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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 南~西方面
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(6)子供の今後と儀式

 エセナのお陰で、セイヤとシアの能力の一端がわかった。

 コレットでさえ見ることができない精霊たちをはっきりと視認することができる。

 これが、この先ふたりにどういう影響を与えるのかはわからないが、それが大きくなりそうなことだけはわかる。

 いい意味でも、悪い意味でもだ。

 どちらに転ぶかは、それこそエセナが言った通り、育て方次第ということになる。

 コレットが気を引き締めることになったのは、当然だろう。

 ついでにミクのこともわかったが、これもまだまだどういうことになるかははっきりしない。

 そもそもミクが音楽そのものに飽きてしまっては意味がない力だし、なによりもそれをうまく伸ばせるかどうかは誰にもわからない。

 セイヤやシアの場合は、里にいる精霊との感応力の高いエルフやハイエルフ、なによりもエセナがそばにいる。

 ある程度の先達は近くにいるので、導くことも可能だろう。

 だが、ミクにはそうした者がひとりもいないのだ。

 いまはミアがストリープの基礎を教えているが、いつまでもそれだけで済むとは思えない。

 そのときになって慌てても遅い。

 

 と、考助はそんなことを考えていたのだが、子供たちのいないところでピーチに話すと首を傾げられてしまった。

「そうでしょうか~?」

「え、違うの!?」

 考助としては、前もって教師になりそうな人材を探しておかなくてはと焦っていたので、ピーチの言葉に驚いた。

「そもそもストリープを弾くということに関しては教えられる人はいても、ミクの力を伸ばせるような人はどこにもいないと思いますよ~?」

 ミクの能力はかなり特殊なものだ。

 ピーチが言う通り、基礎的なことは教えられる者がいても、本当の意味で能力を伸ばせる者がいるかというと首を傾げざるを得ないだろう。

 考助もピーチの言いたいことがわかって納得した。

「それは確かにそうだろうけれど、じゃあ、どうするつもり?」

「そもそも親か誰かが導いてあげるというのが間違っているのですよ~。力を伸ばせるかどうかはミク次第。それでいいじゃないですか~」

 母親であるピーチのその言葉に、考助はハッとさせられた。

 そもそもトワたちのときでも、彼らの能力を伸ばすための教育など行っていない。

 フローリアやシルヴィアが与えたのは、あくまでも学園に通わせることであり、それは一般的な常識の範囲内でしかないのだ。

 それなのに、ミクに対して特別な教育を行おうとすれば、逆効果になりかねないのだ。

 

 ミクのために教師を用意しようとすること自体が余計なお世話だと気付いた幸助は、恥ずかしさで赤面した。

「あ~、言われてみれば、確かにそうだね。・・・・・・何を慌てていたんだろう」

 反省する様子を見せる考助に、ピーチはフフフと笑った。

「コウスケさんだって、ミクのことを考えていたのですから、いいじゃないですか~」

「そうよね。どうせコウスケのことだから、セイヤとシアのことも考えていたのでしょう?」

 ピーチの言葉に続けるようにコレットが割り込んでそう言ってきた。

 まさしくコレットの言う通りなので、考助としては頷くしかない。

「うん。まあ、そうだね」

「まったく・・・・・・コウスケらしいといえばらしいけれど、考えすぎよ」

 コレットはそう言いながら、右手の人差し指でツンと考助の額を軽く押した。

 考助は、わざとらしく額を右手でさすりながら、苦笑を返した。

「まったくもってその通りです。反省しております」

 わざとらしくしかめっ面になってそう返してきた考助に、コレットとピーチが互いに顔を見合わせて笑った。

 

 子供たちの能力は、子供たちの好きに伸ばさせると決めた考助は、お陰でだいぶ気が楽になった。

 そんな考助に、コレットが別のことを聞いてきた。

「それは良いのだけれど、この先の旅はどうするの?」

 なんだかんだで子供たちは旅慣れて来ている。

 モンスターとの戦闘が発生しても、おとなしく自走式馬車のなかで待機しているので、大きな問題も起きていない。

「うーん、そうだね。子供たちが望むのであれば、ずっと一緒でもいいんじゃない? 勿論、様子を見ながらだけれど」

「そうですね~。私もそれでいいと思います」

 考助の意見に、ピーチも同意した。

 そもそも最近のミクは、飽きもせずストリープを弾き続けているので、旅をしていてもしていなくてもあまり変わらないかも知れない。

 もっとも、本人に言わせれば、考助の傍で弾いているからいいのだと、主張しそうだが。

 

 それはともかく、子供たちはこの先も里に戻ることなく旅を続けることに決まった。

 シュレインたちと昼の準備のために薪を拾いに行って、戻ってきてから子供たちにそれを伝えると、三人とも喜んでいた。

 勿論、他のメンバーにもきちんと確認をしてから子供たちには伝えている。

 ミクはストリープの演奏に重点が置かれているが、それぞれ旅を楽しんでいるので、喜ぶのは当然のことであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 結局子供たちは、南の街から南西のナンセンの町まで、一度も里に戻ることなく付いてきていた。

 このあとも特に問題はないだろうと、考助を含めた全員のお墨付きを得ている。

 本来であれば落ち着きなく動き回る子供が、馬車のなかで我慢できているのだから合格点が出るのは当たり前と言えた。

 ただし、馬車の中では騒いでいたりするが、その程度は許容範囲内だ。

 むしろ、他の者たちにとっても、旅の退屈しのぎになってちょうどいいのである。

 

 ナンセンの町に入った考助たちは、そこで一度子供たちとその母親ふたりと別れて行動することになった。

 考助がここで儀式を行わなければならない。

 子供たちがいると突発的なことが起こって儀式が失敗しかねない。

 さらに付け加えれば、子供たちは、今夜は里の自宅で寝ることになっている。

 ナンセンにとどまるのは一晩だけだが、明日の出発までは自宅でのんびりしてもらうという建前で、戻ってもらったのだ。

 勿論、建前だけではなく、自宅でゆっくりしてもらいたいというのも本音ではあったが。

 

 

 町から離れた儀式を行うのにちょうどよさげな広さがあるところで、考助は儀式の準備を始めた。

 今回置くのは、スライムだ。

 といっても、さすがにリンを連れてくるのは無理だったので、設置した台の上にスーラが乗っている。

 普段はピョンピョンと飛び跳ねたり、あちこち移動したりしているスーラだが、考助が言い聞かせればきちんとジッとしている。

 儀式の間に移動されると困ったことになるので、今回ばかりは考助もしっかりと指示を出した。

 その雰囲気を感じ取っているのか、スーラはピクリとも動かなくなった。

 それを確認した考助は、満足げに頷いてから自分のいる定位置へと行ってから儀式を開始した。

 

 今までと同じように祝詞を唱えて、魔法陣が上空に上っていく。

 今回の儀式で、スーラ以外にこれまでと違っている点があるとすれば、それは上空に上った魔法陣から発した光が伸びた先が二か所だったことだろう。

 一方は東に向かって、もう一方は北東に向かって伸びて行った。

 これで六芒星を形作るための三角形のひとつができ上がることになる。

 勿論、いままでと同じように、魔法陣はきちんとした位置に移動するように調整してある。

 儀式の効果で見えないようになっているが、もしそれが見えるようにしてあれば、セントラル大陸の上空に巨大な正三角形の光ができているのが確認できるだろう。

 

 これで南西側の儀式も無事に終わった。

 残る儀式は、北西にあるケネルセンと北の街の傍で行う締めのものだけだ。

 旅としてはまだ三分の二ほどが終わっただけになるが、いよいよ終盤戦が始まるといったところだろう。

 儀式に関しては、失敗することはできないので、考助も慎重に行っている。

 あと二回の儀式を失敗しないよう、なお一層気を引き締める考助なのであった。

教師をつけるか否か。

そもそもそんな都合のいい存在はいないので、つけないことになりました。


今回はメインの儀式もきちんと行いました。

皆様お忘れかもしれませんが、あくまでも今回の旅のメインは儀式なんですよ?

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