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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 塔のあれこれ(その16)
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(14)お疲れ?

 第八層での神威召喚とその後の話し合いを終えた考助は、くつろぎスペースのソファでぐったりとしていた。

 考助のおなかの上では小型化したナナが寝そべっており、考助の右手はナナの背中を撫でている。

 その考助の手が気持ちいいのか、ナナが考助のおなかの上で、大きなあくびをした。

「眠いんだったら寝てもいいよ。というか、僕も眠い・・・・・・」

 すでに半分以上眠るつもりになっていた考助は、ナナに向かってそんなことを言いながら目を閉じた。

 考助を見て、ナナも上げていた頭を考助の身体にぺたりとつけて、同じように寝る態勢になった。

 そんなひとりと一匹の様子を、フローリアが少し離れた場所から見守っていた。

 普段の考助は大抵こんな感じで寝ていることが多いので、フローリアにとってはいつもの光景ともいえる。

 ただし、慣れた光景とはいえ見ていてほのぼのするのはいつものことだ。

 そして、考助たちから視線を外したフローリアは、再び視線を手元の本へと向けるのであった。

 

 考助とナナが心地よい眠りについている最中に、くつろぎスペースにシルヴィアが入ってきた。

 考助たちが寝ているソファは、部屋の目立つ位置においてあるので、ひとりと一匹の様子はすぐにシルヴィアの視界に入ってきた。

 一瞬だけ目を細めて微笑んだシルヴィアは、すぐにフローリアの座っているソファに近付いて行った。

「・・・・・・お疲れでしょうか?」

 小声でそう聞いてきたシルヴィアに、フローリアは読んでいた本から視線を上げて首を傾げる。

「どうかな? いつもと変わらないようにも見えるが、神威召喚で疲れたか?」

「神威召喚もそうでしょうが、そのあとの話し合いもありましたからね」

 ラゼクアマミヤやクラウンとの調整もそうだが、ここ数日は他の女神たちの召喚をどうするかもエリスたちと話し合っている。

 うんざりではないが、微妙に疲れた様子を考助が見せていたことも、ふたりは気付いていた。

 

 心配そうな視線を考助に向けたシルヴィアに、フローリアが安心させるように小さく笑った。

「なに。もし本当に疲れているなら、そう言うだろうさ。というよりも、コウヒかミツキが見逃すはずがない」

 そんなことを言いながらフローリアは、視線をミツキへと向けた。

 考助が寝ているソファの前で腰を下ろしていたミツキは、フローリアから視線を受けて小さく肩をすくめた。

 その顔を見て、シルヴィアも安心したように小さくため息をついた。

 こういうときの判断は未だにふたりには敵わない。

 悔しいという思いもなくはないが、それ以上にふたりに任せておけば大丈夫という安心感があるのも確かだった。

「・・・・・・そうですね」

 色々な思いを込めてそうつぶやいたシルヴィアは、先ほどのフローリアと同じように持ってきた本を手に取り読み始めた。

 

 

 結局、くつろぎスペースで寝入った考助が起きたのは、夕食直前になってコウヒが身体を揺さぶったときだった。

「・・・・・・ん? あれ、コウヒ? どうしたの?」

「もうすぐ夕食のお時間です」

「えっ!? うそっ!? もう夕食?」

 考助としては一時間程度寝てからあとはのんびり本でも読んで過ごそうと思っていたので、まさかそんなに時間が経っているとは思っていなかったのだ。

 ちなみに、すぎている時間に驚いた考助が勢いよく上体を起こしていたが、上に乗っていたナナは、あわてず騒がず絨毯の上に着地している。

 何気なくその様子を見ていたミアが、内心で感心していたことには誰も気づいていなかった。

 

 ソファの上で考助は、悔しそうな表情になった。

「失敗したなあ。読みたい本があったのに」

 折角空いた時間を使って魔法陣関連の本を読むつもりだったのだが、すっかり予定が狂ってしまった。

 勿論、何も言わずに寝入ってしまったのは自分なので、周囲を責めるような愚か者ではない考助は、諦めたようにため息をついて首を左右に振った。

「まあ、仕方ないか。気持ちよく寝られたし」

 特に疲れているという自覚はなかったが、気づかず寝ていたということは、それだけの理由があるのだと思うことにした。

 ソファの上で寝ていて固まった体をほぐすようにいろいろと身体を動かしていた考助は、すぐにお腹がなったことに気付いて苦笑しながら立ち上がった。

「やれやれ。寝ていても腹時計は正確って、どういうことだよ」

 考助のその呟きに、くつろぎスペースにいた他のメンバーたちは、それぞれ苦笑したり口を押えたり思い思いの反応を返すのであった。

 

 

 食堂に着いた考助は、テーブルの上に乗っているある物を見て目をぱちくりとさせた。

「あれ? 珍しいね。お酒、飲むの?」

「なに。たまにはいいのではないかと思ってな」

 フローリアが、いつまでも起きてくる気配のない考助を見て、寝酒よろしく飲んでおこうかと用意したのだが、わざわざそんなことを申告するつもりはない。

 フローリアの意図を察したミツキも、しっかりとお酒に合うような夜食を用意していたりするのだが、残念ながら考助はそんなことにはまったく気づいていない。

 ミツキもフローリアも、考助に気付かれないように用意したので、そのことについてどうこう言うつもりは全くなかった。

 むしろこのまま気付かれずに済めばいいと思っている。

 そのため、ふたりの意図に気付いているメンバーは、余計な口出しをしないように前もって話を通していたりするのだ。

 

 そんな裏話(?)があるなんてことはつゆ知らず、考助は自分の席について料理を食べ始めた。

「・・・・・・うん。やっぱりおいしいね」

「そう? ありがとう」

 特に飾っているわけでもない考助の素直な感想に、ミツキはどうということもない表情でお礼を言った。

 実はその内心は、考助に褒められてドキドキしていたりするのだが、当たり前のように考助は気付いていない。

 ただし、この場合は気付いていないのは考助だけではなく、コウヒを除いたほとんど全員なので、考助だけを責めることはできないのだが。

 さらに付け加えれば、考助に褒められたミツキを見ていたコウヒが、内心で悔しく思っていたりするのだが、それも同じようにミツキを除けば誰も気づいていない。

 恐らく、この先も両者以外は誰も気づくことのないやり取りだろうが、コウヒもミツキも自分たちから敢えて教えるようなことはしないだろう。

 

 この日は、用意された料理を堪能したあとは、ある程度テーブルを片付けて晩酌となった。

 どちらかといえば夜食に続く二次会という雰囲気ではあるが、管理層にいるメンバーで酒に飲まれるほどの量を口にする者は誰もいない。

 それぞれのペースで飲み進めていき、どうでもいい雑談がメインとなる。

 夕方ごろの考助の様子は、今いる者たち全員がしっているので、敢えて小難しい話をしていないというのもある。

 もっとも、いくら考助たちとはいえ、毎日毎日重要な話をしているわけではない。

 大抵はこうしてどうでもいい雑談をするのが常なのだ。

 それは、今日のようにお酒がはいっていても、もしくは入っていなくても変わらない。

 

 考助に気付かれないままお疲れ様会(?)が進んでいき、そのうちにいつの間にかお開きとなる。

 それは、管理層の夜でお酒が出されるときのいつものパターンなのであった。

最近いろいろと忙しそうにしていたので、なんとなく無駄話を書いてみました。

他の女神たちを召喚することが決まっている考助の、つかの間の休息といったところでしょうかw

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