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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 塔に向かおう
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(7)初めての町

よろしくお願いします。

 考助がシュミットに出したブラックベアーの毛皮五枚は、鑑定により全部で大金貨十枚の値段になった。

 シュミットは、最初にもっと上の見積もりを出したのだが、考助がそれ以上を断ったのだ。

 その代わり、毛皮の出所を公言しないことを条件に出した。

 もちろんゴゼンにも同じように言ってある。ゴゼンへの口止め料は、シュミットが払っている。

 最初、ゴゼンはそんなものはいらないと言っていたが、半ば無理やり渡すことになった。

 考助もこの二人が大っぴらに広めることはないと思っているが、後々このことで迷惑をかけそうな気がするので、と言うと二人とも納得した。

 さすがに行商中のシュミットは、手元に大金貨十枚も出せるほど持っていないとのことで、現金の支払いは街についてからということになった。

 ついでにシュミットがいつも利用している宿まで行って、そこでの支払いになっている。

 とりあえず、最初の毛皮一枚分の大金貨二枚はもらってある。ちなみに、街の店で大金貨を出されてもお釣りが出せるところは少ないとのことなので、大金貨一枚分はバラで貰った。


 そんなことを諸々打合せしているうちに、リュウセンの街の門が近づいてきた。

 身分証のない考助たち三人は、街に入るのに金銭が必要になるが、その辺の経費はシュミットが毛皮代の中に含めてくれている。

 そういうわけで、街に入る際に門のところで多少の質疑応答はあったものの特に問題なくリュウセンの街へ入ることができた。

 街へ入った馬車は、そのまま真直ぐ本日泊まる宿へ向かった。

 ゴゼン達護衛組も同じ宿に泊まることになっている。契約はこの街までの護衛だが、宿に着くまでが契約内容らしい。

 リュウセンの街に入ってからは特に問題もなく馬車は進み目的の宿まですぐに到着した。

 後に毛皮代の支払いを残しているシュミットは別にして、ゴゼン達とはここでお別れである。

 といっても同じ宿に泊まっているので、すれ違ったりはするだろう。


 これからの予定は、まず部屋を取った後に公的ギルドに向かうことになっている。

 ギルドで登録が終わった後は、生活用品の買い物だ。

 ちなみに現金のほとんどは、コウヒへ預けてある。

 バラで貰った大金貨一枚分の銀貨や銅貨は、そのまま持っているとかさばって仕方がない。

 そのために、アイテムボックスが使えるコウヒに一時的に預けた。今後、現金の扱いなどをどうするかは、今晩にでも話し合わないといけないだろう。

 そんなわけで、現金を持っているコウヒが、今回はチェックインの手続きをすることになった。

 三人で宿へ入るとすぐにカウンターらしきものがありそこに一人の女性がいた。

 いや、はっきり言おう。おばさんが一人座っていた。

「いらっしゃい」

 考助たちに気付くと、一瞬驚いた表情を見せた後、すぐに笑顔を向けてきた。

「部屋はありますか?」

「部屋割りはどうするかね?」

「三人部屋はありますか?」

 当然のように言い放ったコウヒに、考助はちょっと待てと思ったが、自分の横に立ってたミツキも当然という表情していたのでますます混乱した。


(・・・え!? あれ? おかしくない? 僕が変なの?)


 考助の混乱をよそに、コウヒと女将の話は続く。

「ベッド三つの部屋はないけど、ベッド一つの部屋ならあるよ」

「ではそれで」

「はいよ。ちょいとまってね」

 考助が口を挟む前にさっさと部屋が決まってしまった。

 そして、あれよあれよという間に部屋まで連れられてきた。

 部屋自体の大きさはそこそこあるが、部屋の中で存在感を示しているのは一つの大きなベッドである。

 三人どころが四、五人が寝ても大丈夫そうである。

 貴族とかが使いそうな宿ではなかったのだが、考助はこの部屋の需要が気になった。


(やっぱり、そういう目的の需要ってあるんだろうなぁ・・・)


 いささか現実逃避した頭で、そんなことを考える考助である。

 気づいた時には、ここまで案内をした女将はいなくなっていた。


「えーと、なんで一人部屋じゃなくて、相部屋? しかもベッド一つ・・・?」

「勿体ないですから」

「そういう問題!?」

 思わず叫んだ考助に、コウヒはきょとんとした表情を返してきた。

 そのやり取りを見ていたミツキが、ニコリと笑って言った。

「コウヒ。そうじゃなくて、考助様が言いたいのは、同じベッドで寝るのはまずいのでは、ということよ」

「? 何か問題が?」

「私達には、ないわよね」

「・・・エ? ナイノ!?」

 即答したミツキに、考助は思わず聞き返した。

 いまだよく分かっていない様子のコウヒに対して、ミツキは考助の懸念をわかっているようである。

 ミツキがコウヒに言い含めるように言い放った。

「要するに考助様は、私たちとそういう関係になることに躊躇している、ということよ」

「・・・え!? そうなんですか!? ・・・私達に何か問題が!?」

 コウヒが愕然とした表情を考助に向けてきた。

 ミツキはそれを見て、ニマニマと考助を見ている。

 さすがにここまで言われて考助も分からない程、鈍くはない。

 そもそも考助だって嫌というわけではないのだ。むしろこんな美人に、しかもここまで直接的に求められて断る理由がない。

 いつまでも現実逃避をしてもしょうがないので、さっさと覚悟を決めることにした。ついでに、言い訳がましいことを考えるのはやめた。

 はっきり言って二人は、考助の好みである。問題などあるはずがなかった。

「うん・・・いや、ごめん。特に問題はないよ。ちょっといきなりだったんで焦っただけで・・・」

 二人の方を見て、はっきりそう言った。

 それを聞いたコウヒはホッとした表情を向け、ミツキはニッコリとほほ笑んだ。


「まあ、それはともかく、今日の予定を決めよう」

「はい」

「そうね」

「といっても、まずは公的ギルドへ行って登録を済ませた後、生活用品をそろえるくらいなんだけど、他に何かある?」

「冒険者になるのであれば、私達はともかくとして主様の装備を整えたほうがよろしいかと思います」

 コウヒの言葉に、ミツキも頷いた。

「そうね。護衛は私たちのどちらかがするとしても、破片が飛んできて傷ついたとかはあるからね」

「そんなもんか。・・・と、言ってもなぁ・・・。鎧なんか着たことないから、まともに動けるとは思えないけど?」

「別に金属鎧にこだわる必要はないかと。魔法のかかった服などの選択もあります」

「なるほどね。その辺は防具屋とかに行って見てみるしかないか」

「そうね。その方がいいわね」

「あとは、何かある?」

 コウヒとミツキは考えこんだ。

「私は特に思い当たりません」

「そうね・・・どこか情報を仕入れることができるところに行きたいわね」

「あー。確かに、そうだな。今のままだと、世間知らずすぎる」

 ミツキの言葉にコウヒは首をかしげているが、考助は同意する。

 ブラックベアーの毛皮の件で、散々思い知らされた。

 考助は[常春の庭]で習った知識のみ。コウヒやミツキは、この世界の知識などは与えられているが、それは本を読んで得たようなものである。生きた情報などは含まれていない。

 コウヒの様子を見る限り、その辺のことはミツキに任せた方がいいかもしれない。

「それに関しては、急がなくていいからミツキ頼めるか?」

「任せて」

 頼りになるお姉さんである。

 いや実際は創られたばかりなのだが、何となく雰囲気的に考助がそう思っている。

「それじゃあ、とりあえず公的ギルドに行こうか」

「「はい」」

 特に荷物などない三人は、部屋に置くものなどないので、そのまま鍵だけを閉めて部屋を出た。

 宿の女将に公的ギルドの場所を聞いて、さっそく登録するためギルドへ向かうことにした。

次話投稿は翌日20時投稿予定


2014/5/22 誤字脱字修正

2014/6/3 誤字修正

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