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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 北~東方面
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(1)最初の儀式

 アスラの神域から戻った考助は、管理層で旅の準備を進めた。

 といっても、すでに改造馬車の準備はできているので、あとは細々とした物を揃えるだけだ。

 今回の旅は、メインがセントラル大陸の神域化ではあるが、他にも塔の足元にある大陸をしっかりと見て回ろうという目的もある。

 これまで転移門を使ってとびとびで訪ねたことはあっても、大陸を一周したことなどないのだ。

 それは考助だけではなく、他のメンバーも同じだ。

 敢えて挙げれば、考助と出会う前のコレットとシルヴィアが、冒険者として大陸の一部を歩き回っていたくらいである。

 そんなわけで、今回の旅は、何気に他のメンバーも楽しみにしていたりするのだ。

 コレットとピーチは、子育てがあるために旅全てに同行することはできないが、シュレイン、シルヴィア、フローリアは、特別なことが無い限りはついていくと宣言していた。

 そのため旅の準備も考助だけで行っていたわけではなく、女性陣も関わっている。

 結果として、考助が神域から戻ってきた翌日には、考助たちはセントラル大陸の北の街に姿を見せていた。

 

 北の街は、セントラル大陸から北大陸へと向かう船の玄関口としてにぎわう街だ。

 過去にはラゼクアマミヤと対立するような大きな動きも見せていたりするが、いまはそんな面影はどこにも見えない。

 ラゼクアマミヤの気付かないところでは、なにかが起こっている可能性はあるが、それは他の街でも同じようなことは起こり得るのだ。

 要するに、いまの北の街は、ラゼクアマミヤへの反乱の兆しなどなく、その利益を享受してにぎわう街となっていた。

 勿論、同じ大陸内にあるからといって、他の街とまったく同じつくりになっているわけではない。

 北大陸から流れてくる人や文化によって、他の街とは違った雰囲気にもなっている。

 もともと北大陸の影響を強く受けていた北の街は、いまも変わらずその雰囲気を残しているのである。

 

 北の街に転移した考助たちは、街の雰囲気を楽しむわけでもなく、まずは街の南側に少し外れた場所に移動した。

 まずはそこで最初の儀式を行うことにより、これから続く神域化作業の始まりとするのだ。

 簡単なイメージでいえば、この場所から神力の線を引いていき、セントラル大陸を周回しながら、またこの場所に戻ってきて一本の輪のようにするのだ。

 この場所を含めた六か所で同じような儀式を行い、その線を繋ぎ終えてもう一度この場所で再度儀式を行うと、セントラル大陸が神域化される。

 神力で線を引くという作業がなによりも重要なので、飛龍を使っての空の移動ができないのである。

 その点、地面を進むことになる改造馬車は飛龍よりも進みが遅いが、今回の儀式にはうってつけの(?)移動手段ということになる。

 

 人目のない場所まで移動した考助たちは、儀式を行うための準備に追われていた。

 ただし、実際に儀式を行うのは考助なので、忙しそうにしているのは考助ひとりだ。

 他のメンバーは、街から外れた場所にいるため、モンスターが急襲してこないかを見張っている。

 もっとも、町外れといっても、歩いて何時間もかかるような場所まで離れているわけではなく、出てくるモンスターもさほど強いわけではない。

 そしてなにより、一緒についてきているナナがいるためか、近付いてくるモンスターは皆無だった。

 メンバーの見張りは、どちらかといえば、モンスターよりもモンスター狩りをしているパーティが近付いてきていないかを確認するほうに重点が置かれていた。

 街のある方角から来るとは限らないので、シュレインたちは四方に目を光らせている状態だった。

 

 そんな中で考助は、着々と儀式の準備を進めていった。

 今回の儀式は大陸全体を神域化するもののため、祝詞だけで終わらせるようなことはできない。

 そのため魔法陣も地面に用意しているのだが、下手にいろいろな物を使うと、物証が残ってしまう。

 後々のことを考えれば、そうした証拠となるような物を残しては駄目なので、色々な工夫が凝らされている。

 考助の傍でコウヒとミツキが働いているのは、そうした補佐的な役目を負うためだ。

 さらには、このあとに発生する可視できるような現象を、見えなくするようにするのもふたりの役目となっている。

 儀式ができるような者がこの世界にいるわけではないが、それでも儀式の内容が内容だけに、念には念を入れているのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 儀式を行う場所に到着してから一時間ほど作業をしていた考助は、ようやく満足げに頷いた。

「よし。これで大丈夫かな? ・・・・・・ナナ! こっちおいで!」

 のちに証拠を残さないような材料で書かれた魔法陣の一角で、考助がナナを呼んだ。

 周囲を警戒していたナナは、呼ばれるなり喜び勇んで考助のいる場所まで駆け寄った。

 考助が立っているところには、直径一メートルほどの円が描かれている。

「ナナはこの円の中心にいて・・・・・・ああ、そうだね。お座りがいいかな?」

 どうやって、と言いたげなナナに、考助がそう言って補足した。

 それに答えるようにナナは、その場所で尻尾を左右に振り振りしている。

 

 尻尾を振るナナを確認した考助は、いいと言うまでその場にいるように指示して、自分は別の場所へと移動する。

 それは、丁度ナナとは反対側に来る場所にあたる。

 コウヒとミツキは描かれている魔法陣の外側に立っている。

 見学しているシュレインたちは、コウヒとミツキからはさらに離れたところで見守っていた。

 これですべての準備は整ったので、あとは考助が儀式を行うだけだ。

 ナナに魔法陣の一角に座ってもらったように、神域化の儀式には、考助に関わっているものに加わってもらうつもりでいる。

 具体的には、三種の神獣と神具を関わらせて行うのだ。

 そのため、最初に指定するのがナナとなる。

 このあとの五か所でも神獣か神具が、いまナナのいる位置におかれることになる。

 

 自分がいるべき位置に着いた考助は、肩の力を抜いてから祝詞を唱え始めた。

 考助が一言目を発すると、地面に描かれた魔法陣が光を発して、考助から莫大な力が発生した。

「これは・・・・・・」

 外側から様子を見ていたフローリアが唸るような声を上げてシルヴィアを見た。

 そのシルヴィアも険しい表情になっていたが、首を左右に振った。

「・・・・・・何を言いたいのかはわかりますが、途中で止めたほうが危険です」

 考助から発生している力は、下手をすれば命の危険さえ感じるほどのものだったのだ。

 シルヴィア、フローリアと同じように儀式を見ていたシュレインも険しい顔になっている。

 

 だが、そんな外野を余所に、当の本人は特になんということはないという顔をして儀式を続けていた。

 実際、大きな力が使われていることは認識しているが、シルヴィアたちが懸念しているような命の危険までは感じていないのだ。

 シルヴィアたちが青ざめた表情で自分を見ていることなどまったく気付いた様子もなく、考助は祝詞を唱え続ける。

 そして、考助が祝詞を唱え終わると、いつか見た光景のように、地面で光っていた魔法陣がそのまま空に向かって上がり始めた。

 最初はカメの歩みのようにゆっくりと、そしてそれはだんだん早くなっていき、最終的には目では追えないほどの速さになって上空に消えて行った。

 勿論、これらの光景は、コウヒとミツキの力でメンバー以外には見えないようになっている。

 これで、この場所で行う最初の儀式は終わりである。

儀式が注目されて研究されると後々困るので、厳戒態勢の中で行われていますw

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