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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第9部 第1章 塔のあれこれ(その18)
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(3)休暇!

 考助がセントラル大陸周辺を神域に指定してから一週間後。

 疲労感たっぷりにトワが管理層を訪ねてきた。

「今回は一泊して、思いっきりくつろぎます!」

 と、なぜだか管理層に来るなり宣言していた。

 しかも、奥さんと子供も王宮に置いてきたようで、完全にトワひとりで休みに来たようだった。

「こっちは別にいいんだけれど、ダニエラやトビは連れてこなくても良かったの?」

 心配してそう問いかけた考助に、トワは苦笑しながら答えた。

「実は、私室でゆったりしながら子供と遊んだりしようと思ったのですが、ダニエラにそれだと休暇にならないからひとりでこちらに行けと言われてしまいました」

 トワの管理層での休暇は、疲労をためているように見えたダニエラの発案だった。


 トワの場合、たとえ私室にいたとしても常に誰かと話をすることになる。

 それを避けるためには、管理層に来るのが一番いいのだが、ダニエラとトビがいると別の意味で気を遣ってしまい、あまり休暇にはならない。

 それならばと、たまにはひとりで休んではどうかとダニエラがトワに提案した。

 最初は固辞していたトワだったが、結局ダニエラに押し切られて一泊二日の予定で管理層に来ることになったのである。

「ふーん。・・・・・・うーん、やっぱりトワには勿体ない奥さんの気がするなあ」

「うわっ!? 父上がそれを言いますか!」

「えっ! それってどういう意味!?」

 思わず声を上げた考助に、トワは「そう言う意味です」とツラッとした顔で宣った。

 それを見てさらに反論しようとした考助だったが、その前にフローリアが割って入ってきた。

「親子でじゃれ合うのはいいが、せめてゆっくりしてからにしたらどうだ?」

 顔を合わせるなり言い合いを始めたふたりに、フローリアは呆れた表情でそう提案するのであった。

 

 

 持ってきた荷物をお客様用の部屋に置いて来たトワは、くつろぎスペースに向かった。

 そこでは、考助を始めとしてシュレイン、シルヴィア、フローリアがくつろいでいた。

「おや。皆様だけですか。ミアはどうしたのです?」

 考助たちが旅に出る前であれば、間違いなくここにミアも混ざっていただろうと考えての言葉だったが、フローリアがさらりと答えた。

「ミアだったら、サキュバスの里に出向いておるぞ」

「サキュバスの里に?」

 ミアとサキュバスの関係が結びつかなかったために、トワは首を傾げた。

 勿論、ミクがいることは知っているので全く縁がないとは言わないが、どちらかといえば、ミクが管理層に来ているときに構うというイメージのほうが強いのだ。

 

 そんなトワに、フローリアは目をぱちくりとさせた。

「言ってなかったか?」

「? 何をでしょう?」

「そうか。トワにはまだ言ってなかったか」

 フローリアは、そう前置きをして頷きながら、説明を続けた。

「旅の間にミクがストリープに目覚めてな。ミアが教師役として教えに行っているんだ」

「ミクが、ですか。それはまた」

 目を丸くして驚いたトワに、フフと笑いながらシルヴィアが問いかけた。

「意外でしたか?」

「意外・・・・・・いえ。サキュバスと楽器というのは中々思いつきにくいですが、似合うかどうかと言われれば、似合うと答えるでしょうね」

 そもそも見目麗しい容姿が揃っていると評判のサキュバスだ。

 楽器を持って演奏する姿は、とてもさまになることは、容易に想像できる。

 

 トワの答えに満足げに頷いていたフローリアだったが、ふと思いついたような顔になった。

「そうか。せっかくトワがいるのであれば、ミクの演奏を聞いてもらったほうがいいか?」

 思い付きのようなそのセリフに、シュレインとシルヴィアが顔を見合わせた。

「なるほど。それはいいかもしれんの。普段から嫌と言うほど音楽を聞いているトワであれば、耳も肥えておるじゃろ」

「そうですね」

 国王が開くパーティともなれば、そのすべてに音楽が披露されている。

 当然ながらその技量は、国内でも最高レベルのものだ。

 それを毎日のように聞いているトワは、シュレインが言った通り耳が肥えているのだ。

 勿論、トワ自身が幼少のころから音楽の基礎を学んできたという下地があることも、それに一役買っている。

 

 唐突な三人の母親たちの申し出に、トワは目をぱちくりとしたが、その意図を悟ってゆっくりと頷いた。

「まあそれは否定しませんが、そもそも母上も同じなのでは?」

 年齢という条件を考えれば、フローリアのほうが長く音楽を聞いているのではといったトワに、フローリアは首を左右に振った。

「私は既に現役から離れてだいぶたつからな。基礎はともかく、流行りといった意味ではトワには敵わないぞ」

「なるほど。それは確かにそうですね」

 音楽の発展といった意味では、緩やかにしか変化のないアースガルドだが、それでも流行り廃りは出てくる。

 各国の王族が聞くような最高峰の音楽であってもそれは免れるものではない。

 それを考えれば、フローリアの言葉はしっかりと的を射ているのだ。

 

 少しの間頷いていたトワは、視線を考助へと向けた。

「それで? いまから行きましょうか?」

 すぐにでもミクのいる里に向かうかと聞いてきたトワに、考助は苦笑を返した。

「いや。トワはここに休みに来たんだよね? いきなり気を遣ってどうするの。ミクをこっちに呼べばいいんだよ」

 自分が行こうかと立ち上がった考助だったが、それをシルヴィアと顔を見合わせたシュレインが止めた。

「折角なのだから、少しの間だけでも親子水入らずで過ごせばいいではないかの。ミクは私たちが呼んでくるぞ」

「そうですね。それがいいでしょう」

 考助には常にコウヒかミツキが傍についているので、厳密な意味では親子だけということになるわけではないが、それを突っ込む者はここには誰もいない。

 シュレインとシルヴィアの言葉に、トワが一瞬だけ嬉しそうな顔になったあとで、微妙な表情になった。

「それは非常に嬉しい・・・・・・と言いたいところですが、三人だけにされると何を言われるのかわからないので、非常に怖いのですが」

「ふむ。それはいじり倒してほしいという前フリか?」

「違いますよ!」

 トワの心の底からの声に、その場にいた全員が笑い声を上げた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 管理層に来たトワは、最初のうちに儀式がどういう結果になっているかを考助たちに報告をしてからゆっくりしようとしていたのだが、最初からその思惑が外れてしまった。

 もっとも、儀式に関しての報告はいつでもできるので、別に焦ったりはしていないのだが。

 シュレインとシルヴィアがサキュバスの里に行っている間は、人数が少ないので業務的な報告はせずに、ちょっとした日常での出来事を話したりしていた。

 特にトワは、大陸中を回ったときの旅の話を聞きたがった。

 国王という地位に就いているトワは、自分で好きに旅に出ることもできない。

 だからこそ、実体験で旅をした者の話は、貴重で有益なのだ。

 こんなときでも国王としての思考を働かせてしまうのは、トワらしいといえばトワらしいのだが、それはフローリアも同じだったので、よく似た親子といえる。

 

 ミクとピーチに話をして管理層に連れてくるだけならば、小一時間もあれば大丈夫のはずなのだが、シュレインたちがミクを連れて管理層に戻ってきたのは、二時間ほど経ってからだった。

 久しぶりにきたトワに、シュレインとシルヴィアが気を遣ったのだ。

 当然トワもそのことに気付いてはいたが、なにも言わずに甘えさせてもらっていた。

 考助とフローリアは言わずもがなである。

 その間、トワがいじり倒されていたのかどうかは、その場にいた親子三人とコウヒ、ミツキ以外の誰にも伝わることはなかった。

あれれ?

トワから見た儀式の結果報告になるはずだったんですが・・・・・・あれれ?(大事なのでry


ミクの演奏を聞いてのトワの感想は次話で!(結果報告はどこに行った)

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