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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 北~東方面
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(5)人々の信仰

ちょっと説明回。

 巡礼隊に寄生している行商がいるからといって、考助たちがすべての隊を守っているわけではない。

 戦闘が発生したときに考助が張る結界は、あくまでも巡礼隊のふたつの馬車と自分たちの馬車だけだ。

 そのため、寄生している行商人は、隊列がモンスターに襲われたときには自分たちで荷馬車を守らなくてはならない。

 考助としても守らなくていいという指示をいちいち出しているわけではないので、戦闘が発生した際はナナが喜々として襲ってきたモンスターを倒しに走るのだが。

 結果として、ナナの行動が他の行商隊も守っていることになる。

 

「それにしてもいいのか? お前さんの従魔が倒したモンスターまで取られているようだが?」

 モンスターに襲われて冒険者たちが処理するのを見ていたゼントが、考助にそう聞いてきた。

 ゼントの視線の先では、行商の護衛の冒険者がモンスターの素材を一心不乱にはぎ取っている。

 さっさと作業を終わらせないと巡礼隊において行かれるのは目に見ているので、必死になっていることが傍目で見てもわかる。

「構わないとは言いませんが、仕方ないのではないでしょうか。全部をはぎ取りするのも時間がかかりますし」

 あっさりとそう言い放った考助を見て、ゼントは苦笑を返した。

 その態度と言葉を見れば、考助がこの辺りでとれるモンスターの素材をあまり必要としていないことはわかる。

 それに、考助のランクを考えれば、この辺りで出るモンスターの素材から得られる金など大した額でないことも理解していた。

 いまの考助にとって重要なのは、モンスターから得られる素材ではなく、いかにして巡礼隊を安全に素早く目的地まで連れて行くことができるか、なのだ。


 それがわかっているゼントも、それ以上はこの場でモンスターの件について聞いてくることはしなかった。

「それじゃあ、そろそろ終わりそうだし、出発しようか」

 行商の護衛冒険者がまだモンスターから剥ぎ取りをしているのをわかっていながら、ゼントはそう言った。

 施しを兼ねて寄生を許している巡礼隊だが、その行動まで寄生している行商に合わせているわけではない。

 ゼントが行くといえば、それは巡礼隊の行動開始となる。

 考助たちも最初からモンスターの剥ぎ取り作業をするつもりはないので、出発準備といっても大した作業をするわけではない。

 この辺りに倒したモンスターの死骸を求めて別のモンスターがこないように、アイテムボックスの魔道具にしまってしまうくらいである。

 その方が現場で剥ぎ取り作業をしなくても済むので、時間もかからないのだ。

 考助はあたりを見回して、シュレインたちが作業を終えていることを確認してから身振りで出発することを伝えて、そのあとにゼントに向かって頷いた。

「そうですね。こちらはいつでも大丈夫です」

「そうか。じゃあ、行こうか」

 ゼントがそう言って馬車に乗り込むのに合わせて、考助とシルヴィアも同じ馬車へと乗り込んだ。

 

 

 考助たちが戦っている間、巡礼隊の馬車に乗っている神官や巫女は戦闘に参加していない。

 シルヴィアを見ても分かる通り、戦闘に参加できる聖職者がいないわけではない。

 そもそも巡礼隊が襲われたときには、馬車に乗っている者たちも戦闘に参加するのは、修行の一環とされている。

 そのため、最初の戦闘のときには、同行している神官や巫女のうち何人かは戦闘に参加しようとしていた。

 だが、考助たちの実力を見て自分たちが出ては逆に邪魔になると考えたのか、早々に馬車の中で待つという形に落ち着いたのだ。

 その形で落ち着くようになったのには、シルヴィアの存在もひと役かっていた。

 考助が何かを言うよりも、同じ巫女であるシルヴィアから伝えたほうが話が速いので、何かあったときのために考助と同じ馬車に乗っているのだ。

 いまもシルヴィアは、御者席ではなく荷台に乗って情報収集(?)に励んでいた。

 

「・・・・・・ということは、いま北大陸では大幅な再編が行われているのですか」

 シルヴィアの確認に、向かいに座っている巫女が訂正をしてきた。

「行われている、というよりも、行われていたが正しいでしょうね」

 彼女が着けている聖布は、北大陸のものだ。

 この場にいるのは全員が聖職者なので、そのことはわかっているだろう。

 その彼女からもたらされた情報に、シルヴィアは感心した顔を見せながら、内心では予想外の情報に驚いていた。

 

 北大陸では、いい意味でも悪い意味でも教会組織が幅を利かせている。

 当然、それぞれのエリアの教会の上層部に変化があれば、大陸全体の方針が決まるといっても過言ではないのだ。

 女王フローリアの側近として、神殿関係の対応をしていたときは当然のように詳細な情報を知っていたが、いまは塔の管理に重点を置いている。

 そのため近況は、あまり詳しくは知らなかったのだ。

 それが、目の前の巫女からの情報である程度北大陸の状況がわかってきた。

 

 セントラル大陸にちょっかいを出して以来、北大陸の教会では、長い間様々な駆け引きが行われていた。

 少なくともシルヴィアが表に出ている間は、その駆け引きがずっと続いていたのだが、それが終わったというのがその巫女の言葉から推測できる。

 北大陸内の混乱が収まれば、今度は外側に目を向けてくる可能性がある。

 セントラル大陸にとってそれは、あまり良い情報といえるものではないのだ。

 勿論、新しい体制になった北大陸が、どういった方針を取ってくるのかは、まだまだ未知数なところがあるのだ。

 もっとも、こうした情報は、当然のようにトワやココロにも集められている。

 対策も対応もきちんと取っていることくらいは想像できる。

 いまのシルヴィアにとっては、全く関係のない話とまではいえないが、一歩ひいた立場で聞ける内容だ。

 

 大陸間、あるいは国家間の関係はシルヴィアには関係ないが、それよりも気になることがある。

 それは、考助がこれからやろうとしているセントラル大陸の神域化によって、北大陸がどのように動くことになるかだ。

 神域化によって、北大陸だけではなく他の大陸も大きく動くことになるが、当たり前だが考助に影響を及ぼすことになる。

 塔にこもっている考助にたいして、直接的に何かが起こるわけではないが、現人神に対する信仰といった意味ではかなりの影響を受けるだろう。

 今までのことを考えても、人々の信仰が直接考助に何らかの影響を与えるわけではないだろうが、何かが起こる可能性があることは確かだ。

 リリカたちに加護を与えられるようになっていることからも推測はできる。

 考助に対してどういったことが起こるのか、それを見極めることは、シルヴィアにとって大事な仕事だと考えているのである。

 

 

 シルヴィアが巡礼者たちから得ている情報は、北大陸に限ったものではない。

 セントラル大陸内では、考助の話がどのように伝わっているのか、いまはどういった信仰のされ方をされているのか、いくらでも話題が尽きることはない。

 話が考助のことに偏るのは、シルヴィアが意図して聞いているわけではなく、現在のセントラル大陸ではやはり考助(現人神)の影響力が大きくなっているためだ。

 流石に三大神以上とは言えないが、それ以外の神々よりは確実に話題に上がっている。

 ラゼクアマミヤが現人神を主神としている以上、それは当然のことかもしれないが、やはり考助が現人神であると公表されてからこれまでの間に、それだけ人々に信仰が広まってきたといえる。

 神々からの神託や噂だけで広まっているような信仰ではなく、しっかりと人々に根付くような信仰のされ方といってもいいだろう。

 そのことを巡礼者たちから確認したシルヴィアは、セントラル大陸の神域化やアマミヤの塔に作った百合之神宮のことを思い浮かべるのであった。

現状の北大陸の状況やセントラル大陸での考助の信仰のされ方の変化についてでした。

こういう機会でもないと、塔にこもっているときには書けませんからね。

巡礼隊を出したのもそうした理由のひとつです。

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