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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第7章 塔の仲間と交流しよう
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7話 フローリア

 考助としては、王子という立場より娘の方が大事という王族がいていいのか、という感覚を持ったのだが、そこを聞くとあっさりとアレクは首を縦に振った。

「構わないんだよ。というより、むしろ私が継承権を捨てると公表した方が、政治的に意味が大きい」

 それほどに加護持ちの人間が王族にいるというのは、周囲に多大な影響を及ぼすのだ。

「誰も止めないよ、というよりむしろ勧めてくる者がいるくらいだ」

 現王には三人の息子がいるが、全員が健在で、しかも第一王子と第二王子には既に男子も生まれている。

 第三王子のアレクには娘一人しかいないが、それが逆にアレクが継承権を捨てても何も問題が無いことを示していた。

 勿論今までの立場やらしがらみがあったりするのだが、それも塔に引きこもってしまえば、ほとんど関係なくなるというのが、アレクの弁だった。

 そもそもセントラル大陸自体が、他大陸の国家からすれば、表向きは不干渉の立場を取っている。

 だからこそアレクは、塔で代官募集をしているという話を聞いたときに、わざわざ身分を隠して直接確認しに来たのだ。

 結果は予想以上、というより予想外だった、と言って楽しそうに笑っていた。

「まさか、娘以外の加護持ちがいるとは思わなかったよ。いや、むしろだからこそ、難攻不落の塔を攻略できたのかな?」

「いや、それは違います。少なくとも僕は加護は持っていませんよ? 塔を攻略した時のメンバーにもいませんでした」

「・・・・・・それはそれで驚きなんだが・・・?」

「さすがに、それ以上は部外者には話せませんよ」

 考助の拒絶にアレクは、フッと笑った。

「それはそうだ。今の私は、まだ部外者だからな」

「あー・・・。やっぱり来る気満々ですか?」

「当然だ。今の私にとって、ここ以上に好条件な場所は思いつかない」

 きっぱりと断言したアレクを見て、考助はため息を吐いてワーヒドの方を見た。

 考助の視線を受けて、ワーヒドは頷いた。

「そうですか・・・それでは、新たに条件を出させてもらいます。それが良ければ、貴方を代官として雇うということでいいでしょうか?」

「そうだな。それがいいだろう」

 今のアレクの立場が立場だけに、すんなり即雇用とはいかない。

 そのために、細かく条件を詰めることにしたのである。

 結果、色々と細部にわたって調整が行われ、晴れてアレクは代官として雇われることになるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 まずはきっちり継承権の放棄を公表すること。

 ついでに、塔に来るのは構わないが、どこへ身を寄せることにしたかは公表しないこと(これはアレクからの提案だった)。

 必要な部下は連れてきてもいいが、数人にすること。

 当然ながらその者達もフロレス王国との繋がりは、完全に断つこと。

 等々・・・。

 

 色々話し合いをして条件を定めた後に、アレクはコウヒに連れられてフロレス王国へと向かった。

 コウヒを連れて行ったのは、移動時間短縮のためである。

 以前のサキュバス一族の時と同じように、何度か転移を繰り返して目的地に近づいて、帰りは一気に遠距離転移で返ってくる方法を取ることにした。

 そして一週間後。アレクは、コウヒと数人の部下、さらに一人の少女を連れて塔へと戻ってきた。

 部下は当然というか、家族連れで来ていた。

 もうフロレス王国に戻れるとは思わないように、と釘を刺さしてきたとアレクが言っていた。

 ちなみに、後で考助はコウヒに聞いたが、実際はもっと希望する者がいたそうである。

 とは言え、流石にそこまでの大人数を連れて来るわけにはいかないと、アレクが今のメンバーに絞ったとのことだった。

 

 そして、アレクの本来の目的である自身の娘も連れてきていた。

 アレクの娘は、フローリア・ドリアと名乗って頭を下げた。

「フローリア・ドリアと言う。これからよろしく頼む」

 そう言って後、フローリアはジッと考助を見つめて来た。

「な・・・何?」

「いや、何。塔を攻略したというわりには、全く強そうには見えないな」

「ハハハ。それはそうだよ。僕は、ほとんど戦闘はしていないからね。コウヒの後について行っただけ」

 考助はそう言って肩をすくめる。

「なんだ。見た目通りの軟弱者か」

 フローリアはあからさまに落胆して見せたが、考助は特に気にした様子を見せなかった。

 実際に見た目だけであれば、そういう風に見えてもおかしくないだろうと思っている。

 だが、この場にいた約一名が、フローリアのその言葉を許さずに、行動に移した。

「・・・なっ!? 何をする?」

 気が付いたときには、コウヒがフローリアの首元に剣を突き付けていたのである。

 その場にいた誰も動くことが出来ない程の早業だった。

「貴方の腰に下げている剣は、ただの飾りなのですか?」

「・・・・・・何?」

「この程度の動きにも付いてこれない軟弱者のあなたが、主様に対してよくもそのような大口をたたきましたね?」

 フローリアの言葉を逆手にとって、逆に挑発するコウヒ。

「・・・・・・なっ!?」

 剣を突き付けられながらもフローリアは、コウヒを睨み付ける。

 一触即発の状態の二人に、アレクが間に入った。

「リア、よさんか!」

「・・・しかし!」

 抗議する娘を無視して、アレクはコウヒに対して頭を下げた。

「コウヒ殿、申し訳ない。後でリアにはきつく言っておく」

「・・・・・・次は、ありませんよ?」

「・・・ああ、わかっている」

 一言断ってから剣を下げたコウヒに、アレクは頷いた。

 一方、フローリアの方はというと、相変わらずコウヒを睨んでいたが、それ以上何かをしようとはしなかった。

 父であるアレクの態度を見て、何か思う所があったのか、あるいは別の理由があるのかまでは考助には分からなかった。

 その考助に対してもアレクは頭を下げて来た。

「コウスケ殿も済まなかった」

「ああ、いえいえ。僕が軟弱者に見えるのは、自覚してますから」

 そういって笑った考助だったが、アレクは左右に首を振った。

「だが、コウスケ殿がこの塔を管理しているのは事実だ。・・・娘には、見た目だけで判断するなと昔から言い聞かせているのだが・・・」

 そう言って苦笑しながらアレクは、フローリアの方を見た。

 父親に見られた娘であるフローリアは、プイと横を見てしまった。

 中々に気が強そうな姫君だが、父親には弱いらしいことが、その雰囲気でわかった考助であった。

 フローリアのステータスもこっそり確認してみたが、<星神の加護>の称号も持っていた。

 一国の姫君にしては、高い剣技スキルも持っていたが、残念ながらというか、当然ながらコウヒには足元にも及ばない。

 というよりも比べるのが間違っているのだが。

 

 ドリア親娘(美人な奥さんもついてきていた)とその部下たち家族は、それぞれの住まいがもう決まっている。

 とりあえずこの場は解散、ということになって住まいの方へと向かって行った。

 本格的な業務開始は、数日たってから、と決めていた。

 それまでは、家具やら生活用品をそろえたりする時間、となっている。

 アレクとその部下が来たことで、ようやく第五層の村以上町未満にも正式な行政機関が出来ることになるのであった。

ガゼランの時と比べて、考助の対応がずいぶん違くね? と思った方、鋭い!

え? 普通に気付く? (スイマセンスイマセン)


・・・どうでもいい寸劇はともかくとして、きちんと理由が存在します。

こう書くとフラグっぽいですが、大した理由ではありません(ォィ)。その辺の話は後々語られますので、それまでお待ちください。


2014/6/19 誤字訂正

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