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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 西~北方面
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(6)応援

 翌朝。

 考助たちが朝食の準備をしている間に、コレットとシュレインが例の場所へ確認しに行った。

「・・・・・・どういうこと?」

 現場に着いたコレットが一言、そう呟いた。

「何かあったかの?」

 コレットほどに精霊を確認できないシュレインが、そう確認してきた。

 コレットは、ちらりとだけシュレインに視線を向けてから再び周囲を見渡した。

「いえ。なにもないわ」

「なんじゃと?」

 コレットが言っている意味がわからずに、シュレインが首を傾げた。

「なにもないのよ。精霊が警戒色を出しているだけじゃなくて、あれほどいた精霊がきれいさっぱりいなくなっているわ」

「なに!?」

 かなり驚いた顔になってシュレインがコレットを見た。

 

 ふたりがいまいる場所は、冒険者の足で考えれば街道から近い比較的森の浅い場所といえる。

 それでも森の中であることは間違いなく、精霊がまったくいないというのは考えられないのである。

「いくら双子の能力が優れているとはいえ、それなりの数はいたのじゃろう?」

 精霊が警戒色を発しているとなれば、少数の精霊がいたとは考えづらい。

 そう考えてのシュレインの問いかけに、コレットが頷いた。

「ええ、勿論よ。単体ではなくて、きちんと複数でまとまっていたわ」

 精霊が警戒色を出すということは、なにかに反応してのことだ。

 力の強い精霊ならともかく、通常モードのコレットで見ることができないほどの精霊だと、集団になって警戒色を発するのが普通なのだ。

 昨日確認したときも、その常識に違わず多くの精霊が集まっていた。

 だが、いまはその精霊たちがきれいさっぱりといなくなっているのだ。

 

 その事実にシュレインが険しい顔になった。

「・・・・・・異常事態、かの?」

「間違いなくね」

 確認するようなシュレインの問いかけに、コレットもまじめな顔で同意した。

 少なくともコレットの常識では、このような事態は普通ではないということになっている。

「このあとの予定のこともあるから、早めに戻って相談かの?」

「そうね。そのほうがいいわ」

 シュレインの言葉に、コレットは同意して頷きながら踵を返して考助たちのいる場所へと歩き始めるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「・・・・・・なるほど。どう考えてもやばい感じだね」

 コレットから報告を受けた考助は、渋面になりながら腕を組んだ。

 このまま放置しておくには問題が大きくなりそうだが、儀式のことを考えればここに居続けることはできない。

 あと一晩程度なら大丈夫だが、それ以上となると厳しくなってくる。

 どうするべきか悩む考助を見たシルヴィアが、コレットに視線を向けた。

「どれくらい待てば大丈夫ですか?」

「正直わからないわね。半日待ってからあの場所に精霊たちが戻ったとしても、それが以前からいたものとは限らないから」

 その当たり前すぎる説明に、シルヴィアは納得の顔になった。

 

 力が弱い精霊は、一体一体に特徴があるわけではない。

 もしかしたら、精霊同士には見分けがついているのかもしれないが、普通の人が見分けるのは不可能である。

 当然、いなくなっていた精霊たちが戻ってきたとしても、コレットはそれがもともとあの場所にいた精霊なのかはわからないのだ。

 本当であれば、数日間この場所にいて経過を観察したいというのがコレットの本音だった。

 それがわかっているからこそ、考助を含めて大人たちは渋面になっているのだ。

「・・・・・・仕方ない。ずっとここにいられない以上、助っ人を呼ぼうか」

 考助が決断してそういうと、他の面々も諦めたような顔になった。

 誰かに頼むというのは、自分たちが放り投げることに他ならないのでできれば取りたくはない手段だ。

 だが、今回はどうしようもないことはわかり切っている。

 

 頭を切り替えたフローリアが考助を見て問いかけた。

「それで? 誰に頼むのだ?」

「うーん。ことは精霊に絡むことだからなあ。セシルとアリサくらいしか思い当たりがないね」

 考助自身が信用ができて、コレット以外に精霊のことに詳しい人となると今あげたふたりしかいない。

 あとは、それこそクラウンに依頼として調査依頼を上げることしかできない。

 ただし、それは考助以外の面々も同じだったようで、それしかないという雰囲気になっていた。

「とすれば、どうする? 考助が呼びに行くわけにもいくまい?」

 セシルとアリサは恐らく百合之神社にいるだろうが、儀式の最中である考助は、塔にはいけない。

 他の誰かが呼びに行くしかないが、簡単に行って帰ってこれるほどの距離ではないので、転移魔法が使える者が行くしかない。

 女性陣の中で転移魔法が使えるのは、コウヒとミツキは当然として、他にはシュレインとシルヴィアくらいだ。

 

 最初からコウヒとミツキのことを考えてなかったシュレインとシルヴィアが顔を見合わせた。

 どちらが行こうかと探りをかけたのだ。

 ところが、その配慮は無駄になった。

「コウヒ、頼める?」

 シュレインとシルヴィアが顔を見合わせるとほぼ同時に、考助がそう言ったのだ。

 勿論、考助に頼まれれば、コウヒに否という返事はあり得ない。

「はい」

 そうコウヒが返事をすると、シルヴィアが驚いた顔になって考助を見た。

「いいのですか?」

「うん。ついでだから、リクのパーティにも声をかけてきてほしいんだ。勿論、捕まえられれば、だけれどね」

 連れて行く人数が多くなればなるほど転移魔法の難度は上がっていく。

 シュレインとシルヴィアは、セシルとアリサ、それにリクのパーティ全員を連れてこれるだけの力はあるが、そのあとのことを考えればコウヒのほうがいい。

 そう考えての考助の言葉に、シルヴィアが納得の表情になった。

 

 誰が呼びに行くかが決まればあとははやい。

「では行ってまいります」

 野営地にいる全員に見送られる形で、コウヒがその場から姿を消した。

 考助をこの場にくぎ付けにするわけにはいかないので、早速転移魔法を使って西の街に飛んだのだ。

 あとは転移門を使ってアマミヤの塔に行き、それぞれのメンバーを連れてくることになる。

 すぐに捕まえられるかどうかはわからないが、半日かけても駄目な場合は一度戻ってくるように言ってある。

 そのときにはまた違った結果が出ている可能性もあるので、別の方針を考えることになっているのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 幸いにしてセシルとアリサ、そしてリクのパーティはすぐにつかまったようで、コウヒは半日もかからずに全員を連れて戻ってきた。

 セシルとアリサはともかく、リクたちはたまたま依頼を終えて休暇を取っていたようで、他の予定も入っていなかった。

「それで、有無を言わさず連れてこられたんだが、用事はなんだ?」

 コウヒに無理やり連れてこられたせいか、多少不機嫌な様子でリクが考助にそう聞いてきた。

 コウヒはとにかく考助が呼んでいるという一点張りで、道中ろくに説明もしてこなかったのだ。

 コウヒらしいなと内心でそう感想を持った考助は、説明するのは自分の役割だろうと、リクたちに説明を始めた。

 

 話を聞けばそこは一流の冒険者たちだ。

 なにかおかしなことが起こっているということは理解できたようで、まじめな顔で聞き入っていた。

「・・・・・・つまりは、俺たちは何日かここに残って様子を見ればいいんだな?」

「まあ、端的に言えばそういうことだね」

 頷く考助に、リクも含めたパーティメンバーが納得の顔になった。

 事情を聞けば、いささか乱暴に連れてこられた理由も理解できる。

 いまのところは緊急事態というわけではないのだが、おかしな事態になっていることは間違いない。

 きちんと報酬も支払われるとなれば、冒険者として活動することにも否やはないのである。

リクたちに応援を頼みました。

次話からは、二部隊に分かれて行動することになります。

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