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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6章 塔の地脈の力を使ってみよう
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(20) ジャミール神

 地脈の力を利用するための実験をしたところ、偶然にも<月の祭壇>が出来た。

 一応<百合之神社(大)>という例があったので、ある程度上手くいくとは思っていたが、それはあくまでも<月の宝石>に地脈の力を乗せることが出来ると考えていた程度である。

 ここまでの変化が起こるとは思っていなかった。

 というわけで、<月の祭壇>という例が、新たに出来たのだ。

 他の物でも当然のように試してみた。

 しかし、残念ながら<月の宝石>の様には、上手くいかなかった。

 各階層にある<欠片>シリーズや<御神岩>でも試したのだが、そもそも最初の地脈の力を通すこと自体が、上手くいかなかった。

 こうなると、「地脈の力を物に通す(あるいは宿す)」というのは、ある程度の条件があるのだろう。

 一瞬、その条件をアスラやエリスに聞いてみようかとも思ったが、止めておいた。

 聞いて答えてくれるかどうかわからない、というのもあったのだが、最初から答えが分かっている物を創っても、面白くないと思った。

 というわけで、地脈の力に関する研究は、完全に行き詰まり状態になっていた。

 特に焦る必要もない、というより<月の祭壇>が上手く行き過ぎたと思っている考助であった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 <月の祭壇>を創ってから数日たったある日のこと。

 管理層で色々と考え事をしていた考助に、珍しい訪問者が訪れた。

 訪問者と言っても管理層に来れる者は、限られているのだが。

 珍しいというのは、来たのがナナだったからである。

 ナナには転移門を使う権限は与えているし、使い方も教えてある。

 とは言え、今まで自分から管理層に来ることは無かったのだ。

 最初ナナを見た時には、コレットが一緒にいたので、コレットが連れて来たと思った。

「なに? コレットがナナを連れてくるなんて珍しいね」

 しかし、考助の疑問を、コレットが否定したのである。

「いえ。私は、今さっきそこでナナに捕まったのよ」

 リビングで寛いでいた所にナナが来て、一緒に来てほしいとお願いしてきた、とのことだった。

「そうなの? ・・・ナナ、どうしたんだ? 何かあった?」

 考助は、そう言ってナナの首筋を撫でる。

 ちなみにこの時のナナは、小型化していた。

 ナナは、嬉しそうに尻尾を振って、考助に撫でられながら、コレットの方を見た。

「・・・えーと・・・<月の宝石>があるところに来てほしいって」

「ん? なんかあったのかな?」

「・・・さあ? ナナもよくわかってないみたいよ?」

「なんじゃそら?」

 コレットと考助は、お互いに顔を見合わせて首を傾げた。

「・・・・・・まあいいか。とりあえず、ナナが呼ぶなんて珍しいことだから、行ってみるよ。一緒に来てね」

「え? 私も?」

「他に誰が通訳するの?」

「・・・それもそうね。それにしても・・・なんで神力なんてものが使えるのに、精霊との会話ができないのよ?」

「知らん!!」

「そんなことで胸を張らないでよ、もう」

 <月の祭壇>を創るときには、地脈の力の制御も出来た上に、さらに精霊を見ることが出来る考助が、何故精霊と会話ができないのか、コレットには不思議でしょうがないのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ナナに呼ばれた考助は、コレットとミツキを連れて<月の祭壇>へ来たわけだが、すぐにナナがここへ呼んだ理由に気付いた。

「・・・なに、これ?」

「私に聞かないで」

「同意見ね」

 まず、<月の祭壇>の外観が大きく変わっていた。

 地脈の力の制御をおこなっていた時は、ただの屋根がついた四角い倉庫だった。

 それが、今では装飾が施されて、小さな神殿と言った佇まいになっている。

 さらには<月の宝石>が置かれている台も、まさしく祭壇と言った感じの装飾が施されている。

 以前はただの小さな木のカウンターだったのだが、大理石で作られた台になっていた。

「・・・・・・どうしてこうなった?」

 考助は、そう言って周囲を見たが、当然ながら答えを出せる者はいなかった。

 コレットとミツキも首を振っている。

 と、ここで、戸惑う考助に、ナナがぐいぐいと背中を押した。

「・・・お? ナナ、どうした?」

「なんか、その<月の宝石>に触れてほしいみたいよ?」

「・・・え? これでいい?」

 ナナに促されるままに、考助は<月の宝石>に手を触れた。

 その瞬間、<月の宝石>から光が発生して、考助を包み込んだのであった。

 

 光に包まれた考助の目の前には、一人の女性が立っていた。

「いやー。まさか、あんな強引な方法で地脈とつなげられるとは、思わなかったわ」

 その女性は、呆れたような、それでいて楽しそうな表情をしている。

 そして、その女性を見た考助はというと・・・。

「・・・・・・エリス? ・・・じゃないか。それにしても似てるね」

 それを聞いた女性は、一瞬まじまじと考助を見つめた後、再びクスクスと笑い始めた。

「・・・なるほどね。これはアスラ様も、エリス姉さまも気に入るわけね」

「・・・は?」

「ああ、いえ、良いの。こっちのこと」

「そうですか」

 目の前の女性が、アスラやエリスと同類と分かった考助は、それ以上聞くのを諦めた。

 どうせ聞いても答えられることしか答えられないのだろう。

「そうよ。正解!」

「・・・ですから、ナチュラルに心を読まないでください」

「だって、しょうがないじゃない。私達ってそう言う存在だし。・・・それに、考助も気にしてないでしょ?」

「それは・・・まあ」

 [常春の庭]では、アスラに散々心を読まれまくっていた。

 むしろそれが当たり前という感覚で過ごしていた。

「ところで、そろそろお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「ああ、わたしの名前は、ジャミールよ。ジャルと呼んでね」

 さすがに、その名前を聞いて誰か分からないほど、今の考助は知識不足ではない。

 アースガルドに置いて、月の女神と呼ばれる存在である。

 エリスと似ているのも道理だと納得した。

 確か、太陽の女神と月の女神、星の女神は姉妹だったはずである。

「J〇L?」

「いや、そのネタは、こっちの世界では通じないから」

「・・・それもそうですね。というか、逆にあなたは何故知ってるんです?」

「あら。貴方のことは、エリス姉さまから色々話を聞いているわ。・・・・・・そんなことよりも・・・」

 色々というのが気になった考助だったが、それを無視してジャルは、じっと考助を見つめる。

「な、なんでしょう?」

「それよ、その口調。改善を要求するわ」

「いえ、しかし貴方はこっちの世界では、神様ですよね?」

「そんなこと、貴方にとっては今さらじゃない?」

 アスラにもエリスにも、本人たちの希望で砕けた口調で話していることを知っているらしい。

「それもそうで・・・そうか」

 言い直した考助に、ジャルは楽しそうに頷いた。

「そういう事よ」

「ところで、ここはどこ?」

 周囲を見渡しても光に包まれていると言った感じで、当然ながら先ほどまでいた祭壇には見えない。

「あら。今まで考助がいた所と同じ場所よ? ただ、光に包まれてる間だけ時間が加速しているだけで」

「・・・ということは、他の人たちには、一瞬光っているだけにしか見えないってこと?」

 ジャルは一瞬だけ目を見開いて、驚きの表情になった。

「理解が早くて助かるわ。それは、向こうの世界の知識?」

「いや、どうなんだろ? そもそもこんなことできる存在は、一般的にはいなかったけど。ただ、そう言う考え方が出来るのは、向こうの世界の恩恵かな?」

 どちらかと言うと、考助にとっては、一般的な知識からの発想ではなかった。

「なるほどね」

 ジャルは、考助の様子を見ながら、フンフンと頷いていたのであった。

2014/5/11 誤字脱字修正

2014/5/27 月の宝玉→月の宝石へ訂正

2014/6/3、14 誤字を修正

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