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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 塔のあれこれ(その16)
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(3)→ 百合之神宮

 百合之神社で話を終えた考助は、管理層に戻ってすぐに三つの神社を設置した。

 場所は、ユリが指示によって、百合之神社とつながっている地脈の上になるようにした。

 方角でいえば、百合之神社の北、南東、南西にそれぞれひとつずつだ。

 ついでに、百合之神社を除いたそれぞれの神社を線でつなぐと、正三角形になる。

 百合之神社は、三つの神社のちょうど中心になった。

 考助が塔の機能を使って第八層に手を入れるのはこれだけだ。

 あとは、ユリが地脈を使って自分の力を送り込んで、自らの一部となるように調整するだけである。

 といっても、建物に力が定着するまでに半月ほどかかるということで、その間は三つの神社は出入り禁止になっている。

 建物の中で活動している存在があれば、力の定着により時間がかかるとユリに言われたので、そういう方針となったのだ。

 エリたちはわざわざ立ち入ることはしないだろうが、問題は第八層にいる狐だ。

 彼らには、ワンリを通じて神社には入らないように伝えると同時に、念のため考助が作った結界で誰も入れないようにしておいた。

 

 新たに作った神社はユリに任せることにして、その間に考助は今後神社に関係する者と話し合いをすることにした。

 具体的には、実際に神社を清めることになる考助が加護を与えている五人(ココロ、リリカ、サラサ、セシル、アリサ)とガゼランとシュミット、あとはトワである。

 トワまで呼んでいるのは、第五層に設置した神殿のことで、やってもらいたいことがあるからだ。

 考助がこうして管理層に人を呼び寄せるのは久しぶりのことなので、内容を知っているセシルやアリサ以外は、何事があったのかと驚いていた。

 そんな彼らの顔を見回した考助は、苦笑しながら話し始めた。

「そんなに大した話じゃないから、そこまで緊張しなくてもいいよ」

 軽い調子でそう言ってきた考助を見て、集まった面々は少しだけ肩の力を抜いた。

 それでも完全にだらけないのは、これまでの考助のやらかしたいろいろがあるからだろう。

 それに気付いていた考助だったが、敢えて気付かなかったふりをしながらシルヴィアを見た。

 

 考助に視線を向けられたシルヴィアは、ひとつ頷いてから今回の計画について話し始める。

 シルヴィアが話をすることになったのは、計画を立てた張本人だからだ。

「もうすでにセシルとアリサには話してありますが、このたびアマミヤの塔のとある階層で、ちょっとした改変が行われることになりました」

 そう前置きしたシルヴィアは、第八層に三つの神殿を加える計画を話す。

 階層を曖昧にしていったのは、神社のある場所がどの階層かを特定されないようにするためだ。

「・・・・・・というわけで、三つの神殿が一気に増えますから、それを管理する者としてリリカ、サラサ、セシル、アリサの四人に任せたいと考えております」

「なるほど」

 ガゼランが、自分が呼ばれた理由を察して頷いた。

 サラサ、セシル、アリサは、それぞれが冒険者部門に関係している者たちだ。

 三人とも奴隷で考助が主となるが、筋を通すためにもガゼランに話す必要はある。

 

「一応確認だけれど、三人を異動させても問題ないよね?」

 考助の確認に、ガゼランは少し考えてから答えた。

「一応、サラサについては確認する必要はあるが、恐らく問題ないだろう。セシルとアリサは、他の冒険者に振り分ければいいから特に問題はない」

 ガゼランの答えに、セシルとアリサがホッとした表情を見せた。

 百合之神社で話したときと違った回答でなかったことに安心したのだ。

「サラサについては、今すぐどうこうということはないよ。セシルやアリサと違って、リリカと兼任してもらうつもりだから」

「兼任・・・・・・ですか?」

 首を傾げたサラサに、考助が頷きながら付け加えた。

「そう。サラサには、第五層の別荘を管理してもらう仕事もあるからね。それに、リリカはリリカで、通常の巫女としての業務もあるだろうし」

「詳しい業務はあとで話しますが、基本的にはさほど忙しくなることはないはずです。今は、とにかく所属が変わることを理解してもらえればいいです」

 考助の説明に、シルヴィアがさらに付け加えた。

 元々あった百合之神社もそうだが、新たに加わった三つの神殿を細かいところまで清めるのは、人化できる狐の仕事になる。

 サラサたちには、彼女(彼?)らのサポートをしてもらうつもりなのだ。

 新しく設置した神社については、ユリの力の定着作業があるため、今すぐにサラサたちが動く必要はない。

 ただ、いきなり引き抜くわけにもいかないので、事前に話をしておくためにガゼランに来てもらったのである。

「それで、私が呼ばれたのはなぜでしょうか?」

 ある程度話がまとまったところで、トワが聞いてきた。

 これまでの話は、あくまでも人の移動の話で、わざわざトワが呼ばれる理由がなかったのだ。

 

 シルヴィアは、トワの言葉に頷いてからこれから先の計画について話し始めた。

「しばらくは、今の状態で管理だけを続ける予定ですが、神殿の状態がよくなれば人を呼び込む予定があります」

「と、いうことは?」

 目を瞬いたトワに、シルヴィアはもう一度頷いた。

「ええ。中央にある百合之神社を内宮、他の三つの神社を外宮として、現人神を主神にすえた百合之神宮とするつもりです」

 シルヴィアが言ったことは、今まで第五層に何となくおいていた神殿に代えて、第八層の神社の集まりで考助(と他の三大神)を祀ることにするということだ。

 その意図を誰よりも先に察したココロが、驚いた表情を浮かべながら考助とシルヴィアを見比べている。

「・・・・・・これまでいなかった神官や巫女を呼んで、しっかりと教会を作るというわけですか?」

 一応疑問形にはなっていたが、ココロ自身はすでに確信しているような言い方だった。

 そのココロの言葉を聞いた一同は、同じように驚いた表情を浮かべる。

 

 これまで考助を祀っている神殿は、第五層にあるものだけで、神官や巫女が管理するということはしていなかった。

 それは、他の神殿の影響力を嫌っていたという理由もあるが、何よりも考助が必要としていなかったというのもある。

 いまもそれは変わらないのだが、先日『烈火の狼』の面々と話していて考助にも思うところがあったのだ。

 その考助の思いを代弁するように、シルヴィアが頷きながら答える。

「そうです。正確には、あなたがこれから育てる神官や巫女を配置する予定です。そのうえで、一般の人も呼び込むつもりです」

「・・・・・・それは、随分と時間がかかるような・・・・・・」

 ココロが微妙に目をうろつかせながらそういうと、シルヴィアが小さく笑った。

「ですから、これはまだまだ先の話です。一応そういう計画もあると知らせた方がいいでしょう?」

 シルヴィアは、そう答えながらトワに視線を向けた。

 それを受けたトワも同意するように頷いた。

「そういうことでしたか。ということは、転移門で繋ぐつもりなのですね?」

「そうなります」

 転移門の管理は、一応ラゼクアマミヤが行っていることになっているので、事前調整も含めてトワを呼んでいたのだ。

 ちなみに、シュミットを呼んでいるのも同じ理由だ。

 ゆくゆくは、百合之神宮をミクセンの三神殿のように、観光地化することも考えているのである。

 

 シルヴィアが話したことは、ココロの弟子がきちんと育つかどうかはまだ不明なところがあるため、実際にどうなるかはわからない。

 今までまともに神殿を作ろうとしてこなかった考助が今回シルヴィアの計画に乗ったのは、ココロのことがあったのと『烈火の狼』とのやり取りが頭にあったためだ。

 最終的にどういう形に収まるかは分からないが、少なくともユリの力を上げるという意味では、最低の条件をクリアしていることになる。

 あとは、いつものように流れに身を任せるしかないと考えている考助なのであった。

百合之神社改め百合之神宮となりました。

ただし、今までの百合之神社は、そのまま百合之神社です。

百合之神宮は、全部の神社とその周辺の地域を含めて百合之神宮と呼びます。

(伊勢神宮とは違うので、ご注意くださいw)

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