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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 北~東方面
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(9)子供たちの一日

 子供たちが旅に同行するようになってから二日目。

 すでに村を出発してかなり道中を進んだ一行は、少し開けた場所で昼食の準備をしていた。

 子供たちは、女性陣の目の届く範囲で、薪拾いをしている。

 普段やったことのない作業が楽しいのか、父親からの指示で動けるのがうれしいのか、テンション高めでくるくると動き回っていた。

 考助は、子供たちが拾ってきた薪を集めて、簡易かまどをつくる。

 そして、慣れた手つきで火を起こした。

「火がついたー」

「ついたー」

 普段家の中でも火をつけっぱなしということはないので、つけたり消したりはしているのだが、子供には危ないので火の管理は普段していない。

 そのため、火が付くことも珍しいのか、目を丸くしている。

 とはいえ、昨日の昼も同じことをやっているので、単にテンションが上がって喜んでいるだけということもあり得るのだが。

 見ているだけで楽しくなるので、考助もわざわざ確かめたりはしなかった。

 

 旅の最中に食べる食事は、さすがに普段口にしている物よりは一段落ちる。

 食材等は問題ないのだが、調理する場所が確保できないのが大きいのだ。

 それでも子供たちは喜んで昼食を口にしている。

「とうさま、おいしいよー」

「おいしー」

 セイヤとシアが嬉しそうに笑いながら食事の感想を言ってきた。

 彼らの向かいでは、ピーチの隣でミクが同じものを食べている。

「そうか。それはよかった。ただ、あまり食べすぎたら旅に支障が出るから、あまり詰め込んだら駄目だよ」

「はいー」

「はいー」

 考助の忠告にふたりは素直に頷き、さらに別のおかずに手を伸ばす。

 それを見ていた考助は苦笑をしたが、敢えて止めたりはしない。

 別に甘やかしているわけではなく、旅をするうえで自分の適量の食事を見極めるのも経験のひとつだと考えているのだ。

 とはいえ、いきなり自分の限界を知るわけもなく、適度なところでそれぞれの母親に止められていた。

 それでも不満をいうわけでもなく、しっかりとやめているのを見ていた考助は、自分の子供ながらにすごいなあと内心で感心していた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 昼食を終えて午後の移動を開始した考助たちだったが、すぐに止まることになった。

 理由は簡単で、進む途中の街道にモンスターが出ていたのだ。

 自走式馬車であれば、そのまま放置して逃げることも可能だが、あとから来る荷馬車などを考えれば処理をしておいた方がいい。

 これは別に、考助たちに余裕があるからこその考えではなく、護衛をする冒険者に教えられることのひとつなのだ。

 勿論、護衛に余裕が無ければ手を出す必要はない。

 だが、街道を移動中に見つけた場合は、できるだけ狩っておくことが推奨されているのである。

 

 さすがに子供たちは表に出るわけにはいかないので、馬車の中からモンスターの討伐を応援することになる。

 そして、コレットとピーチが戦闘に出たがったので、考助は子供たちと一緒にお留守番だ。

 子供たちには、自走式馬車の中にいれば安全なので、絶対に外に出てはいけないと言い含めてコレットとピーチは出て行った。

「おー、つよいー」

「かあさま、すごいー」

 セイヤとシアは、コレットが精霊を使ってモンスターを倒していくのを見て、歓声を上げている。

 それに対して、ミクはピーチが活躍している姿を見ても特に何も言わないので、考助は逆に気になって聞いた。

「ミクはなにもないのかな?」

「んーと。かあさまが戦っているところは、見たことある!」

「あら、そうなんだ」

 あとから考助がピーチに確認したところによると、ピーチの一族は、幼いときから大人たちが戦うところを見せる習慣があるということだった。

 その訓練の際に、ミクはピーチが戦うところを見ていたというわけだ。

 

 それぞれの子供の育て方の意外な違いが出たわけだが、セイヤとシアも戦闘に引いている感じはなかった。

 むしろ、

「まほうすごいー」

「きらきらー」

 と、コレットが打ち出す魔法にはしゃいでいた。

 普段見ることができない魔法だからこその反応だろうが、考助は内心でこれがこの世界での一般的な子供たちの反応なのかと首をかしげていた。

 普通に(?)モンスターが倒されているため、初めて見るのには衝撃的な場面だったりするのだが、それに関しては特に強い反応を示したりはしていない。

 セイヤたちが特殊なのかと考えた考助だったが、そもそもこの世界で肉を捌くときのことを考えれば、嫌悪感などはあまり出ないだろうと思い直した。

 勿論、命に対するありがたみなどは徹底して教えてあるので、「殺し」を楽しむようなことにはなっていない。

 それどころか、むしろ「命」を頂いているということをより強く実感しているのだろう。

 

 考助がそんなことを考えていると、いつのまにか戦闘が終わっていた。

 出て来たモンスターも大したレベルではないので、あっさりしたものだった。

 まとめて処理をすると逆に面倒だと反省したので、きちんとその場で素材の回収を行う。

 戦闘は危険だと判断されて馬車の中にいた子供たちも、素材回収の訓練ということで呼び出された。

 ただ、刃物を使って本当に素材を取るわけではなく、鳥から肉を取るのと同じように、慣れさせるためだ。

 この辺りも以前の世界の常識とは違うのかと考助は考えていたが、それについて口を出すことはしない。

 この世界ではこの世界の生きるための常識があるということは、考助もいままでの経験でよくわかっているのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 この日の夜は近くに適当な村や町もないということで、野営することになった。

 さすがに自走式馬車には、全員が寝泊まりできるだけの広さがないので、用意してあったテントと別れて寝ることになる。

 テントを作る間も、やはり「テントー」とテンションが高かった子供たちだったが、やはり一日の疲れが出たようで毛布に入ったあとはぐっすりと寝入っていた。

 子供たちが寝たあとのわずかな時間が、大人たちの時間となる。

「意外と、早く順応しているのかな?」

 この日一日を見ての考助の感想に、ピーチがウーンと首を傾げた。

「どうでしょうね~。まだ二日目で気分が高揚しているだけですから、これから先に疲れが出てくるかもしれません」

「あー、なるほど。それはあるか」

 移動の最中に昼寝などもしているが、それでも普段の状態から比べればはしゃぎまわっているのは一目瞭然だ。

 それを考えれば、ピーチの予想は普通に考えられることだ。

 

 コレットも同意見なのか、大きく頷いていた。

「でも、いまは珍しいものがいっぱいで騒がしいけれど、そのうち落ち着いて来ると思うわ」

「そうじゃの。むしろ、よく言いつけが守られていると思うがの?」

 もっとわがままを言い出すのかと思っていた、というシュレインの言葉に、シルヴィアとフローリアも同意するように頷いた。

「そうだな。今のままでいけば、長旅にも慣れそうだが・・・・・・油断は禁物だな」

「そうですね。子供はなにに刺激されるかわかりませんから」

 子育てをやり切ったふたりの実感の伴った言葉に、他の者たちも頷く。

「まあ、とにかく、明日以降も注意深く見ておくしかないかな? 疲れが出てきてもおかしくないし」

「そうですね~。少しでもおかしいと感じたら教えてください」

 コレットとピーチがそう言って、子供たちについての話は終わりとなった。

 

 そのあとは、今後の旅の計画についてや、とりとめのない話をしながらその日を終えるのであった。

命の扱いについては、書くか悩みましたが、結局書くことにしました。

日常的に鳥を捌いたりしている所を見ている子供たちなら、こういう反応もありかと思います。

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