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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 第五層の街
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(4)違和感

 考助が適当に選んだ依頼は、一定の量の荷物を街のある場所から別の場所へと移すというものだった。

 後ろの期限はついているが、前はいつから始めてもいいとなっている。

 ミツキと一緒に、どこからどこへと運ぶのかを下調べをしていた考助は、運ぶべき場所で納得の表情を浮かべていた。

「ああ、なるほどね。これは人手が必要になるわけだ」

 荷物を運ぶ予定となっている場所は、細い路地の奥にあったのだ。

 これではとてもではないが、馬車を使って一気に運び込むことなど不可能だろう。

 第五層の街は、計画的に区画割をして都市計画が進められているが、すべての道路が馬車を使えるほどに広くできているわけではない。

 むしろ、いくつかの主要な道路を除けば、ほとんどの道路では馬車を使うことはできないのだ。

 これにはきちんとした理由があって、そもそも一般庶民は馬車を使うほどの広い道路を必要としていないこと。

 さらには、道路をあえて狭くつくることで、なるべく都市が広がらないようにしているのだ。

 住宅が密集すれば、それだけ火事が延焼する危険性も広がるが、それに関してはある程度の区画で抑えられるようにしてある。

 それよりも、徒歩くらいしか移動手段を持たない者たちにとっては、下手に道を広く作られてもそれだけ移動に時間がかかってしまうことになる。

 そうした様々なバランスを考えたうえで、いまの街ができあがっているというわけだった。

 

 下調べを終えた考助は、早速依頼主の元へと向かった。

 依頼主がいる事務所と荷物が置かれている倉庫は別の場所にあるのだ。

 考助が依頼を受けたことを出てきた女性に告げると別の場所に通されて、それから数分後には別の男性がやってきた。

「ふうん? 今度はお前さんが受けるってか?」

 その男性は、まったくの遠慮もなしにじろじろと考助を見てきた。

 その表情は、本当に大丈夫かと口に出して言いそうな顔になっている。

 そんな男の顔には気づかなかったふりをした考助は、笑顔になって頷いた。

「ええ、そうです。よろしくお願いいたします」

「・・・・・・ふん。まあいいさ。出来るっていうんだったらやってみればいい」

 自分の態度に特に反応を示さなかった考助に、男はぞんざいな態度で答えるのであった。

 

 

 男に案内されて倉庫の中に入った考助は、指示された荷物の塊を見て目を丸くした。

 そこに積まれている荷物は、とても一度や二度の往復で運びきれるような量ではなかったのだ。

「これを指示されたところに運べばいいのですか?」

「まあ、そうだな? ・・・・・・無理なら無理って今のうちに言ったほうがいいぞ? 中の商品を傷物にされたらたまらんからな」

 あからさまにお前には無理だろうと言外に言ってくる男だったが、これまた考助は気にすることなく首を左右に振った。

「いえ。一度引き受けた仕事ですからね。きちんとやりますよ」

「・・・・・・ふん。そうか。なら好きにするといい」

 男はそう言いながら、お手並み拝見とばかりに荷物のある場所から数歩下がった。

 どう見てもガタイがいいようには見えない考助が、どうやって荷物を運ぶのかを見守るつもりなのだ。

 

 背後から男の視線を感じつつ、考助は気負うことなくすたすたと荷物のあるところへと近付いて行った。

 目の前にある荷物の箱は、全部で二十個ある。

 大きさもそれなりの物で、普通に考えれば、期限内に目的地まで運び込むことなど不可能だろう。

 だが、当然というべきか、考助はとても普通ではありえない存在である。

 考助の手が運ぶべき箱に触れるたびに、次々に消えて行った。

 自分の目の前で起こる不可思議現象に、考助のやることを見守っていた男は、目を丸くした。

「お、おい!?」

「どうしましたか? 契約上、どうやって運ぶかは、依頼を受けた側の好きにしていいはずですが?」

「あ、ああ、そうなんだが、いったい何をどうやって・・・・・・」

 いるんだと続けようとした男に向かって、考助は首を左右に振った。

「申し訳ありませんが、それに関して詳しく話すつもりはありません。秘密です」

 茶目っ気たっぷりに言った考助だったが、男にはそれは通じなかったようだ。

 何か獲物を見つけたような視線で、考助を見ている。

 考助は、男の視線に気づいていたが、表向きは気付かなかったふりをして言葉を続けた。

「それでは、目的地まで運んできます。終了のサインはあちらでもらえばいいですね?」

「あ、ああ。そうだな。それで頼む」

 終わりのサインを確認してきた考助に、男は呆気にとられた表情をしながらも頷き返すのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 差出側の男とは打って変わって、受取側の人物は、考助が荷物を運ぶ依頼を運んできたのだと知ると満面の笑みを浮かべた。

「いやー、本当に助かったよ。まさか期限内どころか、一回で運び終わるとは思っていなかった。アイテムボックスの魔法を使っているのだろう?」

 受取人は、しっかりとアイテムボックスの魔法を知っていたようで、あっさりとそう言ってきた。

「ええ、まあ、間違ってはいないですね」

 厳密には考助が作った魔道具を使っているのだが、その魔道具に使われている魔法がアイテムボックスなので、完全には間違いではない。

 差出側ではアイテムボックスであることを隠した考助だったが、魔法のことを知っている相手にまで隠すつもりはない。

 ついでにいえば、自分たちに対する態度も大きく影響している。

 やはり、無愛想な相手と喜んでくれる相手とでは、自然とこちら側の態度も変わってくるものなのだ。

 

 最初から最後まで終始笑顔で対応してくれた受取側の男は、依頼票にサインを書きながら何気なく確認をしてきた。

「それにしても、君の場合はアイテムボックスがあったからいいが、他の者が受けていたら中々大変だっただろうね」

「そうですね」

 中々大変どころではなく、無理といっていいレベルの依頼だったのだが、考助はこの場ではそれだけで済ませておいた。

 何より、目の前の男は、本気で期限内に荷物を運び込むことができただろうと考えているのが分かったからだ。

 受取人の態度と差出人の態度に齟齬が感じていた考助だったが、ここで言うべきことではないだろうと判断したのである。

 

 

 サインの入った依頼票を受け取った考助は、すぐにクラウンへと戻った。

 依頼期限まではまだまだ日数があるので急ぐ必要はないのだが、どうにも気になることがあったのだ。

 クラウンの入り口から入ってそのままサラサの元へつなぎを取ってもらおうとした考助だったが、なぜかそこで別の受付嬢につかまった。

「あなたがコウさんですか?」

「え? ええ、そうですが?」

「そうですか。無事に依頼の完了をされたようですね。私が手続きを行いますから、依頼票を出していただけますか?」

 唐突にそんなことを言ってきた受付嬢に、考助は首を傾げつつ言った。

「うーん。そうはいってもですね。どうやら僕の担当は決まっているようでして、その人にやってもらわないといけないようなんですよね」

 敢えてサラサの名前を出さなかった考助に、その受付嬢はニッコリと笑った。

「あら。依頼完了の手続きは誰でもできるようになっています。気にすることはありません」

 ことさらに笑顔を浮かべてくる受付嬢だったが、考助としてもはいそうですかと渡すわけにはいかない。

 何よりも、そうする必要がなかった。

「・・・・・・担当が決められた冒険者の相手は、全ての業務をその担当者が行うことと決まっているはずですが、今の窓口担当はそんなことも忘れてしまっているのですか?」

「キャッ!? さ、サラサさん! ど、どうしてここに!?」

「どうしてもこうしても、私の担当が来たからです。貴方が心配されなくても、私が処理をしますから業務に戻りなさい」

 サラサがそういうと、その受付嬢はしぶしぶと言った表情でカウンターへと戻って行くのであった。

違和感を感じまくっている考助ですw

こんな中途半端で終わらずに、話は次回に続きます。

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