子でピーチはそう答えたが、その場にいた全員が黙り込んだ。

 管理層に普段から住んでいる者たちで、ピーチの勘を馬鹿にする者はひとりとしていないのだ。

 

「第七十二層か。ふむ」

 腕を組んでそう言いながら呟いたシュレインだったが、すぐに顔を上げた。

「場所的には、次の階層に向かう転移門の近くが良いじゃろうな」

「第七十二層であれば、そもそもそこまで行ける冒険者が少ないですし、次の階層に向かうということは通過点でしかありません。確かにいいかもしれませんね」

 シュレインの台詞を補足するようにシルヴィアも具体的なメリットを上げた。

 確かに第七十二層の転移門付近であれば、来る人が少ないために人目に付きにくいだろう。

 第七十二層を通過できるということ自体が、実力のある冒険者しか無理なのだ。

 それだけで多くの人数がふるい落とされるため、考助の希望にも沿っているといえる。

 

 うむ、と一度だけ頷いたシュレインが考助へと視線を向けた。

「転移門のすぐそばにするかは別として、第七十二層というのはよさげだと思うが、どうかの?」

「そうだね。来る人数を考えれば、そこが一番いいのかな。あとは、家自体にどういう機能を持たせるかで、場所を決めようか」

「なんじゃ。まだ決めていなかったのか?」

 てっきり作る家は既に決めていたのかと考えていたシュレインが、きょとんとした顔をした。

 それを見た考助は、首を左右に振った。

「いくつかパターンは考えていたけれど、最初からひとつに決めていたわけじゃないよ」

「なるほどの。・・・・・・幾つかのパターンというのは気になるが、聞いてもいいのかの?」

「ああ、それはね――」

 別に隠すつもりのなかった考助は、シュレインの疑問にすぐに答えを出した。

 

 実際には目の前にあるにも関わらず決められた者しか見えない家。

 森の奥深くにあって、限られた者しか見えない道を通っていける家。

 家自体は空に浮いていて、条件のあった者しか起動できない転移陣を通って行く家。

 ――などなど。

 家を作ると決めてから、考助が考えていた夢(厨二ともいう)溢れる構想は、いくつか思いついていたのだ。

 

 考助から説明を聞いたシュレインとシルヴィアは、揃ってうーんとうめき声を上げた。

「・・・・・・聞いているだけでとんでもない物ができそうじゃの」

「・・・・・・神の御業としたほうがよさそうですね」

「いっそのこと神の聖域としてはどうかの?」

「なるほど。それはいいかもしれません」

 ふたりともすでに考助が特殊性溢れる家を完成させることを前提に、話を進めている。

 もし、考助が話したような家ができれば、その時点で神与物として認められそうな機能がついていることになる。

 シュレインとシルヴィアの懸念は、あながち間違いではないのだ。

 

 自分を抜きに話を進めるふたりに、考助は渋い顔になった。

「なんか、仲間はずれな気分」

「そんなつもりはありませんが、自分が作ろうとしている物がどれほどこの世界の常識から外れた物か、理解していらっしゃいますか?」

 敢えていつもよりも丁寧な言葉で突っ込んできたシルヴィアに、考助は「うっ」と呻きつつ視線を逸らした。

 なんとなくやばい物かなと思いつつ、好奇心のほうが勝ったために作ることを決断したのだ。

 シルヴィアの言葉に的確に反論することなど、できるはずもない。

 さらに、シュレインとシルヴィアのふたりは、家を作ることを前提に話をしているので、考助にとっては感謝こそすれ、非難するつもりはないのである。

 

 考助の様子を見て苦笑していたシュレインが、

「まあ、作った家をどういう扱いにするのかは、敢えてこちらが決める必要もあるまい。もし冒険者が見つけられれば、勝手に噂で広めてくれるじゃろう」

 そうもっとも現実的な意見を出したことで、家の扱いをどうするかという話はすぐに終わった。

「それよりも、家を作っているときはどうするのじゃ? 作っている間に見つかってしまうじゃろ?」

「ああ、それならきちんと見つからないように結界を張りながらやるから大丈夫だよ」

「なんじゃ、その無駄な力の使い方は」

 普通、家のような大きなものを作るときに、結界を張り続けるなんてことはしない。

 それは、家が完成するまで結界を張り続けると、かなりの力を消耗するためだ。

 周りにいる者たちを驚かす、または喜ばせるために、敢えて目隠しのような魔法を使って建築する者はいるが、そうした永続性のある魔法は、基本的に大量の力を使うために経費が莫大になる。

 そのため、そんな酔狂なことをするのは、金を大量に持っている者だけなのだ。

 

 もっとも、考助の場合は、自分自身で大量の力を持っている上に、魔道具で誤魔化すこともいくらでもできるので、家を作っている間隠し続けることなど造作もない。

「無駄かもしれないけれど、見つかるわけにはいかないからね」

 考助としても無駄な力の使い方ということは理解しているが、隠れてことを成す必要がある以上、それは譲れない。

「家はどれくらいで完成する予定ですか? それによっても消耗の度合いは違うと思うのですが」

「早ければ一週間、遅くても二週間で完成すると思うよ?」

 シルヴィアの問いに、考助はあっさりとそう答えた。

 そして、それを聞いたシュレインとシルヴィアが驚きの表情になった。

「いや、待て。一週間って、それは流石に冗談じゃろう?」

「長くても二週間というのもあり得ないと思うのですが?」

 家を作るとなると、どんなに短くても一カ月以上はかかる。

 あり得ない考助の言葉に、考助のやることに慣れているふたりが驚くのも当然だ。

 

 そんなふたりに、考助は軽く肩をすくめた。

 勿論、考助にも通常家を建てるのにどれくらいの期間がかかるかはわかっている。

「そう言いたい気持ちはわかるけれど、そもそもの作り方が全く違うからなあ」

「ほう? それは、どういうことじゃ?」

 興味を持ったシュレインが、目を瞬いて考助に問いかけた。

「神威を使って、魔法でこう・・・・・・」

 どうにか説明しようとして両手を動かそうとした考助だったが、やがて諦めてガクリと首を落とした。

「・・・・・・言葉で説明するのは難しいから、興味があるんだったら作るところを見に来て」

「なるほど。そうさせてもらうかの」

 考助の様子を見て苦笑していたシュレインは、小さく頷きながらそう答えた。

 

「作る場所と期間はそれでいいとして、材料は大丈夫なのですか?」

 考助とシュレインのやり取りを黙って見ていたシルヴィアが、そう問いかけて来た。

 以前考助と話をしていたときには、まだ全部は集まっていないと言っていたためだ。

「ああ、それならコウヒとミツキのお陰でかなり集まっているよ。あとは、そのときに必要な素材ばっかりだからね」

「そうですか。では、いつから作り始めますか?」

「明日には、場所と作る家の構想を練って明後日には・・・・・・と言いたいけれど、他の人たちにも話さないといろいろと言われそうだから、全員に話が通ってから、かな?」

 なにも言わずに作り始めれば、各所から責められる未来が見えた考助が、保険をかけてそう付け加えた。

 それを聞いたシュレインとシルヴィアも、それは当然という顔をしているのだから、ことを起こす前の事前連絡(?)がいかに重要視されているのかがわかる一幕なのであった。

さてはて、どんな家ができるのでしょうね?

作者もまだどれにするかは決めていませんw

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