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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
終章 神の領域(神域)
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(5)神の力

 セントラル大陸の各地に降臨した神々だが、考助が儀式を行った島にも神が降臨していた。

「・・・・・・随分と派手な登場だね」

 この時点で、考助は各地に神々が降臨して神託をしていることに気付いていた。

 多少呆れたような表情になってそう言った考助に、三大神の一柱であるジャルが笑いながら答えた。

「なにを言っているのよ。こんな派手なことをやらかしておいて」

 自分たちの降臨など、考助が行った儀式に比べれば大したことではないと言ったジャルに、隣にいたスピカが頷きながら追随する。

「前代未聞」

「うっ」

 そう言われると、考助としてはなにも言い返せなくなる。

 大陸全体を聖域化してしまうことなどいままで一度もなかったのだから、否定のしようがない。

 

 言葉に詰まった考助に、エリスがクスリと笑みをこぼした。

「別に責めているわけではありませんよ。それに、我々が降臨したのにもきちんと意味がありますから」

「あ~。なるほど」

 エリスの言葉に、例の女神たちの事情のことを思い浮かべて、考助は納得の表情になった。

 女神たちはこれ幸いとばかりに、アースガルドとのつながりを求めて降臨したのがわかったのだ。

 そんなことをこの場で口にするほど考助も迂闊ではない。

「それはともかく、人々になにか伝えておくことはありますか?」

「ん~? いや、別にないよ。必要があれば、トワかココロを通じて発信すればいいし」

 軽く言った考助の言葉に、エリスが一瞬だけ間をあけてから答える。

「・・・・・・それで大丈夫でしょうか?」

「さあ? どちらにせよ神託には変わりがないからね。ゆがめて伝えた場合にどうなるか、この世界の人であれば、良くわかっているんじゃない?」

 主に神殿の人間が、ときに自分の組織にとって都合のいいように解釈して神託を伝えることをわかったうえでの言葉だ。

 考助にしてみれば、そんな歪んだ信仰まで受け入れるつもりはないと、いまの言葉で言外に伝えている。

「そうですか。まあ、その辺は考助様にお任せします」

 エリスもそのことを察して、そう答えるだけにとどめておいた。

 

 それから二言三言挨拶程度の会話をすると、エリスが考助以外の者たちへと視線を向けて言った。

「これで、セントラル大陸全域は考助様の神域となりました。それをどう受け止めて使っていくかは、その大地に住まうあなたたちの役目です。わかっていますね、トワ」

「・・・・・・ハッ!」

 エリスから直接名指しされたトワは、最上位の礼をしながら、一言だけを返した。

 それを見て満足げに頷いたエリスは、再度考助へと視線を向けた。

「それでは、私たちはこれで去ります。考助様、神域でお待ちしていますよ」

「じゃあ、また」

「それじゃあね~」

 エリスのあとに、スピカ、ジャルと続けてそう言うと、次の瞬間には三柱の神々は姿を消していた。

 それを確認した(考助、コウヒ、ミツキを除く)一同は、ホッと安堵のため息をつくのであった。

 

 

 自分とのあからさまな態度の違いを見せた一同に、考助はからかうようにしてトワへと視線を向けた。

「同じ神のはずなのに、随分と態度が違うんだね」

 そう言われたトワは、なんと答えるべきかと一瞬だけ考えて、すぐに言うべき台詞を思いついた。

「必要であれば、同様の敬意をお示しいたします。現人神」

「あ、やっぱごめん。それはなしで」

 多少芝居がかったトワの言葉だったが、考助はすぐに眉をひそめて右手を左右に振った。

 赤の他人からでもむず痒くなってくるのに、実の息子から神として扱われると変な気分になってくる。

 いつまで経っても他人からむやみに敬意を示されることに慣れない考助なのである。

 

 そんな考助を見て小さく笑ったトワは、視線をシルヴィアへと向けた。

「ひとつ質問いいでしょうか?」

「なんでしょう?」

「同じ神であるはずなのに、現人神と降臨していた神々とでは受ける威圧が違うのはなぜですか?」

 トワのその問いかけに、ラゼクアマミヤの他の面々が聞き耳を立てるのがシルヴィアにもわかった。

 いまトワが行った質問は、皆が同じように疑問に思っていたのだ。

「それは簡単な話です。トワ国王」

 一応、家族だけではなく他の視線もあるので、シルヴィアは王であるトワに対する態度をいつもとは変えて接している。

「というと?」

「現人神はこの世界に存在するために人としての肉を持っていますが、降臨している神々はそれを持ちません。持つ力を抑え込む器を持っているか、持っていないかの違いなのです」

 簡単にいってしまえば、鞘に収まっている刀と抜き身のままの刀の違いと同じだ。

 抜き身の刀は直接の攻撃の力の印象を人々に与えるが、鞘に収まっている刀はそうではない。

 刀を見れば、鞘に収まっていても切るための道具だということはわかるが、両者を見比べれば受ける印象は段違いなのだ。

 考助の場合は、人としての肉体を持っているからこそ、感じ取る神威の威圧が段違いに抑えられているのである。

 

 納得の表情になったトワだったが、はたと表情を変えて真面目なものになる。

「・・・・・・ということは、父上が肉体を失えば・・・・・・?」

「失ったときの状況によるでしょうけれど、良くて神威の威圧で一都市分くらいの人を失われるか、下手をすれば暴走してしまうでしょう」

 現状、考助が肉体を失うということは、不意打ちを受けて回復できないほどのダメージを負ったときくらいしかありえない。

 それを考えれば、いまシルヴィアが話したことは、別に大げさなことではないのだ。

 そのことを理解したトワは、大真面目な顔で頷いた。

「なるほど。よくわかりました」

 シルヴィアのこれまでの説明を聞いたトワは、いま一度現人神に関する周知徹底を行おうと決心するのであった。

 

 

 トワが密やかな決心をしている一方で、考助はといえば、シュレインたちとのんびりと会話をしていた。

「これで終わりかの?」

「うん。これで終わり。お疲れ様」

 いままでの旅の苦労も含めての考助の言葉だったが、言われたシュレインは首を左右に振った。

「いや、確かに旅を続けて疲れたというのもあるがの。それ以上に楽しかったぞ?」

「そうだな。まさか子供たちが参戦してくるとは思っていなかったからな」

 これまでの旅を思い返して、フローリアも笑いながらそう言ってきた。

 子供たちが、あんなに長期間旅に加わることは考助も予想していなかった。

 子供たちがいなければ旅が味気なかったものになっていたというつもりはないが、少なくともあそこまで賑やかなものにはなっていなかったはずだ。

 そういう意味では、子供たちの旅の参戦は、考助たちの旅にいい刺激を与えてくれたといえるだろう。

 

 旅を始めたときからいままでの思い出を振り返っていたシュレインは、同じような顔になっていた考助とフローリアに向かって苦笑した。

「いかんの。感傷に浸るにはまだ早い。旅はまだ終わったというわけではないのじゃからな」

 いまはまだ儀式が終わったというだけで、アマミヤの塔の管理層に戻ることが旅の終着点だ。

 あとは船で送ってもらって転移門で帰るだけなので、考助たちがすることはほとんどないのだが、それでも旅の一部であることには違いない。

「それもそうだね」

「うむ。同感だ」

 シュレインの言葉に、考助とフローリアが同意した。

 最後の最後でこれまでの旅にケチを付くようなことが起こらないように、気を引き締めて行こうと決意する考助であった。

エリスたちもきちんと降臨していました。

あとは塔の管理層に戻って旅の終わりとなります。

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