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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 西~北方面
902/1358

(2)黒幕登場?

 まさしく一触即発といった状態となっているその場所に、新たな人物が複数加わってきた。

「なんだ? 随分と物々しい雰囲気になっているな」

 そんなことを言いながら来たのは、余裕の表情を浮かべたフローリアだった。

 新たな女性の登場に、代表らしき男は再びうろん気な顔になる。

「其方こそ何者だ? 関係ない者は、余計な口を挟むな!」

「いや、関係ないと言われてもな。私は思いっきり関係者なのだが?」

 フローリアがそう言うと、代表の男は呆れたような視線を考助へと向けた。

「・・・・・・其方のか。やはり其方は身分相応という言葉の意味をしっかりと学んだほうがよさそうだな」

 そう言ってきた代表の男に、考助が何かを言おうとする前に、フローリアが楽しそうな表情を浮かべた。

「ほうほう、なるほど。身分相応か。その言葉、そっくりそのままお主に返してもよいか?」

「なんだと?」

 眉をひそめて聞き返してきた男に、フローリアはわざとらしく肩をすくめて続けた。

「外交使節団の本隊の取りまとめをしているのならともかく、まさか分隊の取りまとめ程度で身分が高いとでも言うつもりか?」

「き、貴様!」

 フローリアの言葉に、男は顔を真っ赤にして怒りの形相を浮かべた。

 

 いまフローリアが言ったことは、まさしく事実だった。

 国外の外交使節団は、基本的に多くの者を連れて移動する。

 そのため、ラゼクアマミヤでは、使節団の者たちが泊まるための宿をランク分けして分散させているのである。

 そのランク分けとは、使節団が所属している国力の差というのもあるのだが、今回の場合はそうではない。

 大抵国力の高い国ほど、多くの人員を連れて使節団として来ることになるのだが、ラゼクアマミヤには年間を通して世界中から使節団がやってくる。


 転移門という特殊な事情もあるために、他の大陸にある国家と違って、多くの使節団がラゼクアマミヤ国内に滞在することになるのだ。

 そのすべての人員を第五層の街にある宿泊施設で賄うことには無理があるため、それぞれの大陸に近い街の宿泊施設に分けるのだ。

 それには宿泊施設の分散という目的もあるのだが、使節団を分けて別の街に泊めることで、その街にお金を落とさせるという意味もある。

 もちろんこれらはラゼクアマミヤ側の事情であり、他国にはない対応方法のため、当初は各国から反発があった。

 その反発を押し切って今のシステムを作ったのは、フローリア本人なのだ。

 当然、西の街の宿に国外の者たちが泊まっているという意味は、十分に理解している。

 

 フローリアの言葉に一時だけ激高した男だったが、すぐに立ち直って観察するような視線をフローリアへと向けた。

「・・・・・・其方、私を怒らせてどうするつもりだ?」

「おや。あそこから冷静になれるだけの頭はあるのか。もう少しだけ猪突猛進だったら良かったのだが」

 フローリアは男の問いかけには答えず、そんなことを言いながら肩をすくめた。

 それを見た男は、僅かに警戒するような表情を始めて浮かべた。

「時間稼ぎ・・・・・・か? しかし、なんのために?」

「その答えを私が言うと思うか?」

 すぐに自分の目的を導き出した男に、それでもフローリアは余裕の態度を崩さずに、フッと笑みを浮かべる。

 

 そのフローリアの顔を見た男は、一度大きく深呼吸をしてからチロリと考助たちへと視線を向けた。

「・・・・・・なるほど。いままでの会話はすべて時間稼ぎを狙ったものか」

「ほうほう。それで? それがわかったからといって、其方に何ができる?」

 本当の狙いもわからないのに、それを阻止することができるのかと問うフローリアに、男は余裕の笑みを浮かべた。

「簡単なことだ。そなたたちが狙っている時間が来る前に、決着をつければいいだけだろう」

 そう言いながら、男は自分の周囲にいた他の者たちに視線を向けた。

 それを受けて、その者たちはついに剣を抜いて考助たちへと向けて来た。

 だが、それを確認した考助たちは、苦笑したり首を左右に振ったりしているだけで、まったく焦りは浮かべていない。

「なるほど。確かにそれはひとつの手段だろうが、一番の悪手だぞ?」

 フローリアはそう言うと、考助が自分の斜め後ろに立っていたミツキを振り向いた。

 そして、それを見たミツキは、小さく笑ってからコクリと頷いて動き出した。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 その光景に代表の男は、自分の目が信じられずに呆然とした様子で呟いた。

「ば・・・・・・馬鹿な・・・・・・」

 自分の口から洩れた言葉であることも理解していないだろう。

 それほどまでに衝撃を受けていることはわかったが、その男の態度を咎めたり嘲ったりするような者は人だかりの中にもいなかった。

 男と同じようにミツキがやったことに驚いていたのだ。

 なにしろ、いかにも職業軍人といった者たちを、たったひとりの美人が数分もかけずに、無力化してしまったのだ。

 その光景を見た自分の目を疑うのは、常識の範囲で考えれば当然のことだった。

 

 呆然とした顔のまま立ち尽くす男に向かって、フローリアがニヤリとした表情を向けた。

「残念だったな。頼みの綱は無駄に終わったようだぞ? ・・・・・・それに、もう時間切れだ」

 フローリアがそう言うのとほぼ同時に、人だかりの外側から大きな声が聞こえて来た。

「この場に集まっている者は、当事者以外は全員解散!」

 その声の持ち主に、全員の視線が集まった。

 そして、その者が着ている服を見て、最後まで騒ぎを見届けられないと悟って無念そうにため息をつくものまで出ていた。

 それでもその指示に従って、集まった者たちはそれぞれのいるべき場所に散り始めた。

 新しくその場に現れたのは、ラゼクアマミヤの討伐軍の隊員だったのである。

 街に住む者たちは、討伐軍に逆らうことの愚かさを身に染みてわかっている。

 なにしろ、街道が比較的安全に通れるようになったのは、討伐軍のおかげなのだ。

 

 集まっていた野次馬が次々に去っていくのを見ていた代表の男は、ニヤリとした表情を浮かべた。

「おい、其方。なにをしておるか。そこにおる無礼者たちも片付けないか」

 図々しくも考助たちさえもこの場所から離れさせようとしたのだったが、男にとっては残念ながらそう都合よくはことが運ばなかった。

 先ほどの隊員の声よりもさらに大きな声があたりに響いたのだ。

「お前は何を馬鹿なことを言っているのだ!」

 その声に、代表の男はぎょっとしたような顔になり、その声がした方へと視線を向けた。

 

 男につられて視線を向けた考助は、そこに十人ほどの集団がいることに気付いた。

 全員がセントラル大陸では着ない服を着ていることから、国外の人間だということは理解できた。

 なによりも、男の態度を見れば彼が知っている者、それも身分が上の者がいるということは、すぐにわかった。

「デュドネ様!」

 代表の男が、集団の中心にいる男に向かってそう呼びかけた。

 だが、デュドネと呼ばれた二十歳くらいの男は、そちらには視線を向けもせずに、考助たちに向かって頭を下げた。

「このたびは、私の部下が愚かなことをしでかしてしまい、お詫び申し上げます」

「なっ!?」

 デュドネの言葉と態度に、代表の男は目を剥いて驚いていた。

 いままで自分が見下していた相手に、自分よりもはるかに身分が上の上司が頭を下げるのを見れば、そうなるのも当然だろう。

 そんな男を無視する形で、デュドネはさらに考助たちに向かって続けた。

「ここでは目立ちます故、話は中ででもよろしいでしょうか?」

 宿を見ながらそう言ってきたデュドネに、フローリアは一度考助に視線を向けてから頷いた。

「まあ、よかろう」

 フローリアの返事を聞いて、あからさまにホッとした表情になったデュドネは、引き連れて来た者たちに視線を向けただけで、あとは段取り通りと言わんばかりに頷くのであった。

す、すいませんでした。

予定は未定でした。

二話で終わりませんでした><

当初の予定では、デュドネがバカ息子として登場する予定だったのですが、それじゃああまりにテンプレすぎて面白くないので、急遽変えました。

お陰で二話では終わらなく><

次こそ終わるはずです。

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