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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 北~東方面
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(8)予想外の同行者

 子供たちとの触れ合いが終わった翌日は、再び次の目的地を目指して旅の出発になる。

 ・・・・・・はずだったのだが、ここで問題が発生した。

 また父親こうすけと離れることになると知った子供たちが、ぐずり出したのである。

 旅に出る前の考助は、トワたちのときと違って割と頻繁にセイヤたちに会いに行っていた。

 エルフとサキュバスの里は、考助が気軽に立ち入ることができるので、子供たちに会うのも簡単なのだ。

 そのため、大体二、三日に一回は顔を合わせていたのだが、今回の旅で何日も離れることになり寂しく思っていたようだ。

 前日にはしゃぎまくっていたのは、久しぶりに考助と会えたからというのもあったのである。

 ところがここにきて、また同じように長期間会えなくなると知った子供たちが嫌がったというわけだ。

 

 自分の手をつかんで離さない子供たちを見ながら、考助は困ったような表情を浮かべていた。

「いやーだー!!」

「うーん、ごめんね。ずっと一緒にはいられないんだよ」

「ダーメー!」

 考助がなにを言っても腕を引っ張り、袖を引っ張りして、子供たちはどうにかお別れしないように騒いでいる。

 それを見ながら考助はどうするべきかと考えていた。

 別に、駄目だと強くしかることに、気が引けているわけではない。

 子供にぐずられたときに、本当に別れて旅をしなければ駄目なのかと、多少なりとも疑問に考えてしまったのだ。

 勿論、長旅に子供たちが耐えられると安易に考えているわけではない。

 しかもモンスターが出てくる世界の旅だ。

 普通に考えれば、子供を連れて旅をすることなど、眉を顰められるのは間違いない。

 ただ、自走式馬車の防御力やらそもそもの考助たちの戦闘力を考えれば、子供を連れての旅も不可能ではないということも事実だ。

 

 考え込む考助の様子に気付いたのか、鋭い感覚を持つ子供たちはぐずるのをやめてジッと考助の答えを待つ体勢になった。

 それを見て慌てた様子を見せたのが、コレットだ。

「ちょ、ちょっと、コウスケ。本気なの?」

「いや、さすがに全部の旅を一緒に行くのは無理だっていうことはわかっているよ。でも、次の村までとかなら大丈夫じゃないかなって・・・・・・」

 駄目かな、と続けた考助に、コレットはぐっと黙り込んだ。

 心情的には子供を旅に出すのはやめてほしいという気持ちはある。

 ただ、考助の言っていることも分からなくはないのだ。

 なにしろ、たとえ戦闘が起こったとしても自走式馬車にさえ入っていれば、大抵のことはやり過ごすことができる。

 というよりも、戦闘力といった意味では、実は考助たちのそばにいるほうが安心安全だったりするのだ。

 むしろ、考助たちの傍にいて危険が回避できないようなことが起これば、どこにいても安全ではないと言えるほどに。

 

 ただし、旅をするということは、そうした戦闘以外の問題も多く発生する。

 一番の問題は子供の体力的なことだが、他にも移動の最中に余計なことをしないのかとかなどいろいろ思いつくことはある。

 だからこそ、すぐには返答できずに村までという曖昧な答えになったのだ。

「・・・・・・うーん。次の村までとかなら様子見でちょうどいいかもしれませんね~」

「ええっ!?」

 考え込んでから言ったピーチの言葉に、コレットが驚きの顔を向けた。

「モンスターといった意味では、危険はほとんどないですからね~。旅に慣れさせるというのにはちょうどいいかと思いますよ」

「・・・・・・それは、確かに?」

 自分で言いながら、本当にそうなのか、という顔で首を傾げるコレット。

 傍で見ていたシルヴィアやフローリアは、流されてる流されている、などと考えていたが勿論口に出すことはしない。

 子供を育てた経験で口を出すことはあっても、あくまでも自分の子供ではないという立場には変わりはないためだ。

 というよりも、こういうときに決断を下すようなことを言えば、どう考えても今までの関係にひびが入りかねない。

 そのことをふたりともよく理解しているのだ。

 

 ピーチが考助に賛同することを言い出したのには、わけがある。

 そもそも裏の世界で動くことになるサキュバスは、早いうちから旅ができるように訓練するのだ。

 ましてや、ピーチの一族は総出で、いつでも逃げるための長旅ができるように、幼子を旅に慣れるようにしていた。

 そうした自身の体験があったからこそ、考助の提案にも同意したのである。

「いや、ちょっと待って・・・・・・それって、本当に?」

 一方で、そもそも里を出ることなど考えることのないエルフの出身であるコレットは、ピーチの言葉に動揺を見せている。

 なによりも、期待するような視線で自分を見てくる子供たちの様子に慌てているのだ。

 この辺りで余計な騒ぎを起こさずに、じっと答えを待っている時点で普通の子供とは違うのだが、いまのコレットはそこに気付く余裕はない。

 

 迷うコレットを見た考助は、とある提案をして見ることにした。

「とりあえず、いくつか約束を決めて、それが守れないようだったら里に返すのはどうかな? 戻ることはいつでもできるんだし」

 考助が百合之神社へ戻る能力を使えば、いつでも一瞬で塔の中に戻ることができる。

 もし、子供たちが約束を破った場合は、すぐに戻すと決めておけば、そうそう大事にはいらないのではないか、というのが考助の考えだ。

「う、うーん。それなら・・・・・・まだ、いいか、な?」

 駄目押しのような考助の言葉に、そう言ってしまったコレットも、なんだかんだで子供には甘いのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 結局、コレットとピーチの言うことは絶対に聞くこと、などのいくつかのルールを決めて、子供たちも旅に同行することになった。

 もちろん、子供たちが約束を破らなかったとしても、子供たちの体力を見ながら進んで、駄目だと判断した場合はすぐに塔に送り返すことにもしてある。

 約束事を話したときは神妙な顔で聞いていた子供たちだが、実際どこまで理解しているかは不明だ。

 とにかく、子供たちと一緒に行くことになったので、クラウンの依頼は受けるのをやめた。

 もともと今回は受けるつもりはなかったが、子供たちがいるとなれば、余計なことに気を回すことはできなくなる。

 考助たちにとっても初めてのことなので、出来るだけ余計な要素は省いておきたい。

 そんな思惑が全員一致したので、とりあえず次の村を目指して出発することになったのである。

 

 リュウセンから次の目的地の村までは、半日ほどで着くことができる。

 自走式馬車で急げば、更に次の村へ行くことはできるが、子供たちがいるので無理はしないことにして、とりあえずはその村を目指す。

 儀式的には、五日以上の長期間、同じところにとどまることはできないが、ゆっくり進む分には問題ない。

 まずは子供たちに長時間の移動を慣れさせるために、半日の移動で様子を見ることにしたのである。

 結果としては、自走式馬車の窓もどきから見える光景にはしゃいだりしてはいたが、約束通り身を乗り出すようなことはしなかった。

 昼にはキャンプも行ったのだが、自分勝手に遠くまで離れるようなことはせずに、昼食ができるまできちんとおとなしくしていた。

 この落ち着きは一体誰に似たんだろうと、二親揃って首を傾げていたのだが、その問いかけに答えられるものは誰もいなかった。

 とにかく、半日の旅を無事に乗り越えることができた子供たちは、その先の旅も同行が許されたのであった。

ドウシテコウナッタ。

当初の予定では同行させるつもりのなかった子供たちが・・・。(゜Д゜;)

なぜこうなったのか、作者にもわかりません。

前話で出したのがまずかったか。。。

ただ、多分、次話で疲れ果てて一時退場になる・・・・・・と思いますw

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