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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第7章 塔の仲間と交流しよう
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1話 城の成長

久しぶりのシュレインです。

 ジャミール神に拗ねられたため、慌てて第四十七層に人員を一人配置して、ついでにその人物が住むための住居も設置した。

 <月の祭壇>の管理さえできればいいので、人手は一人で十分である。

 シルヴィアに神職に就いている知り合いがいないか聞いてみたところ、神殿の権力争いに嫌気が差して神官を止めてしまった人物がいたので紹介してもらった。

 その人物、ジンは初老に差し掛かった人物であった。

 ジンは隠居生活をして過ごす予定だったようだが、シルヴィアに請われて話を聞いた上で、それなら、ということで来てくれたのである。

 本人としては、誰にも気を遣わずに過ごせるのが嬉しいということだった。

 ついでに<月の祭壇>は、ジャミール神と交神が行える場所である。

 神官という立場から見ても、それなりに魅力的な場所であるとのことだった。

 もともと一人だけを配置する予定だったのだが、ジンの年齢を考えて、一人孤児だった男の子を付けることにした。

 せっかくなので、後継者にしてもらえれば、なおいいと思ったのである。


 それらの手配を済ませて、シルヴィアと一緒に管理層に戻った考助は、寛ごうとして広間に向かうと、珍しくシュレインに捕まった。

「コウスケ殿、少し吾に付き合ってくれんかの?」

「え? いや、良いけど、どうかした?」

「なに。少しの間でいいから城に、というか宝玉の所に来てほしいのだ」

 シュレインの突然の申し出に、若干首を傾げた考助だが、すぐに同意した。

「いいよ」

「そうか、それはよかった!」

 何故だか妙に嬉しそうにするシュレインに、もう一度首を傾げた考助だった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考えてみれば、考助がヴァミリニア城に来るのは久しぶりのことであった。

 ヴァンパイア一族は、そもそも直接会うような用事もほとんどない。

 最初のころは、クラウンの商業部門との仲立ちもしていたのだが、数回でわざわざ立ち会うこともなくなったのである。

 ましてや、転移門が出来てからは直接第七十六層へ向かう用事もなくなったのである。

 考助にしてみれば、シュレインが第七十六層をきちんと管理してくれていたので、わざわざ口を挟みに行く必要もなかったのだ。

 そんなわけで、かなり間をあけての訪問となったのだが、久しぶりにヴァミリニア城を見た考助は、口をあんぐりと開ける羽目になった。

 元々かなりの大きさを誇っていたヴァミリニア城だが、あり得ないくらいの拡張がされていたのである。

 それはもう拡張というレベルではなく、別の城と言ってもいいくらいの変貌を遂げていた。

「・・・・・・何、これ?」

「コウスケ殿が、悪いのだぞ? ほとんどこの層には寄り付かないからの」

 呆然とした考助に、シュレインが少し拗ねたように言った。

「・・・いや、ごめん。あの宝玉に関しては、ほとんど口出しできることはなかったし・・・いや、これじゃ言い訳にもならないか」

「ああ・・・いや、すまん。別に責めているわけではないのだ」

 一人で反省し始めた考助に、シュレインが若干慌てた。

 そもそも管理層では、二人はほぼ毎日のように会っているのだ。

 その場で報告も出来たのだが、それをしてこなかったのだからある意味でシュレインのせいでもある。

 結局のところどっちもどっちなのであった。

 

「前にも少し話したと思うが、ヴァミリニア城は宝玉の<格>に合わせて変化する性質があっての。宝玉の<格>が順調に成長したから、ここまで城も大きくできたという事だの」

「そうなんだ」

「・・・他人事のように言っておるが、コウスケ殿も関わっているんだがの」

 少し悪戯を仕掛けるように笑みを浮かべたシュレインに、考助は首を傾げた。

「・・・へ? そうなの?」

 考助にしてみれば、ヴァミリニア宝玉に関しては、全くと言っていいほど手を出していない。

 完全にシュレインに、任せていたのだ。

 シュレインに頼まれて、召喚陣やらちょっとした自然物を設置したりはしたが、それ自体は大したptを使っていない。

 それらが、宝玉の成長に関わっているとは、思っていなかったのである。

「ああ、もちろんそれらのこともあるがの。それらは、想像通り大したことは無い。ここまで成長できたのは、前にもいったと思うが、吾との夜の営みのおかげだの」

「・・・え!? そ・・・そうなの!!!?」

「こんなことで、嘘をついてどうする? それに、前にも言っただろ?」

 確かに以前、宝玉の成長に考助とのナニが関わっているということは聞いていた。

 だが、それは神力というか、宝玉の<格>に関してだけで、城そのものが成長するとは思っていなかったのだ。

「いや、そうなんだけど・・・流石に予想外すぎて」

「まあ、ぶっちゃけてしまうが、コウスケ殿の精は、我にとっては血を吸うのと変わらない、というかそれ以上の力になったようでの。それに合わせて、宝玉の<格>も上がっていった」

 シュレインの力そのものとも言えるヴァミリニア宝玉は、その持ちシュレインの力が上がれば、それに合わせて当然<格>も上がる。

 宝玉の<格>が上がれば、城の<格>も上がるというわけで、城自体もここまで成長(?)したというわけである。

 ついでに言えば、宝玉の<格>が上がったということは、シュレインの力が上がったということになる。

「・・・ええと、それは、あれなおかげで、シュレインの力も上がったってこと?」

「そういうことだの」

 照れることなく答えるシュレイン。

 それを見た考助は、何となく嫌な予感を覚えた。

「あの・・・もしかしなくても、一族の皆さんは、それを・・・?」

「勿論知っておるぞ?」

 あっさり断言したシュレインに、考助は逃げ出そうと反転した・・・が、何者かがその考助を捕まえた。

「はっはっはっ。ここまで来て、逃げるなんて、許しませんよ。諦めてください」

 いつの間に現れたのか、シュレインの側近の一人であるゼネットが現れて、考助の腕を捕まえてたのである。

「・・・・・・勘弁してもらえませんかね?」

「済みません。皆が貴方に会えるのを楽しみにしているのです。諦めて、歓待されてください」

 考助は、助けを求めるようにシュレインを見たが、両手を合わせながらこちらを見ていた。

 さらに一緒に来ていたミツキを見たが、こちらは完全に面白いものを見る表情になっていた。

 助け舟が来ないことを悟った考助は、諦めたように溜息を吐いた。

「・・・わかりました。もう逃げませんから、放してください」

 ゼネットは、未だ考助の服をつかんだままだった。

「おや。これは失礼しました」

「まあ、コウスケ殿が思っているようなことは起こらなんよ。皆ただ単純に、コウスケ殿に感謝したいだけだの」

「・・・感謝?」

 考助にしてみれば、そこまで感謝されるようなことをした覚えはない。

「何を言うておる。散り散りだった一族がこうして集まれたのは、間違いなくコウスケ殿のおかげだぞ?」

 シュレインの言葉に、ゼネットが同意するように頷いていた。

「ましてや、これだけの城を持てましたからね。歴代の王でもトップを争うほどでしょう」

「へー・・・そうなんだ。・・・って、そう言えば、歓待ってことは料理とかも出る?」

「勿論用意しております」

「・・・という事は、他のメンバーも呼びたいな」

「それなら吾が呼んで来よう。ゼネットは、コウスケ殿とミツキ殿の案内を頼む」

「かしこまりました。コウスケ殿、ミツキ殿、こちらになります」

 ゼネットは、一度シュレインに対してきれいに頭を下げて、考助たちを歓待会場(?)へ案内したのであった。

決して忘れていたわけではアリマセンが、何となく話の流れで登場させる機会がありませんでした。

思った以上に話が伸びたので、次もシュレイン話が続きます。


2014/5/11 6章2話との矛盾点を修正

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