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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第9部 第1章 塔のあれこれ(その18)
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(10)神様的なあれこれ

 トワがプチお説教で若干落ち込んでしまったセイヤとシアと遊んでいるうちに、夕飯間近という時間になっていた。

 ふたりと走り回って疲れてしまったトワが、いったん休憩を宣言して水を飲みに台所へ行こうとしたところで、ココロと鉢合わせになった。

「あれ? こっちにいるのは珍しくないですか?」

 トワとココロは、王城でしょっちゅう会っている。

 シルヴィアの役目を継いだココロが、ラゼクアマミヤに関わる教会関係の案件に携わっているためだ。

 逆に、管理層でこのふたりが会うのは珍しい。

 

 驚いてココロを見たトワとは対照的に、ココロはトワが管理層で休暇を取っていることを知っていた。

「城に詰めていたらこちらにいると聞いたので、せっかくですから神域の件を含めて報告をしようかと」

「ああ、なるほど。そのほうがいいか」

 折角の休暇なのに仕事を持ち込むのか、なんてことはトワは言わない。

 そもそもトワが帰ろうとしている時間ぎりぎりになってから来ている時点で、ココロが気を遣って来ていることはわかる。

 そして、トワはそれを知ったうえで、ねちねちと嫌味を言うような性格はしていないのである。

 

 

 丁度研究室から出て来た考助を捕まえたトワとココロは、くつろぎスペースにいたシルヴィアを加えて会議室へと入った。

 くつろぎスペースで話し合うのでも良かったのだが、ミクがストリープの練習をしていたので遠慮したのである。

 各自が席に着いたところで、ココロが話を切り出した。

「いまのところ大陸内では、神域については好意的に受け入れられています。まあ、神々が降臨して神託を告げていたので、悪くとらえる人は今後も少ないと思われますが」

「でしょうね。むしろ悪くとらえる人がいることのほうが驚きです」

 ココロの言葉に軽く頷いたトワは、肩をすくめながらそう言った。

 今回の考助の神域化は、小さな村にまで神々が降臨していた。

 そういった村では、一生かかってもお目にかかれないような奇跡に、嫌悪を示さないのは当然といえる。


 勿論それは、大都市といえる場所でも同じなのだが、セントラル大陸ではこれまで何度か考助及びその関係者がやらかしているので、ちょっとした耐性が付いていたりする。

 それはそれである意味では問題だったりするのだが、今回に関しては別の問題が出ていた。

「悪くとらえているのは、大陸外の教会が頑張っているお陰のようです」

「そういうことですか。・・・・・・頭が痛いですね」

 実際に額に手を当ててため息をついたトワに、ココロは微妙な笑みを浮かべた。

 そもそも教会という組織に公には所属していないことになっているココロだが、以前とは違ってミクセンにある神殿とはある程度の繋がりを持っている。

 そこからの情報で、セントラル大陸内での人々の信仰の動きがどうなっているかは、大まかに把握しているのだ。


 この世界では、表立っての教会同士の対立はないが、信仰する神ということにおいては微妙なせめぎあいが生じている。

 考助が現人神になったときに、それが正しいかどうかは別にして、神として認めるかどうかを駆け引きしていたのもそうしたせめぎあいの一貫にあたる。

 ここで今回問題になるのが、セントラル大陸の神域化について、あくまでも主導したのが現人神コウスケだが、三大神の立場をどこに置くかということだ。

 大陸を覆うほどの神域を作った現人神を大陸の主神として祭るのが当然と思っているのがほとんどなのだが、他大陸の教会ではいままで通りあくまでも神々の中心は三大神だと主張している。

 そうした主張をもとに、一部の者たちが神域化を盾に神としての立場を逆転させようとするのはとんでもないと言っている者たちがいるのである。

 当然そうしたことを言い出しているのは、他大陸の神殿の意向を汲んでいたりする。

 

 シルヴィアから細かい説明を聞いた考助は、微妙に顔をゆがめた。

「・・・・・・なんとも面倒臭いね」

「それはそうですが、そもそも神々にとっても信仰者の獲得は死活問題・・・・・・とまでは言わないまでも、重要なのでは?」

 シルヴィアの問いかけに、考助は腕を組んで首をひねった。

「うーん。それは重要じゃないとは言わないけれど、多分、教会が思っているほど重要視していないと思うよ?」

「そうなのですか?」

 僅かに目を見開いて驚くシルヴィアに、考助は小さく頷いた。

「うん。だって――――これは極端な例だけれど、女神の中には昆虫を統べるような存在だっているからね。そうした女神が、人の作った教会に影響されると思う?」

 たしかに神としての存在を維持するためには、自分のことを知っている存在が必要になるが、それが必ずしも教会で言っている信仰とはイコールにはならないというのが考助の説明だ。

「・・・・・・なるほど。確かにそれはその通りですね」

 分かり易く極端な例を出した考助の説明だったが、他の三人も納得した顔になった。

 

 考助の説明にしばらく考え込んでいたシルヴィアが、視線をココロとトワに向けた。

「でしたら話は簡単ですね。もし、組織だってなにかを言っていた場合は、そもそも三大神の許可があることを盾に反論すればいいだけです」

「それは・・・・・・いいのですか?」

 三大神を持ち出して盾とすることに、微妙な表情となったココロに、シルヴィアは頷きつつ考助を見た。

「いいのですよ。そもそも神域を作る前に、コウスケ様は許可を取っているのですから」

「まあ、そうだね。しかも、完成したときに降臨までしていたんだから、別に言って構わないと思うよ。もしだめだったら、ちゃんと僕を通して注意が来るだろうし」

「注意が来てから訂正するのは遅すぎる気がするのですが・・・・・・」

 心配そうな顔になってそう言ったココロに、考助は右手をひらひらとさせた。

「ああ、いやいや。そういうことじゃなくてね。なにかをやる前に、それこそ神託として前もって知らせてくれるってこと」

 考助のやることが突拍子もなくて、前もっての予測ができずに連絡が来ないなんてこともあり得るが、そうしたことを棚に上げて軽い調子でそう言った。

 考助の言いようがあまりにあっさりしすぎているので、不安になったココロはシルヴィアを見たが、見られた当人は苦笑しながら首を縦に振った。

「もう少し慎重になってもいいとは思いますが、少なくとも今回の件に関しては、大丈夫ですよ」

「・・・・・・そうですか。わかりました」

 シルヴィアの念押しに、ココロもようやく納得して頷いていた。

 ちなみに、このときの考助は、そんなに自分が信用できないのかと内心で落ち込んでいたのだが、トワがそれに気づいていたらしく、ニマニマ顔になっていたのだが、ココロはまったくそれには気付いていなかった。

 

 ココロが納得したところで、話が別の話題にずれた。

「――――百合之神宮については、どうしましょうか?」

「ん? どういうこと?」

 考助にとっては唐突すぎたその問いに、首を傾げる。

「それぞれの神社に派遣する人材の育成もほぼ終わりました。現人神の許可があれば、あとは実際に住まわせるだけの状態になっています」

「おや。もうそんなところまで行っていたのか」

 百合之神宮の観光地化については、ココロが頑張っていることは知っていたが、細かい計画までは考助は聞いていなかった。

 考助が、任せるという意味を含めてちらりとシルヴィアを見ると、きちんとその意を汲んだシルヴィアがココロに向かって頷いた。

「ココロが大丈夫と判断したのであれば、そのまま進めて構いません。――――いよいよですね」

 シルヴィアがそう最後に付け加えると、他の面々も大きく頷いていた。

 百合之神宮にあるそれぞれの神社に、神官や巫女が定住するとなると、当初の計画が大きく進むことになる。


 百合之神宮の観光地化――――これが上手くいけば、アマミヤの塔はまた新しい側面を世界に見せることになる・・・・・・はずである。

これでトワの休暇にまつわる話は終わりになります。

トワをダシにして、いままでの話のまとめ的な感じにしてしまいました。

次からは・・・・・・まだ決めていませんw

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