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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 東~南方面
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(2)懐かしい音

 考助が東の街に入った翌日、予定通りに子供たちが母親ふたりと一緒にやってきた。

「「とうさまー」」

「さま~」

 考助を見つけてタタタタとかけてくる子供たちに、考助は両手を広げて出迎えた。

「おー。ちゃんといい子にしていたか?」

 さすがに三人を一気に持ち上げることはできないので、考助は三人まとめてギュッと抱きしめた。

 セイヤの口から「ムグッ」という音が聞こえて来たが、気にしない。

 思いっきり可愛いがろうとした考助だったが、当の本人から抗議が来た。

「とうさま、くるしいー」

「おっと。ごめんね」

 そう言いながら抱きしめるのをやめた考助は、三人の頭を順番に撫でて行った。

 

 考助から頭を撫でられたセイヤたちは、今度はまっすぐにナナのところに駆けて行く。

 自分のところに子供たちが来たことがわかったナナは、一心不乱に尻尾を左右に揺らして出迎えていた。

 その様子を見ていた考助は、視線をコレットとピーチへと向けた。

「どうやら、いつもの調子に戻っているみたいだね」

「そうね。逆に元気すぎて困るくらいかしら?」

「昨夜は大変でした~」

 昨日のうちに考助と会えると知ったミクは、嬉しさと興奮ではしゃぎまくり、気分があがりまくっていたのだ。

 お陰で、いつもの時間には眠らずに、少しだけ夜更かしをしていた。

 それもピーチから「ちゃんと寝ないとととさまと会えなくなる」と言われて、ようやく落ち着いて寝る体勢になったほどだった。

 それはミクだけではなく、セイヤやシアも同じだったようで、コレットも思いっきり同意するような顔になっていた。

 

 子供たちが、ナナを相手に戯れているのを見ながら、考助はコレットとピーチに問いかけた。

「それで? 大丈夫そうだった?」

 前に考助と別れたときは、体力の限界ということで里に戻っていた。

 それは、その体力がきちんと回復したのかということと、それ以外にもちゃんとした生活を送っていたのかということを含めて確認だ。

 それが前回別れたときの子供たちとの約束だったのだ。

 きちんとした生活を送っていたらまた一緒に旅をしてもいい、と。

 

 考助の問いかけに、コレットとピーチは一度顔を見合わせてから、苦笑交じりに頷いた。

「驚くぐらいにきっちりとした生活を送っていたわね」

「お父さんの力は偉大です~」

「いや、僕の力というよりも、旅に行けることが嬉しいんじゃ?」

 本当に父としての力が偉大なのであれば、旅に出る前も同じような感じだったはずだと言いたげな考助に、コレットとピーチはそろってため息をついた。

「それもないとは言わないけれど、ね」

「お父さんの力は偉大です~」

 同じことを繰り返して言ったピーチに、コレットが大きく頷いた。

 なにやらふたりで分かり合っている様子に、考助は意味が分からず戸惑った顔になった。


 そんな考助の肩をフローリアがポンと叩いた。

「まあまあ。気にするな。お母さんにはお母さんなりの苦労があるというだけだ」

「そうですわね。お父さんとしての苦労は、私たちにはわからないわけですから」

 フォローなんだかよくわからないシルヴィアとフローリアの言葉に、コレットとピーチが頷いた。

 そして、考助はといえば、どう反応していいのかわからずに、首を傾げてこう答えた。

「そ、そうなのかな?」

「経験者が言うのだからそうなんじゃろ?」

 そういうことにしておけ、と言いたげなシュレインの顔に、考助はそれ以上何かを言うのをやめて、コクリと頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 一通りの挨拶(?)が終わったあとは、リュウセンのときと同じように、二手に分かれて東の街でまったりと過ごすことになった。

 考助は、当然というべきか、子供たちと一緒に東の街を回っていた。

「ととさま、あれなに~?」

「・・・・・・ん? 何のことだい?」

 袖を引かれてミクの指さす方を見たが、考助には彼女が何を気にしているのかがわからなかった。

 考助が首を傾げていることに業を煮やしてか、ミクは考助の腕を取ったまま、自身の気になるところへと引っ張っていく。

 そして、その屋台にある程度まで近づいたところで、考助もようやくミクが何を気にしていたのかが分かった。

 

 考助には人々の喧騒に紛れてその音が聞こえていなかったのだが、ミクの耳はしっかりとそれをとらえていたらしい。

 考助もその屋台に近付くにつれて、チリンチリーンという音が聞こえて来た。

 まさかこの世界にそんなものがあるとは思っていなかった考助は、驚きで目を見開いてからさらに屋台に近付いて行った。

「・・・・・・・・・・・・まさか、風鈴があるとは思わなかったな」

 アースガルドに来てから始めてみる風鈴に、考助が思わず、といった感じで呟いた。

 その考助の声を拾ったのか、屋台の兄ちゃんといった風体の男が、ニカッと笑った。

「おお、あんた、これを知っているのか?」

「んー、まあ、知っているといえば、知っているけれど・・・・・・これはどこから手に入れたの?」

「おう。なんでも東の端っこにある島国らしいぜ。俺は、この音に惹かれてしまってなあ。つい、向こうの大陸で見つけたときは買い込んじまったぜ」

 屋台の兄ちゃんは、そう言ったあとに、ハッハッハと笑った。


 東大陸で買ってきたのかと納得しかけた考助だったが、ふととあることに気が付いた。

「・・・・・・いや、いくら何でもこの値段で売っていたら、採算に合わないと思うんだけれど?」

 先ほどの言葉で、目の前の兄ちゃんは自分で東大陸に渡って買い付けたと言っていた。

 船に乗っての輸送などのコストを考えれば、どう考えても目の前にぶら下がっている風鈴だけでは、採算が合うとは思えない。

 そう心配しての考助の言葉に、屋台の兄ちゃんは、もう一度ハッハッハと笑った。

「心配しなさんな。買い付けた分は他にもあるさ。そっちは、きちんと店で売り出しているのさ」

 なんとチャラく見えていた目の前の兄ちゃんは、中規模商人ギルドの三男坊で、商会のために東大陸に渡ったときに風鈴を見つけたそうだ。

 風鈴にほれ込んで買い込んだのはいいのだが、実家の店で売り出すわけにもいかず、どうにか屋台を買うだけの資金をもらって、こうして売りに出しているのだ。

 ちなみに、買い付けに行ったときに、しっかり(ちゃっかり?)と次の仕入れルートは確保しているようで、注文さえすれば船に乗って風鈴の荷物だけが届くようになっているらしい。

 

 商人としてはある意味で当たり前の行動に感心している考助の袖を、目をキラキラとさせながら風鈴を見ていたミクが引っ張った。

「ねえねえ、これほしい~」

「ん? どれがいいのか決めたのかい?」

 聞かれたミクは目をぱちくりとさせた。

 考助としてはどれがいいのかと、ミクが決めたのかと考えての問いかけだったのだが、ミクは買ってもらえるとは考えていなかったのだ。

「うーんとね・・・・・・えーとね・・・・・・」

「ハハハ。ゆっくり考えなさい」

 慌てて必死に考えるミクに、考助は笑いながらそう言った。

 

 結局ミクが選んだのは、金属でできた考助が良く知る形の風鈴だった。

 なんの金属でできているかは分からなかったが、その音がミクの琴線に触れたらしい。

「落とさないように気をつけるんだよ?」

「だいじょうぶ~」

 嬉しそうに右手に風鈴を持ちながら音を聞き続けているミクにそう注意をしたが、意地でも渡さないと言わんばかりにギュッと紐を握っている。

 ずっと腕を上げたままで疲れると思うのだが、夢中になっているうちはいいかと放っておくことにした。

 ちなみに、一緒に歩いているセイヤやシアは、それほど風鈴には興味が無いようで、他の屋台に何かないかときょろきょろとしている。

 結局ミクは、風鈴を持つ手を右手から左手に変えたりしながら、宿に着くまでずっとその音を楽しみ続けるのであった。

東大陸の特徴を出すために、何となく風鈴を出してみました。

風鈴が出て来たからと言って、忍者がいたり侍がいたりするわけではありませんw


ちなみに、考助たちはいつまでも風鈴を離さないミクを見かねて、早めに宿に戻っていたりします。

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