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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 スライム!
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(6)セーフティエリア

 第四十三層でスーラの戦いぶりを見た考助たちは、そのまま戻るのではなくセーフティエリアを目指した。

 ちなみに、受けた依頼の討伐は先に終わらせている。

 考助とリクが、『烈火の狼』のメンバーたちが受ける衝撃のことを考えて、そうするようにしておいたのだ。

 案の定、カーリを筆頭に他のメンバーたちは、スーラの戦いに意識を取られてしまい、探索を続けるどころではなくなっていた。

 勿論、トップクラスのパーティであるので、いざ戦闘になればスーラのことを忘れて集中することはできるが、だからといって今の状態で塔の階層をうろつくほどリクも無謀ではない。

 ある程度のところで見切りをつけて、考助に相談した結果、セーフティエリアに戻ることにしたのだ。

 さらに、考助にもそれ以外の目的があったので、すぐにリクの提案を受け入れた。

 

 セーフティエリアにある宿屋に入った考助たちは、すぐに部屋を予約した。

「・・・・・・本部には戻らないのか?」

「ああ、うん。ちょっと他にも付き合ってほしいことがあってね」

 考助がそういうと、確認してきたリクが頬を引きつらせた。

「なにか、嫌な予感がするんだが?」

「おっ! 鋭い!」

「・・・・・・何を考えているんだ?」

 若干引き気味になっているリクに、考助は苦笑しながら答えた。

「そんなに警戒しないでよ。この際だからとことんまで常識を壊してもらおうと思ってね」

「・・・・・・お手柔らかに頼む」

 カーリたちを見ながらそんなことを言った考助に、リクはなんと答えるべきかとさんざん悩んだ挙句にそう答えるのであった。

 

 

 宿の部屋に入る前に、考助は『烈火の狼』のメンバーに次のような指示を出していた。

「部屋に装備の類を全部おいてきてからもう一回集合ね」

「父上?」

 唐突なその指示にリクはいぶかし気に首をかしげたが、考助はそれには答えずニンマリと笑うだけだった。

「理由はあとで分かるから。とにかく、短剣とかの類も全部だめだから気をつけてね。・・・・・・隠れて持って行こうとしても無駄だから、素直に部屋においてきた方がいいよ」

 考助はそれだけを言って、リクたちに部屋に行くようにひらひらと手を振った。

 

 奇妙な考助の指示に、部屋に向かう途中でカーリがリクに近寄って聞いていた。

「どういうこと?」

「さあ? とりあえず、いうことは聞いた方がいいと思うぞ?」

 リクも考助がこれから何をするつもりなのかは聞いていない。

 そのため、なぜ装備を置いていくことになるのかは分からないのである。

「しかし、装備を手放すのは・・・・・・」

 渋い顔でそう言ったアンヘルに、リクは肩をすくめた。

「それなら部屋で休んでいればいい。父上も無理に全員来いとは言っていなかったからな」

「それでいいのか?」

「別に構わないだろうさ。ただ、スーラのことからも分かると思うが、父上がこれから何をしようとしているのかは見ておいた方がいいと思うぞ? こんな機会は滅多にないだろうし」

 考助が管理層にいるメンバー以外にこういうことを言い出すのは、リクが言った通り滅多にあることではない。

 折角の機会なのだから活かすべきだというリクに、メンバー全員が押し黙りそれぞれ考え込むような顔になった。

 そんな仲間たちの顔を見て、リクはこれ以上の説明はしようがないとばかりに、自分にあてがわれた部屋に歩き出すのであった。

 

 結局、リクの仲間たちは全員が装備を外した状態で集まった。

 常に自分たちを驚かせている考助が、何をしようとしているのか気になったのだ。

 武器を持たずに現れたメンバーに、考助は満足げに頷いたが、そばにいたミツキがその肩を叩いて首を左右に振った。

「ん? どうかした?」

 ミツキは考助のその問いには答えず、まっすぐにエディを見た。

「そこの。考助様は、全ての装備を外すようにと行ったはずよね?」

 にこりと笑ってそう言ってきたミツキに、エディは顔をひきつらせた。

「いや、これは・・・・・・」

「あなたが一緒に行かないというなら別にいいのよ。あなただけがお見送りということでいいわよね?」

「エディ!」

 ミツキの駄目押しとリクの声に、エディはしぶしぶといわんばかりの顔になった。

「・・・・・・分かったよ。きちんとおいてくるから待っていてくれ」

「それはいいけれど、次も何か隠して持って来たら容赦なく置いていくからね。ああ、ミツキを相手に短剣とかを隠せると思わない方がいいよ?」

 武器を隠し持ってきていたエディに、考助はそれだけを言って、隠していたことについては特に何も言わなかった。

 一流の冒険者パーティともなれば、ひとりくらいはその程度の用心はして当然だという考えがあるからだ。

 勿論、次に同じことをすれば、容赦しないのはミツキが言った通りなのだが。

 

 部屋から戻ってきたエディは、しっかりとすべての武器を置いてきたのか、今度はミツキも何も言わなかった。

 それに対してリクは安堵の表情を浮かべ、考助はそのまま宿屋のカウンターへと向かった。

 近付いてくる考助に首をかしげていた宿の職員が顔色を変えたのは、考助が差し出したカードを見てからだ。

「し、失礼いたしました! ご用件は何でしょう?」

 カウンターのある部屋中に響きそうな声を出しながら、その職員(女性)は直立不動になる。

 基本的にセーフティエリアにある施設で働いている職員は、クラウンが買い取っている奴隷になる。

 そのため直接の雇用者は考助となり、そのカードの意味はしっかりと教えられているのだ。

 

 女性職員の態度に苦笑を浮かべた考助は、

「うん。まあ、いまは誰もいないからいいけれど、次からは普通の態度で接してね」

「で、ですが!」

「気持ちはわからなくはないけれど、もし知らない人の前でそんな態度を取られたら騒ぎになるからね」

 考助がそういうと、その女性はハッとした表情になったあと、深々と頭を下げた。

「・・・・・・申し訳ありませんでした」

「いや、いいんだよ。次から気をつけてもらえれば」

 考助は穏やかに笑いつつ、心の中では要改善と思っていた。

 ただ、それはいまここで言うべきではなく、あとでシュミットあたりに報告すべきことだと考えているのだ。

 

「それよりも、奥にある転移陣、使わせてもらうよ?」

「転移陣ですか? それは構いませんが・・・・・・」

 女性職員は、そう言いながら『烈火の狼』の面々へと視線を向けた。

 彼女が何を言いたいのか察した考助は、頷きながら答える。

「彼らも使わせるけれどね。心配しなくていいよ。ちゃんと僕が一緒にいたと報告すれば大丈夫だから」

 基本的にセーフティエリアにある施設に置かれている転移陣は、そこで働く職員しか使えないことになっているのだ。

 考助の許可を得たことで、女性職員は安心した表情になって頷いた。

「それでは、何も問題ありません」

「そう? それじゃあ、通してもらうね」

 考助はそう言いながらリクたちに向かって手招きをした。

 そして、彼らを連れてカウンターの奥の部屋に設置されている転移陣を使って、本部へと戻った。

 そこからさらに、普通は使うことができない場所にある転移門を使ってとある階層へと向かうのであった。

スーラの出番がありませんでした><

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