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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第9部 第1章 塔のあれこれ(その18)
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(8)親子の語らいと実力

 翌朝。

 「ウーム」とトワが腕を組みながら唸っていると、ミアが声をかけて来た。

「カエルが潰れたような声を出されて、どうなさいましたか、兄上」

「・・・・・・ミア。其方は、悪いところばかり父上に似て行っているのではないか?」

 げんなりとした表情でそう言ったトワを、考助が両目を見開いて見た。

「えっ!? 僕はそんな言い方することは、一度もないんだけれど?」

「そうですか?」

 不思議そうな顔をして小首を傾げたトワに、考助がショックを受けたような顔になった。

「い、いや。そうだよ? 一度もないよ」

 考助が「タブン」と付け加えると、トワは呆れたような顔になった。

「父上?」

「うっ。え、えーと?」

 考助としては、そんな漫画かアニメの中でしか見ることのないようなセリフを言った覚えはないのだが、無意識のうちに使っている可能性もある。

 

 そんなふたりのやり取りに割って入ってくる者がいた。

「ハハハ。トワ、コウスケを責めてやるな」

 そう言って来たのは、フローリアだった。

「しかし、母上」

「それに先ほどのミアの台詞は、考助ではなく、私からの模倣だぞ」

「はい!?」

 フローリアの言葉に、トワは思わずミアとフローリアを見比べた。

 トワから視線を向けられたミアはわざとらしく視線を逸らし、フローリアはもう一度「ハハハ」と笑った。

「コウスケが眷属たちに押しつぶされているときに、そんな台詞を言ったことが何度かあるからな」

 思わずその状況を思い浮かべたトワは、額に右手を当てて「ああ」と目を閉じながらため息をついた。

 そのときの光景が目に思い浮かんだのだ。

 

 目を開けたトワは、

「この場合、誰に突っ込めばいいのでしょうね」

「うむ。無理に突っ込む必要はないと思うぞ?」

 自分にも非があるのがわかっているので、フローリアが僅かに視線を逸らしてそんなことを宣う。

 それを見ていた考助が、滅多にないチャンスだと考えて笑って言った。

「いやいや。たまには怒られないとフローリアも反省しないだろうから、思いっきり息子トワに叱られると良いと思うよ」

 フローリアは、嬉しそうな顔になる考助を睨むが、今回に限ってはどうしようもできない。

 すでにミアは、諦めモードで立っていた。

 

 今回ばかりは突っ込まれる側じゃなくて済むと考えていた考助だったが、予想外のところから攻撃が来た。

「――――だったら、父上も一緒に叱られた方がいいんじゃないか?」

 ようやく起きて来たのか、くつろぎスペースに入ってきたばかりのリクがそんなことを言ってきた。

「リク」

 余計なことを言うなと言わんばかりに、考助は目を細めてリクをにらむ。

 だが、そんな視線はどこ吹く風とばかりに、リクは笑いながらトワを見た。

「兄上もそう思わないか?」

 そう水を向けられたトワは、しばらく腕を組んで考えていたが、自分の中で何かを昇華したのか小さく頷いた。

「そうですね。せっかく時間があるのですからそうしましょう」

「トワ!?」

 両目を見開いて考助がトワを見たが、その当人は口にうっすらとした笑みを浮かべた。

「いろいろとネタはありますからね。覚悟をしてください」

 そう断言してきたトワに、考助は項垂れるようにしてガクリと頭を下げた。

「・・・・・・ハイ」

 どう頑張っても逃げられないと悟った考助は、観念したようにそう答えるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 幸いにして(?)トワの説教は、一時間ほどで終わった。

 後半からはリクも混ざって茶々を入れていたので、ノリで続けていたというのもあったのだろう。

 ちなみに、シュレインを始めとした他の女性陣は、トワの説教を遠巻きに見守っているだけだった。

 トワの説教に巻き込まれたくないということもあったのだろうが、どちらかといえば、親子の語らいを邪魔したくないという気持ちのほうが強かったのだ。

 

 そんなこんなで昼食後。

 一度第五層の街に行っていたリクが、仲間たちを連れてきた。

 敢えて言っていなかったのか、くつろぎスペースでウロウロしていたトワを見て、『烈火の狼』の面々はピシリと固まっていた。

 それを見たトワは、一度だけリクを睨み、メンバーを見て言った。

「固くならなくていい。ここにいるときの私は、ただのリクの兄です」

「・・・・・・兄上。それを言うなら、『ただのリクの兄』ではなく、『リクのただの兄』じゃないのか?」

 微妙な言い回しだが前者だとリクの価値(?)が下がっているように聞こえる。

 リクの抗議に、だがトワはフフンと鼻で笑った。

「そう言われたければ、せめてSランクに上がってからにしてもらいましょうか」

「うわっ! 横暴!」

 気安い感じでの兄弟のやり取りに、考助たちは勿論、『烈火の狼』の面々も笑いが堪えらないような表情になっていた。

 

 周囲の視線に気付いたトワは、それでもさすがに気付かなかったふりをして、リクを見た。

「それはともかく、噂の冒険者パーティの実力が見てみたいですね」

「ああ。兄上ならそう言うと思った」

 リクはトワの言葉に、そうだろうなという顔で頷いていたが、他のパーティメンバーは「えっ!?」という顔になっている。

 それはそうだろう。

 いくら実力が高い冒険者パーティとはいえ、直々に戦っているところが見たいなどと言われることはまずない。

 主に安全面のことを考えて周囲が止めるのが普通なのだ。

 だが、ここにはそのストッパー役がいない。

 

 本当に大丈夫なのかと顔を見合わせるメンバーに、リクが笑いながら言った。

「お前ら、ここにいる奴らの実力を忘れていないか?」

 その若干呆れたようなリクの声音に、他の面々がハッとした表情になった。

 いまこの場には、トワの実の両親やつながりの深い面々がいるのだ。

 しかも揃って個々の能力が高い。

 迂闊にトワに攻撃を仕掛けようものなら、どんな報復が待っているのかわかったものではない。

「お見苦しいところをお見せいたしました」

 メンバーを代表して言ったカーリに、トワは苦笑しながら首を左右に振った。

「いいえ。構わないですよ。それよりも、早く訓練場に行きましょう」

 急かすようにして手を振ったトワに、考助たちは苦笑しながら場所の移動開始をするのであった。

 

 

 訓練場に移動した『烈火の狼』は、早速模擬戦を開始した。

 相手は、シュレインとシルヴィアのふたりだ。

 さすがに『烈火の狼』も実力が上がっているせいか、シュレインとシルヴィアだけだと押されている。

 最初の頃は、御前試合ということで固くなっていた『烈火の狼』の面々だったが、徐々に硬さが取れてきて中盤以降は押すようになっていた。

 シルヴィアが前衛の攻撃系ではなく、後衛の防御系だというのも影響しているのだろう。

「・・・・・・なるほど。さすがに噂に上がっているだけはあるということですか」

 シュレインとシルヴィアの実力をよく知っているトワが、模擬戦を見ながらそう呟いていた。

「私たちが旅に出ている間にも実力を上げたようだな」

「そうなのですか?」

「ああ。といっても微妙な誤差ともいえるが。以前であれば、あそこまで早く劣勢から切り返すことはできなかったはずだ」

 フローリアの説明に、トワが納得したように頷く。

「なるほど。・・・・・・まだ、伸びしろはありそうですか」

「そうだろう。まあ、Sランクが視野に入るかどうかは、運も絡んでくるからどうなるかはわからないが」

「そうですか。現時点で、そこまでの実力は?」

 あることを考えてそう聞いたトワだったが、フローリアに睨まれた。

「まだまだだ。・・・・・・馬鹿なことはするんじゃないぞ?」

「私だって命は惜しいです。父上のお気に入りをつぶすような真似はしませんよ」

 平然とした調子でそう返してきたトワに、フローリアは満足げな顔になるのであった。

この章もすでに8話。

・・・・・・章タイトルを「家族の触れ合い」とかにすればよかったかと、若干後悔。

まあ、今から変えても遅くなはいのですがw

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