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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 塔のあれこれ(その16)
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(7)のんびり休暇

「かんぱーい!」

 考助のよく知る和風の部屋に、考助たちの声が響いた。

 いま考助たちがいるのは、狐のお宿の一室で、ワンリに招かれてきていた。

 この場にいるのは、考助、コウヒ、ミツキ、シュレイン、シルヴィア、フローリアの六人だ。

 コレットとピーチは、子育てと諸般の事情により来ることができなかったのである。

 子育てだけなら乳母役に任せて一緒に来ることもできたのだが、どうしても代われない役目がでたので仕方ない。

 結果としてこのメンバーで来ることになったのだ。

 

 目の前に出された食事に舌鼓を打ちながら、考助たちはそれぞれの感想を言い合っている。

「これは美味しいなあ」

「そうじゃの。さすがに街中に評判になるだけのことはあるの」

 考助がそう感心すれば、シュレインも満足げな表情で頷いている。

 狐のお宿に出されている食事は、狐たちが調理したものだ。

 考助たちが満足できるほどの料理が出されているのは、料理担当の狐たちと調理の仕方を教えるミツキたちの努力が重なった結果である。

 そういう意味では、狐のお宿の調理担当は、間違いなくミツキの弟子と言っていいだろう。

 もっとも、ミツキはミツキで忙しい(主に考助の護衛で)ので、そこまで時間をとって教え込んでいるわけではないのだが。

 

 考助たちがいる部屋の一角で、ホッとした表情を見せたワンリに、考助が笑いかけた。

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」

「うむ。街であれだけの噂になるだけのことはある」

 第五層の街では狐のお宿のことを知らないものはいない、というくらいに噂が広まっているが、それは立派な建物だけではなく、そこで出されている料理にも注目が集まっているのだ。

 もしそうした特徴がなければ、ただの物珍しさだけで終わってしまい、ここまで噂されるということはなかっただろう。

 フローリアの言った通り、そうした関心が高いからこそ、狐のお宿ができてから今まで人気を保つことができているのだ。

「慢心してはいけませんが、いまのようにそれぞれが高い技術を持っていれば、飽きられることはないでしょう。ワンリはもっと自信を持っていいと思いますよ?」

 考助たちと同じように料理を楽しんでいたシルヴィアの言葉に、その場にいたワンリ以外の全員が頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦ 

 

 料理を十分に堪能した考助たちは、続いて貸し切りの温泉へと向かった。

 ちなみに、考助たちが泊まっている部屋は、本館とは離れた場所にある離れで、温泉も通常客の大浴場とは別になっている。

 勿論、離れに泊まっているお客は、大浴場に入ることができる。

 狐のお宿にある温泉は、狐が自前で見つけてきた源泉から魔法を駆使して土木工事をしながら引っ張ってきている。

 ただし、土木工事といってもよくあるチートスキルとは違って、サクッと出来るものではなく、地道に用意したものだ。

 それだけ手間がかかっているのだが、狐は基本的にそれらを楽しんで用意しているので、苦労したとか辛かったと思っている者は少なかったりする。

 どちらかといえば、遊びの延長で用意したといったほうが近いだろう。

 

 考助たちは、狐たちが頑張って作った露天風呂に、手足を伸ばしながらゆったりとつかる。

「やはり温泉はいいものだな」

「そうですね。昔は入る機会はあまりありませんでしたが、いまとなっては病みつきです」

 フローリアの感想に、シルヴィアも頷きながら答えた。

 その横ではシュレインも言葉に出さずに大きく頷いている。

 モンスターが出現するこの世界では、温泉はともかく、露天風呂という習慣はない。

 そのため、一般の者たちには温泉そのものもあまり馴染みがなかったりする、

 ただし、シュレインたちは、考助の風呂好きにつられてちょこちょこ入りにいっているため、いつの間にか馴染みのあることになっていた。

 

 しみじみとした様子で言ったシルヴィアに、考助は満足げに頷いた。

「シルヴィアが温泉好きになってくれて、僕もうれしいよ」

「何を言うておる。イグリッドの者どもにわざわざ地下の泉源を探させて町に引っ張り込ませたのはそなたじゃろう?」

 シュレインが言った通り、ヴァミリニア城下町にわざわざ温泉施設を作らせたのは、考助の指示だ。

 もっとも、考助も最初から作るつもりがあったわけではない。

 ふとしたときに、イグリッドたちに温泉に入る習慣があると知って、わざわざ街まで引っ張っれることを知ったのだ。

 温泉好きが多かったイグリッドたちも、これ幸いとばかりに地下にある泉源を掘り当てて、町に施設を作ったというわけだ。

 呆れた表情で言ってきたシュレインを見て、考助はわざとらしく大真面目な表情になって頷いた。

「そうだね。シュレインもすっかりはまってくれたみたいで嬉しいよ」

 考助は、すっかりと温泉にはまったシュレインが、ヴァミリニア城にいるときはほぼ毎回通い詰めていることを知っている。

「うぐっ。ま、まあ、皆も喜んでおるからいいではないか」

 そんなことを言いながら考助から視線を逸らしたシュレインを見て、他の者たちは笑い声を上げた。

 

「・・・・・・出来ることなら、第五層にも温泉施設は作ってみたいが・・・・・・」

「一応、水脈調査とかはしたんだよね?」

 しみじみと言ったフローリアに、考助が顔を向けた。

「うむ。だが、残念ながら第五層には泉源はないという結論だったからな」

「それは残念。でも、別に第五層にこだわる必要はないよね? ナンセンの辺りにはなかったの?」

 ナンセンは大きな山脈の麓にある町だ。

 第五層からは転移門を使えば一瞬で行くことができるので、移動で不自由することはないはずである。

 だが、そんな考助の言葉に、フローリアはきょとんとした表情になった。

「なぜナンセンなのだ?」

「あれ? 温泉は、わざわざ地下から掘り当てなくても、山の麓とかに湧きやすいんだけれど、知らなかった?」

「そうなのか!? ・・・・・・いや、確かにもともとある温泉地は、そういった場所が多いな」

 一度は驚いた顔になったフローリアだが、すぐに温泉の有名どころを思い浮かべて頷いた。

 温泉に入りに行くという習慣は少ないこの世界でも、わざわざ水を沸かさなくてもいい温泉は、地元の者たちには使われていたりする。

 観光地化することはなくても利用価値はあるので、王族であるフローリアはある程度知っているのだ。

 

 フローリアが真剣な表情で考えようとしたところで、シルヴィアが苦笑しながら口をはさんできた。

「そう言ったお話は、またあとにしませんか? こちらには、寛ぎに来ているのですよね?」

 シルヴィアの言葉に、考助たちは苦笑を返した。

 どうしても話題がそうした方面に行ってしまうのは、考助たちの悪い癖である。

 シルヴィアの言う通り、今回は寛ぐために来ているのだ。

 そうでなければ、折角の機会を用意してくれたワンリに申し訳ないことになる。

 シルヴィアの言葉で意識を切り替えた考助たちは、このあとは温泉にゆったりとつかるのであった。

 

 おいしい料理を食べ、温泉に使ってゆったりと過ごした考助たちは、一泊二日の日程を終えて管理層へと戻った。

 考助たちが宿を出るときに、従業員一同でお見送りされたときに、他のお客に目を丸くされたのはご愛敬だ。

 管理層に戻ってからワンリに細かいところの指摘をしたりはしたが、考助にとっては十分に満足できる二日間なのであった。

以前にどこかで書いたことのあるような気がする温泉の話でしたw

かぶってたらすみません><

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