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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第7章 塔の仲間と交流しよう
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2話 ヴァミリニア宝玉

章構成を変更しました。

昨日の話から第七章となっています。

 ヴァミリニア城の一室で、歓迎パーティは開かれていた。

 ヴァミリニア側は、ヴァンパイアの一部とイグリッド族の一部の者が来ている。

 それぞれの一族の者達は、それなりの地位の者達が集まっている。

 対して考助たちは、フルメンバーがそろっていた。

 考えてみれば、こんなパーティ形式でメンバーが集まって食事をすることなど、初めてのことである。

 何気に全員が忙しく動いているので、管理層でも全員がそろって食事をすることなど珍しいのだ。

 そのメンバーたちは、シュレインとミツキを除いて、様々な者達に話しかけられている。

 全員が集まった時に、塔の管理者メンバーであることは既に伝えてあるので、ひっきりなしに話しかけられていた。

 勿論考助もそれは例外ではなかった。

 というより、最初は考助に話しかけてくる者が多かった。

 現在は、それも落ち着いて、他のメンバーの方へ行っているという感じである。

 元々あまり社交的ではない考助だったが、周囲の者達もそれを見抜いたのか、無難なあいさつ程度の会話で終わっていた。

 というわけで、今考助の周囲にいるのは、シュレインとミツキ、それにヴァミリニア一族の数名とイグリッド族の数名であった。

 

「・・・・・・ということは、やはりあなた方でもヴァミリニア宝玉は作れないと?」

「作れる作れないとか、それ以前の問題だべ。そもそもどういった材質で出来ているかすら、見当もつかなかった」

 話題は、ヴァミリニア宝玉に関してである。

 最初は城の話をしていたのだが、イグリッド族の者が宝玉を見たことがあるという話から作れるかどうかと、考助が聞いたのだ。

「うーん。そうなのか」

 腕を組んで考え込んだ考助に、シュレインが口を挟んできた。

「・・・何だ、コウスケ殿、宝玉に興味があったのか?」

「興味というか、同じものが出来たら別の階層で使えないかなと思ったんだけど?」

「ああ、なるほど、そういう事か。とは言え、そういうことなら吾も力になれんのう」

「・・・そうなの?」

 元々はヴァミリニア一族に伝わっていたお宝だ。

 どういった経緯で手に入った物かくらいは、伝わっていてもおかしくはないと思ったのだ。

「ああ、あの宝玉はのヴァンパイアという種族の祖先が生まれた時に、一緒に渡された物と伝わっておる」

「ヴァンパイア種が出来た時って・・・」

「まあ、神の中の誰かだろうな。それが誰かは、古すぎて伝わってすらいないがの。・・・あるいは、もう既にいない神なのかもしれんの」

 アースガルドにおいての神は、千差万別で存在しているがゆえに、長い時を経て名前が語られなくなる神もいる。

 だが、それ故に考助はその話に違和感を持った。

「・・・うーん。それって、何かおかしくない?」

「おかしいかの? すまんが、吾にはわからんの」

 子供の時から聞かされてきた話である。

 それが当たり前だと思い込んでいるために、考助のような違和感は浮かんだことすらなかった。

「いやだって、一つの種族が生まれるのに関わった神様なのに、他の種族はともかくヴァンパイア一族にその神様の名前が伝わっていないっておかしくない?」

「・・・ふむ・・・言われてみれば、確かに。・・・いや、だが他の種族、例えばヒューマンとて作った神はいるはずだが、その名は伝わってはおらんぞ?」

 もしいるとすれば、ヒューマンの中の一神教の神として伝わっていてもおかしくはない。

 だが、現実としてこの世界での神の扱いは、あくまでも何かを司っている存在だ。

 例えば、エリサミール神は太陽、ジャミール神は月といったように。

「うーん。・・・まあ、そこは今は考えてもしょうがないか。本当に知りたくなったらシルヴィア辺りに聞いてもらえばいいだろうし」

 誰に聞くのかは言わずもがなである。

「まあ、そうであろうな。あの御仁であれば、答えてまずいことは答えんだろうしの」

 シルヴィアとエリスの交神の実情を知っているシュレインと考助は、そろって苦笑した。

 

「話がだいぶ脇道にそれたな。それで結局、何で出来てるかは分からないのか・・・」

「ああ、いや。誤解させてしまったかの? 元の材質は分からんが、どういった力で成り立ってるかは、ある程度推測できるぞ?」

「・・・へ? どういう事?」

「要は世界樹と同じことだ。世界樹は地脈の力をもとに成長するが、宝玉も似たような力をもとに成長する」

「似たような力?」

 考助は、シュレインの言葉に、首を傾げた。

「地脈の力が聖力の流れだとすれば、その対極の力は何かの?」

「・・・魔力?」

 考助の回答に、シュレインは満足そうに頷いた。

「うむ。正解だの」

 二人の会話に慌ててイグリッド族の一人が口を挟んできた。

「ま、待った。あの宝玉が、魔力の塊だとしたらかなりの魔力を込めんといけんぞ?」

「うむ、そうだの。だから、この短期間でここまで城が成長したのは、間違いなくコウスケ殿のおかげだの。吾の力だけでは、とてもとても無理だ」

「・・・そういや、さっきもそんなこと言ってたな」

 なんとなく話の矛先が、やばくなってきたことを感じ取った考助である。

「うむ。勿論、あっち行為のおかげでもあるのだが、それ以外にも時々とは言え、血をもらえているのが大きいの」

「・・・・・・は?」

 今までに何度か、シュレインに請われて血を与えたことはある。

 しかしそれが城の成長の力になっているとは、思っていなかった。

 以前にシュレインから、ヴァンパイア一族が血を飲むのは、嗜好品としてと聞いていたからである。

「・・・あれ? そんなこと言ってたっけ?」

「いや、初めて言ったかの」

 さらりと言ったシュレインに、考助は思わずジト目になった。

 心境としては、なぜそんな重要なことを言わない、と言った感じだろう。

「そんな顔をするな。心配せずとも必要な時に、必要な量はもらえておるよ。お主に言っておったら余計な気をまわしておっただろ?」

「それは・・・まあ、そうかな?」

「吾とて、そんな事でコウヒ殿やミツキ殿に睨まれたくないからの」

 シュレインはそう言って、傍にいたミツキに笑いかけた。

「あら。私だって、生活に影響を与えない位だったら、止めたりはしないわよ?」

「わかっておる。だからこそ今、この城はここまで成長できたんだからの」

 感謝しておる、とシュレインは頭を下げた。

 その様子に考助は慌てて、

「いや、待って待って。そこで頭を下げるのはおかしい。そもそも城・・・というか、宝玉の成長は塔にとっても必要なことなんだし」

「そうね。必要だわね」

「うむ。・・・まあ、そうなんだがの。何分、吾にとっては、お主の血をもらえることは、役得もいいところだからの」

 シュレインにとって、考助の血は極上の品だと、血をもらうたびに、考助に言っているのである。

 流石にその台詞には、考助も苦笑いである。

 ちなみに今の考助は、シュレインに血を吸われることに対して、ほとんど抵抗はなくなっていた。

 

「・・・そうです~。シュレイン様ばっかり、ずるいです~」

「そうだ~!」

 突然、考助たちの会話に、ヴァンパイアの女性達が交ざってきた。

「・・・・・・ええと?」

 考助は、意味が分からずに首を傾げた。

「お前たち・・・」

 対するシュレインは、渋い顔をした。

 話しかけて来た女性たちは、幾分か酔いが回っているようである。

「私たちは、話に聞くばっかりで、シュレイン様だけが血を独占しているのです」

「私たちも至宝の血を味わってみたいのです」

「私たちにも、コウスケ様の血を~」

 口々にそう言ってきたヴァンパイアたちを見た考助は、慌ててその場から離れることしかできなかったのであった。

2014/5/26 誤字訂正

2014/6/19 誤字訂正

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