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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 塔のあれこれ(その20)
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(6)考助の成長?

 くつろぎスペースのソファで寝ていた考助は、手の甲にひんやりとした冷気を感じて目を覚ました。

「・・・・・・ん? ああ、スーラか」

 ひょいと目の前に手を持ってきて確認すると、そこにスーラがペットリとついているのを確認した。

 普段は結構な大きさになることができるスーラだが、考助の傍に寄るときは小型化をして近付いてくる。

 いまは手のひら大の大きさになっているが、その気になれば一メートル大になることも可能だ。

 もとになっているリンはもっと大きくなれるので、実はスーラももっと大きくなれるのかもしれないが、考助も見たことはないので本当のところはわからない。

 

 ともあれ、スーラのお陰(?)で完全に目を覚ました考助は、上半身を起こして周囲を見回した。

 考助の見守るようにコウヒが傍にいるのはいつものことだが、他には誰もいなかった。

 時間にして二、三時間昼寝をするのは、ここ最近の考助の日課となっているので、それを邪魔するものは誰もいないのだ。

「んーっと」

 右手にスーラを纏った(?)まま、両手を上げて伸びをした考助は、コキコキと首を慣らした。

 別に変な体勢で寝ていたわけではない為に体が硬くなっているとかではないのだが、なんとなく気分でやっているのだ。

 

 首をぐるりと回しながら、考助は誰に言うでもなく、ぽつりと呟いた。

「・・・・・・やっぱり気のせいじゃないな」

「なにかおっしゃいましたか?」

「いんや。なんでもないよ。ただの独り言」

 その呟きにコウヒが反応したが、考助は首を振った。

 

 女性陣が裏でいろいろと話し合っていることには気付いていない考助だが、実はここ連日昼寝をし続けている不自然さには気づいていた。

 なにしろ、毎日のように昼寝をしているにも関わらず、しっかりと夜も寝れるのだ。

 もっとも、睡眠時間が通常よりも長くなっているだけならば、考助もそんなこともあるかで済ませていただろう。

 だが、それ以外にも自分自身で感じている体の調子に変化があることに気付いてからは、睡眠時間が長くなっていることと関連付けていた。

 とはいっても、別に不調になっているわけではない。

 むしろ、良くなっているのだから、不安に感じているわけでもない。


 ただ、変化のきっかけになっていることが、考助の思い当たる限りひとつしかない。

 ことは神の儀式に関わることなので、誰に聞こうかとこの数日考えていたのだ。

「よし、決めた」

 その相手を決めた考助は、すっきりした顔でそう言ってから、くつろぎスペースをあとにした。

 

 

 考助が向かった先は、クロがいる神域だった。

 女性陣から隠れたかったわけではなく、話をする相手のことを考えて、普通の世界とは隔絶された場所から話をした方がいいと判断したのだ。

 神域に来るなり駆け寄ってきたクロや狼をひとしきり構ってあげたあとに、考助はその相手と交神を始めた。

「アスラ、いま大丈夫?」

『ええ、勿論大丈夫よ。そろそろ来るかと思っていたわ』

 考助が交神を入れるなり、アスラはすぐに返事を寄越した。

 それだけではなく、考助が交神した理由もしっかりと把握しているようだった。

「ハハ。話が速くて助かるよ。それで、どうなの?」

『考助が考えている通りよ。儀式によって考助が土地から受ける影響力が増して、神としての力が上がったわ。それによって、身体がより多くの睡眠時間を必要としているだけよ』

 気楽な調子で伝えられたその事実に、考助も納得の表情になった。

 

 考助は、以前と比べて自分自身が持つ力が増しているように感じていたのだ。

 今更アスラからそのことが伝えられても、驚くようなことではない。

 女性陣は考助がどう考えるかを気にしていたのだが、考助自身は特に気にはしていないのである。

 ここまで大きな影響を受けるとは思っていなかったのだが、儀式を考えたときからある程度の予想はしていたのだ。

 

 そんなことよりも、考助には別に気になることがあったので、アスラに連絡をしたのだ。

「それはそれとして、この先も寝る時間は増えたまま?」

『あら。随分とあっさりしているのね。まあ、それは良いとして、その質問の答えはノーよ。聖域が安定したら考助の持つ力も安定するもの。以前の時間に戻るわ』

「そうなんだ。それはよかった」

 考助としては、神としての力が増したことよりも、睡眠時間が増えたことによって、使える時間が減ったことのほうが問題だったのだ。

 無理やり起きているとなにが起こるかわからない以上、下手に睡魔に抗うわけにもいかない。

 そのために、色々と時間を削りながら対応していたのだが、それがずっと続かなくていいとわかって、考助は安堵のため息をついた。

 

 そんな考助の思いを見抜いたのか、アスラからの笑い声が聞こえて来た。

『考助らしいわね。時間なんて有って無いような私たちにとって、一時的に睡眠時間が増えたところで、大した違いはないと思うのが普通なのだけれど。周りにいる女性たちだってそれは同じでしょう?』

 アスラが神らしい時間感覚でそう言ってきた。

「実際に長生きすればそう思えるようになるのかもしれないけれど、その辺の感覚はまだまだ人のときと変わっていないよ」

『あら。ごめんなさいね。別に責めたわけじゃないのよ。考助は考助らしく在ればいいと思うわ。だからこそ他の女神たちも惹かれているのでしょうから』

「い、いや、あれは別に惹かれているとかじゃなくて、珍獣を珍しがっているだけだと思うのだけれど?」

 (考助にとっては)とんでもないことを言い出したアスラに、考助は慌ててそう答えた。

『あら。そうかしら?』

 アスラもそれだけを答えてそれ以上はなにも言わなかったが、なんとも含みのある言い方に、考助としてはなんともいえない気持ちになるのであった。

 

 

 アスラから聞きたいことを聞けた考助は、しばらくクロたちと遊んだあとにくつろぎスペースへと戻った。

 いつもなら研究室に入って魔道具の研究でもするところなのだが、くつろぎスペースに意識を向けたら気付いたことがあったのでそちらに寄ることにしたのだ。

 そして考助が部屋のドアを開けると、そこにはナナがちょこんとお座りをして待っていた。

「あら。やっぱりナナのコウスケ探知機は正確ね」

 考助がナナの頭を撫でていると、笑いながらコレットが近寄ってきた。

「あれ? コレットひとり? 子供たちは?」

「乳母に預けてきたわ。たまにはこっちでのんびりするのもいいでしょう?」

 そんなことを言ったコレットだったが、実際は考助の様子を見に来たのだ。

 コレットもシルヴィアから話を聞いて、考助のことを気にしていたのだ。

「それはもちろん、いつ来てもいいんだけれどね」

 そんなコレットの思いなど気付かないまま、考助はナナを撫で続けながらそう答えるのであった。

 

 考助がくつろぎスペースに来たのは、コレットがいることがわかったわけではなく、ナナがいることがわかったからだ。

 神としての力が強くなって以来、考助にはナナ、ワンリ、スーラのいる場所がなんとなくわかるようになっていた。

 いまもスーラが考助のいるところを目指して物陰を移動していることが知覚できている。

 さすがに塔の階層が違えばどこにいるのかはわからないが、管理層にいれば大体の位置を把握できるのだ。

 神域を出てきたときにナナの気配を感じたので来てみたのだが、やはり間違っていなかった。

 加速度的に人間離れしていっているなあと思わなくもない考助だったが、すでに苦笑するだけで済ませられるほどに成長(?)しているのであった。

微妙な成長を遂げている考助でしたw

ちなみに、力が増しているのは全体的なことで、別に神獣たちを知覚できるようになっただけではありません。

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