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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 西~北方面
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(8)転ばぬ先の杖

 例の場所での経過観察はコレットたちに任せることにして、考助たちは予定通り先に進むことになった。

 ただし、コレットが抱いた疑念があるため、野営する予定になっている場所で、さらに森が近くにあるもしくは、街道が森の中を通っているところを狙って、同じようなことが起こっていないかを確認することになったのだ。

 コレットに話を聞いた翌日は、残念ながらもともと村に泊まる予定になっていたのだが、その次の日は森の中で野営をすることになっているので、タイミング的にもちょうどいい。

 そのころには、コレットのいる場所でもなにか変化が起こっている可能性もあるので、まずは翌々日まで様子を見ようということで、考助とコレットは話を終えた。

 精霊たちの変化が、考助の行っている儀式のせいなのかはまだ確定していないが、コレットはすでに確信しているようだ。

 ついでに、コレットの話を終えたあとに、考助は他の面々に同じことを話したのだが、揃って全員(子供たちは除く)が「あ~」と言いたげな顔になっていた。

 一応考助としても「まだわからない」と言っておいたのだが、どうにも説得力がないように感じたので、それ以上の反論はやめておいた。

 一度の確認ではわからないが、ほかに幾つか森を見て回ればわかるだろうと考えることにしたのである。

 

 そして、コレットと神力念話で会話をした翌々日。

 予定通り森の中で野営をすることになった考助たちは、精霊たちの様子を確認する。

 といっても、精霊の様子が確認できるのはセイヤとシアなので、以前と同じくシュレインとシルヴィアが付き添いで薪拾いついでに確認を行くことになった。

 そして、考助たちが夜食の準備をしながら待つことしばし。

 子供たちが戻って来る時間が少しだけ遅かったが、それは森の少し奥まで確認しに行っていたためだ。

 なぜ奥まで見に行ったかといえば、同じような現象が見られなかったためである。

「・・・・・・と、いうことは、その辺にある普通の森と状況は変わらなかったということだね」

「うむ。そういうことじゃの。・・・・・・納得はできんが」

「そうですよね。おかしいですよね」

「ちょっと。ふたりともひどくない?」

 まるで完全に自分が原因だと言いたげに頷き合うシュレインとシルヴィアに、考助は顔を引きつらせながらそう応じた。

 もっとも、考助自身も少しは自分が原因だと考えていたので、それ以上は強く反論できない。

 

 わざとらしく怒りの表情になった考助にたいして、ふたりはついと視線を逸らした。

 それを笑って見ていたフローリアが、口を挟んでくる。

「まあ、他にも条件が重なって起こっている可能性もあるしな。ここで起きていないからといって、他でも起きないということはないだろう?」

「ぐぐっ・・・・・・」

 フローリアの鋭い突っ込みに、考助は渋い顔になって呻いた。

 この辺りのそれぞれの反応は、考助自身の普段の行いが関係しているので、お互いに慣れたものである。

 

 それはともかくとして、と前置きしてから、フローリアが続けた。

「とりあえずこの先はどうするんだ? また前みたいに待つのか?」

「いいや。一晩ここに泊まって、なにも変化が無かったら予定通り進むよ。なにかあったとしても、コレットがいないと意味がないからね。要連絡、かな?」

 森と精霊になにか変化があったとしても、いまここにいるメンバーでは、簡単な推測すらできない。

 勿論、適当な想像はすることができるが、基礎知識がほとんどないために、あくまでも想像の域を出ない。

 推測するには、ある程度の根拠があって初めて出来ることなのである。

「まあ、それが一番無難だろうな」

 考助の言葉に、フローリアも頷きながら同意する。

 同じように傍で話を聞いていたシュレインとシルヴィアも同意見のようで、特に反論は出てこなかった。

 

 ちなみに、ピーチは話し合いに参加をしておらず、薪拾いを終えて戻ってきたセイヤとシアの面倒を見ている。

 当然のようにミクの様子も見ているのだが、彼女はそもそもストリープを弾いているため、ほとんど動くことが無いので手間はかからないのだ。

 そういう意味では、興味の赴くままにあちこちに手を出そうとするセイヤとシアの方が手間がかかるといえる。

 とはいえ、すでに三人とも旅に慣れているので、普通の子供よりもはるかに手がかからないようにはなっていた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 一方そのころ。

 同じ場所で調査を続けたコレットもまた、他の面々と話をしていた。

「うーん。駄目ね。今日も変化なし」

 コレットのその言葉に、他の者たちは様々な反応を見せた。

「これ以上、ここにとどまっている必要はあるのか? いまの精霊の状態は、特に悪いわけではないんだよな?」

 パーティを代表してそう言ったリクに、コレットはため息をついた。

 精霊たちが、初めて見つけたときのように警戒色を出していたならば、そんな意見は出てきたりしなかっただろうが、いまの精霊はむしろとてもいい状態なのだ。

 これ以上同じ場所にいて調査を続けても意味がないという話が出てくるのは、むしろ当然なのだ。

 

 ある意味、当たり前といえば当たり前のリクの言葉に、コレットは考え込むような顔になった。

 コレットとしてもこれ以上ここにいても仕方ないという考えはあるのだ。

 少しでも精霊たちに変化があったなら即座に拒否はできたのだが、いまの状態でまったく変化がないとなると、居続ける意味がない。

 悩むコレットだったが、結論を出す前に考助からの神力念話が飛んできた。

 コレットにしてみれば、ちょうどいいタイミングだったので、周りに断りを入れてから考助とお互いの状況を話し合うことになった。

 

 

 コウヒも交えての話し合いの結果、コレットたちはこの場所を引き上げることになった。

 一応、一晩泊まってから翌朝様子を見に行って、変化が無ければという条件は付いているが、いまの感じでは大きな変化があるとは考えづらい。

 途中で交代しながらコウヒが話に混ざったのは、考助たちの移動の最中になにか変化があれば、いまコレットたちがいる場所に戻ってこれるようにするためである。

 目印さえつけておけば転移自体は問題ないので、コウヒとコレットは考助たちに合流することになった。

 勿論、ほかのメンバーは、コウヒの転移で西の街に戻ることになる。

 精霊が最初に変化を示していたのが警戒色だったので、ある程度人数をそろえたのだが、結果的には必要なかったということになってしまった。

 もっとも、予想外の対処をするために人数を揃えるのは重要なことなので、誰も無駄だったとは考えていないのは、それぞれが高ランク冒険者である証拠だった。

 

 考助との話し合いを終えたコレットは、早速他の面々に今後の予定を伝えた。

「・・・・・・となると、明日次第ということだな」

「そういうことね。ただ、いままでの感じからして、明日いきなり急変するとは思えないけれど」

 精霊たちが警戒色を出してから翌朝にはまったく姿が見えなくなって、その日の夕方には神域並みに精霊が増えていたことを考えれば急変もあり得なくはないのだが、ここ数日の様子を見ている限りでは急変の可能性は限りなく低いとコレットは考えている。

 同じことを考えていたのか、セシルやアリサも同意するように頷いていた。

 結局、ふたりは呼ばれた意味がほとんどないような状態になってしまったが、それに関しては特に不満は無いようだった。

 そもそも考助に呼ばれて来ているので、セシルとアリサが不満を漏らすことはほぼあり得ない。

 ふたりが考助と出会ったときから感謝を抱き続けているのは、ずっと変わらないことなのである。

というわけで、結果としては無駄になってしまったコレットたちの調査でした。

勿論、コウヒがいつでも転移で来れるようにしてあるので、今後もちょくちょく様子は見に来る予定です。

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