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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 北~東方面
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(10)寂しい思い?

 子供たちが旅に同行し始めてから三日は、それまでと同じテンションで動き回っていた。

 ただし、四日目になると高いテンションは続かずに、五日目には疲れた表情を表に見せるようになっていた。

 ここで保護者たちは、一度里に戻した方がいいと判断することにした。

 さすがの考助も子供たちがごねても甘い顔はしないと決心していたのだが、意外というべきか、素直というべきか、子供たちはごねることなく、素直に里に戻ることに頷いていた。

 子供たちがごねなかったのは、これで終わりではなく、またの機会があることをきちんと説明したことも大きかったのだろう。

 いつも通りの元気になれば、また一緒に旅をすることを約束したら、三人とも頷いていた。

 

 五日目は、残念ながら野営だったため、次の日に立ち寄った町で一泊することにして、考助は子供三人とコレット、ピーチを連れてアマミヤの塔へと戻ることにした。

 転移を使って百合之神社へと戻った考助は、そこで子供たちと別れて、一緒に来ていたコウヒとシュレインたちのいる町へとんぼ返りだ。

 自走式馬車を目標に転移することができるので、時間はかからない。

 考助が戻ったときは、ちょうどシルヴィアが馬車の清掃を行っていた。

「お疲れ様です。子供たちはどうでした?」

「うん。見慣れた場所に来て安心したのか、眠そうな顔になっていたよ」

 ミクなどは、すでにコクンコクンと頭を揺らしていたので、家に戻ったあとは速攻で布団に入っているだろう。

 そう告げた考助に、シルヴィアは笑顔を向けた。

「そうですか。気を張っていたのでどうなるかと思いましたが、すぐに寝れそうなら安心ですね」

「そうなの?」

 首を傾げた考助に、シルヴィアは頷いた。

「少なくとも、張り詰めたままでいるよりはいいと思いますわ」

「確かに、それはそうだね」

 旅という初めての行事に、大いに張り切っていたのは確かだろうが、里にいるよりもモンスターが身近に出てくるという恐怖心もどこかにあっただろう。

 それは、いくら近くに頼りになる大人たちがいるからといってもなくなることはない。

 むしろまったくない方が、危機(察知?)能力的に危ないことになる。

 自然体でいることは必要なことなのだが、少しも警戒せずにいられるほどに優しい世界ではないのである。

 

 シルヴィアを手伝いながらちょっとした雑談をしていると、消耗品の買い込みをしていたシュレインたちがきた。

「もう戻ってきていたのか」

「うん。まあ、子供たちも疲れていたみたいだから、すぐにこっちに来ることができたからね」

「なるほどの」

 また考助としばらく別れることになることに、子供たちがぐずるかと考えていたため、多少余裕を持ってこのあとの予定を考えていたのだ。

 ところが、あっさりとこちらに来ることができたので、ある程度の余裕ができていた。

「すぐに出発するのか?」

 折角時間があいたのだから先に進むのかと聞いてきたフローリアに、考助は首を左右に振った。

「いいや。別に急ぐ旅でもないしね。せっかくだからのんびりしようよ」

 いま考助たちがいる町は、なにか特徴があるところではないが、ゆっくり休むことができる宿はある。

 子供たちの動向に目を向けるという慣れない作業をしたのは皆同じなので、休みを入れることには全員が賛成するのであった。

 

 自走式馬車の清掃が終わったあとは、本当になにもせずに、宿の中でのんびりと過ごした。

 夕食のために出たりはしたが、基本的にはなにもせず、ただゆったりと会話だけを楽しむ時間となったのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 子供たちを塔に送り届けた翌日には、考助たちは再び旅人となっていた。

 一応、クラウン冒険者部門でめぼしい依頼が無いかと確認もしたが、いいのが無かったので特になにも受けずに町を出た。

 そのあとは、ひたすら単調な道を進むだけだ。

 風景を楽しむことはできるが、基本的には同じような道が続くので、それもすぐに飽きてしまう。

 さすがに、単調な状態から変化を求めて、モンスターが出てくるようになんてことを考えるほど愚かではないのだ。

 意外だったのは、子供たちがいるときといないときでさほどかかる手間が変わらなかったことだろう。

 勿論、自走式馬車の進むスピードは速くなっているのだが、それ以外は子供がいたときとなにも変わらない。

 むしろ、子供たちがいないために、退屈を紛らわすものが無くなってしまったともいえる。

 

 静まり返った車内を見て、考助がぽつりと呟いた。

「ううむ。まさか、子供がいないことでこんなに影響が出るとは思わなかったな」

 独り言のような考助のつぶやきだったが、しっかりとその声は耳に届いたようで、全員がそれに反応していた。

「なにをするのかと目が離せないからな」

 苦笑交じりにフローリアがそう言うと、シルヴィアもコクリと頷いた。

「ひとりだけで面倒を見ているわけではなく、全員の目がありますからね。適度に休めていたのも大きいと思います」

「確かにそうじゃの。それに、なんだかんだで騒いでおるから、退屈をすることもないからの」

 シュレインも子供たちの騒がしさを思い出すように、目を細める。

 

 いればいたで手間がかかり、いなくなったらいなくなったで寂しく思う存在に、考助は改めてその偉大さを思い知った。

「はあ。・・・・・・まあ、ない物ねだりをしても仕方ないか。それよりも、せっかくだからゲームでもやる?」

「ふむ。それもいいな。なにか面白い物でもあるか?」

 微妙な空気になってしまっていたので、フローリアが考助の提案にこれ幸いとばかりに乗ってきた。

 他の面々も同じような気分だったのか、考助に注目している。

 彼女たちの視線を感じながら、何かいいものがあるかと考えていた考助は、以前からこそこそと作っていたトランプを取り出して、自分の知る遊びを教え始めた。

 

 

 セントラル大陸には、トランプそのものはないが、カードゲームのようなものはある。

 とはいえ、ひとつの道具でいろいろな遊びができるようなものはなかったらしく、シュレインとフローリアには喜ばれた。

「なぜ、もっと前に教えてくれなかったのだ」

「そうじゃの。これだけ楽しめるのであれば、早くに知っておきたかったの」

 若干責めるような視線を向けて来たふたりに、考助はわずかに身を引きながら、言い訳するように答えた。

「いや、特に意味はないんだけれど・・・・・・準備をするのが大変だから?」

 ジョーカー一枚を入れて全部で53枚のカードを用意するのは大変だったと言い訳する考助だったが、ふたりの視線は変わらなかった。

「別に、コウスケがわざわざ自前で用意する必要はないじゃろ?」

「そうだな。誰かに伝えて、作ってもらえばよかっただけだからな」

「うぐぐっ」


 考助がいままでトランプを作っていなかったことには、大きな理由はない。

 強いてあげるならカードを用意するのが面倒だったということはあるが、シュレインとフローリアの言うとおり、誰かに言って作ってもらえばよかっただけなのだ。

 それをしてこなかったのは、どうしても欲しいと思わなかったというような理由もあるにはある。

 だが、どの理由も強い決め手になるものでもなく、この世界で色々なことをしているうちに忘れてしまっていたというのが一番正しいだろう。

 何が理由かと問われて、これだと答えるだけのものが無いというのが正直なところなのだ。

 そんなこんなで、シュレインとフローリアからはいつものように呆れたような視線を向けられる考助なのであった。

そういえば、トランプはまだ作ってなかったよなと今更ながらに思い出して出すことにしました。

意外なところで麻雀とか出そうかとも思ったのですが、それよりも定番中の定番をまず出さないと、と考えた結果です。

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